エピローグ
雲一つない晴れやかな空。
今日は絶好のスイーツ巡り日和だ。
私は支度を済ませると、玄関の前で待機していた。
「アンジェ」
「姉様」
「今日は暑いから帽子を被っていきなさい」
姉様はミラがセットしてくれた髪を崩さないように、そっと帽子をかぶせてくれた。
「ありがとうございます」
「観劇、楽しんできてね」
「全力で楽しんできます」
にっと口角を上げて頷くと、屋敷に近付く馬車の音が聞こえた。
「いってらっしゃい、アンジェ」
「行ってきます、姉様」
玄関を出ると、ギデオン様が馬車から降りて来た。
「お待たせしました。アンジェリカ……今日は髪を上げているんですね」
「ギデオンに倣って、私も上げてみました」
「ということはお揃いですね」
(髪を上げただけでお揃いって……可愛いな)
ギデオンの言葉に胸を動かされながら、馬車へと乗り込んだ。
今日は、ギデオン様と婚約者になってから初めてのお出かけだった。
夜会で婚約の約束を交わした後、ギデオン様が正式にレリオーズ侯爵家に婚約を申し込んでくれた。お父様とお母様が驚愕する中、クリスタ姉様は嬉しそうに何度も祝福してくれた。
その後、無事婚約が成立し、私達は晴れて婚約者となった。
それを気に、私達はお互いの名前を呼び捨てにすることにしたのだった。
劇場に到着すると、ギデオン様――ギデオンのエスコートで早速場内へと入った。
「今日の喜劇、とても楽しみにしてました」
「個人的に一番おすすめの演目なので、期待して損はないかと」
ギデオンが勧める劇とスイーツに間違いはない。あと、遠乗りの場所も。
前回同様、ギデオンが用意してくれた席に座る。開演までは時間があるので、ゆっくりできそうだ。一息ついたところで、ギデオンと目が合った。
「覚えてますか、アンジェリカ。また喜劇を見に行こうと約束したのを」
「覚えてますよ。大団円より喜劇が先になりましたね」
あの日のことは鮮明に覚えている。
初めての観劇に戸惑いながらも楽しめたのは、演目を選んだギデオンのセンスの良さがあったからだった。
(あの時、ヴィオラの初恋を見たから今がある、と言っても過言じゃないかもしれない)
懐かしいと思いながら笑みをこぼした。
「約束、果たせました」
「ありがとうございます、アンジェリカ」
「……次は大団円ですね」
「そうですね」
ふふっとお互いに微笑み合うと、それだけで幸せな気持ちになれた。
そんな些細な幸せから、一緒にいられるという大きな幸せまで、私達ならずっと続くと思えた。
完
「ガン飛ばされたので睨み返したら、相手は公爵様でした。これはまずい。」を最後までお読みいただき誠にありがとうございます。このエピローグをもちまして、完結とさせていただきます。
約八か月の間、アンジェリカとギデオンの恋を見守っていただき、読者の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。読んでいただいた皆様に、少しでも楽しんでいただけたのなら、とても嬉しく思います。
また、感想をお送りいただきありがとうございます。返信が全くできず、大変申し訳ございません。本当に凄く励みになっておりました。そして、不定期での更新にもかかわらず、最後までお付き合いいただきましたこと、心よりお礼申し上げます。
最後に一つ宣伝を。
本作は明日、ビーズログ文庫様より書籍が発売となりますので、よろしくお願いします‼
ここまでお読みいただき誠にありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします!
咲宮




