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第13話

セレネの提案で修練場に移動し、早速稽古を開始した。


ネイピアスはもちろん古流武術...ではなく、目立たぬようにロングソードを用いてリヒテンアワー流の稽古を行うつもりだ。

とりあえず型稽古からスタートしたが、セレネやヘスティアもどうやら聖騎士流の型稽古から始めたようだ。


型はつまらないし使えないなどと言って手合わせや試合をしたがる人は多いが、彼女らはどうやら違うらしい。

心の中で彼女らの評価を少し引き上げ、その後はひたすらに型をなぞりつつ身体操作や重心移動を意識する。


型は実戦で使えないなどとほざく輩は前世でも今世でも多いが、そういう輩は型の認識を間違えている。

型は様々な要素を含んだ教科書のようなもので、その要素の一つに技やその用例があるというだけだ。


「こういう状況ではこの技が効果的、あるいはこういった状況に対処する手段としてこういった技がある」ということを示しているに過ぎない。

勉強と同じで、基礎を教えてくれているだけで、それ以上の応用問題を解くには柔軟な応用力が必要というだけだ。

学問でいえば、型が基礎問題、実戦が応用問題に該当する。


それに、型には技や実用例だけではなく、身体操作や文化の継承といった側面もある。

現代において意味不明に思う動きだが、実はもともと文化や儀式的な意味があったことの名残だったりすることも多々ある。

それに、無駄に見える動きだが実はその流派の根幹となる身体操作を忍ばせてあり、その身体操作がないと師範の動きが再現できない流派もある。

そうすることで、身体操作の技術を代々継承していくのだ。


そういった理由から、様々な要素を含む教科書である型がネイピアスは大好きであった。

組み手や試合ももちろん重要だが、それらは発展であって基礎を構築するにはまずひたすら型をやるべきなのだ。


そんなわけで、余計な雑音を排除して型にえげつないほどの熱量で取り組み、ただひたすら己の身体にのみ集中していた。

だからこそ、集中を解いたときに他の二人が自分を見ていたことにようやく気付いた。


「どうしたの?」

「いや...そんなに熱心に型に取り組む人を初めて見たからつい理由が気になって...。」

「ごめんなさい。以前みたリヒテンアワー流の師範の人より断然綺麗な動きだったのでつい...。」


「型は強くなるための、この上なく上質な基礎を学べる教科書だからね。熱心に取り組んで当然さ。」

「動きに無属性の魔力すら用いていないのもそれが理由ですか?」


(...よく見ていたな。)


魔力を一切使用していないのはその通りだ。

...とはいえ、魔力は使っていないものの氣は使っているが。


「そうだね。魔力切れなんかで、仮に自分だけ魔力が使えない状況になったらどうする?純粋な剣技だけで切り抜ける必要があるだろう?」

「でもそんなこと本当にできるの?貴族の子供が魔力を使っても大人の相手は厳しいのに...。」


(...あれ?なんだか兄さんに聞いた話と違うぞ。)


「貴族なら子供でも魔力さえ使えれば普通の大人相手にいい勝負ができるんじゃないの?」

「どこの魔境出身の子供よ、それ。たしかに出来るけど、せいぜい属性魔力を用いてようやく互角ってところよ。」


見ればヘスティアも頷いて同意している。


(...なるほど。以前うちの騎士団の新入りが驚いていた理由はそれか。)


そりゃ7歳の無能な子供が属性魔力を使わずに自分と引き分けたら驚くはずだ。

もっと詳細に聞いておくべきだったと後悔したところで、もうやってしまったものは仕方ない。

そう諦めかけていたそのとき、ネイピアスの脳裏に言い訳が閃いた。


(もし聞かれても、魔力を使わず純粋な剣技だけで倒したってことにすればいいのか!)


そんな下らない言い訳をあれこれ考えていたネイピアスだったが、その彼に突然声がかかる。


「面白い話だなぁ、お坊ちゃんよォ!」


その声が聞こえた方向に目を向けると、屋敷の入り口で見たあの3人組がニヤニヤしながらこちらを見ていた。


(門番なら仕事しろよ。...いや、服装からして休憩時間か。)


「純粋な剣技で戦うなんて素晴らしい挑戦だなァ!感動したぜ!ぜひ俺に練習相手をさせてくれよォ!」

「申し訳ないが、私の剣は安い見世物じゃないんでね。他をあたってくれ。」


「オイオイ!あれだけ理想をペラペラ喋っておいてまさか逃げるのかぁ!?」

「逃げる?フッ...違うな。これは戦略的撤退と言うんだよ。」


「同じだろォが!さっさと戦え!」

「僕と戦いたければそこのツンデレ王女を倒してこい。そしたら戦ってやろう。」


戦闘狂のことだ。

きっと喜んで戦ってくれるだろう。


「さっさと戦いなさい。王族に対する不敬で憲兵に突き出すわよ。」


だが、返ってきたのは無慈悲な王女による命令だった。


「...ありゃ?なんで?」

「ちょ、ちょっとレーネ!?」

「ヒャッハー!そうこなくちゃなァ!狩りの時間だぜェ!」



◇ ◇



「見せてもらおうか!お貴族様の実力とやらをなァ!」

「...ハーイ。お願いしゃーす。」


こうして、なぜか戦うことになったのである。

セレネやヘスティアが緊張してこわばっている一方で、ネイピアスは頭の中で必死に勝負の行方を考えていた。


(...どんな結末が最善なんだ?勝ったらマズいよなぁ。)

(いい感じに負けるか。)


「オラァ!なにボーっとしてんだよォッ!」


男の攻撃で戦いの火蓋が切られた。

明らかに過剰なほどの火属性魔力を剣に纏わせ、全身に魔力を滾らせて斬りかかってくる。


(殺気が丸出しでヒジョーに分かりやすい。素直でよろしい。)

(...ていうか手合わせだよな?マジで殺しにきてるじゃねぇか。)


剣は訓練用で刃がついてないとはいえ、あの魔力量で食らうとヤバいのは明らかだ。


(こりゃ負けるのはナシだ。下手すりゃあの世行きとかシャレにならん。)


爆発的な加速度で加速しつつ近づく男により上段から真向に炎剣が振り下ろされ、ネイピアスに死の刃が迫る。

しかし、未だネイピアスに避ける様子は見られない。


(あ、いいこと思いついた。)


「危ない!」

「ネイ君!?」


誰もが斬られたと思ったが、なぜか剣は空を斬り、男が宙を舞っていた。

頭が地面スレスレなほど低空で宙を舞った男は、自身と防具の重さにより地面に叩きつけられる。

男は呼吸がうまく出来ないことに加え、何が起こったのか理解できない様子で動けなかった。

しかし、投げられたことに気付くと喚きだした。


「て、てめぇ!魔力を使っただろ!?」

「魔力?期待に沿えず申し訳ないのだけれども、()()()使ってないよ。」


納得できない様子の男がその後何度も斬りかかるがすべて紙一重で躱され、ネイピアスに投げ飛ばされる。

当たれば確実に死ぬどころかオーバーキルな一撃を、笑いながら捌いていく。

死と隣り合わせの状況のはずだが、彼からはどこか余裕すら感じる。


「フハハハハハ!当たらないなぁ!一体どこを狙っているんだい?」

「黙れェ!死ねやオラァ!」


「こんな状況にピッタリの言葉があるんだ。"当たらなければどうということはない" ってなぁ!」

「なにふざけたこと言ってんだテメェ!」


魔力を一切使わずに、男の動きにあわせて流れる風に乗るかのようにヒラヒラと避けては投げ飛ばす。

しばらくそんな攻防が続いたあと、急にネイピアスが言葉を発する。


「...正直もう飽きてきた。3人まとめてかかって来い!私は一向にかまわんッッ!!」


思わず戦いに見入っていた残り二人の衛兵だったが、急に声をかけられ困惑する。

すると、戦っている男からも声がかかる。


「おいイグアス!ビクトリア!なにボーっと見てんだよ!早くこいつを殺せェ!」


投げられ続けたことで体力を消耗したらしい男が、息を整えつつ二人に向けて参戦を呼びかけた。

二人はしぶしぶといった様子で、男とネイピアスを挟撃する位置取りをした。


(イグアスとビクトリア...世界三大瀑布か?だとするとこいつの名前は...)


「お前の名前はナイアガラといったところか。」

「なっ...なぜ分かった!?」


「フッ...さぁな。私に勝つか金を払えば教えてやるさ。...さて、多人数戦のお手本といこうか。」


そして、彼から終わりの始まりが告げられる。


「見せてやろう、純粋な力のみが成立させる真実の世界を!」

煽りは礼儀。

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