表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された  作者: 溝上 良
最終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/103

第92話 ハイパーアオイちゃん

 










 俺は目の前に立っている相手が、本当にアオイなのかと信じられない気持ちだった。

 生き返ったということは、ミカエルから情報があったから知っている。


 実際、俺も勝手に生き返らせられた身だ。

 だが、俺はアオイがゴルゴールに捕らえられているとばかり思っていた。


 俺のところに、たった一人でやってくるなんて、想像もしていなかったのだ。


「アオイ、どうしてここに……」


 色々と考えたいことはある。

 だが、今の俺の胸を占めているのは、ただただ嬉しいという気持ちだけだった。


 こうして、昔のように……。

 アオイが聖勇者になる前で、俺も魔王軍に入る前。


 何でもないことを笑いながら話し合っていた、あの日のように……。

 そう思って立ち上がろうとして……。


「正座」


 ……正座?

 どうして?


「え?」

「正座」

「……はい」


 俺の身体は正座の姿勢を取っていた。

 どうしてだろうか?


 ああ、昔もアオイが怒ったときは、自然と言うことに従っていたな。

 うん、覚えている。


 身体が調教されていた。

 アオイの顔は笑顔である。


 とてもきれいな笑顔だ。

 俺の好きだった笑顔。


 ……でも、怖いんだよなあ。


「あなた、最期に私に告白したわよね? あれ、私の勘違いかしら?」

「……いえ」

「まさか、本当に過去形だったと言うつもりじゃないでしょうね」

「……や、そんなことは」


 下を向いてしまう。

 あれ、おかしいな。


 ずっと会って話をしたかったはずなのに、どうして顔を見られないのだろうか?

 うーん、不思議だ。


 まあ、怒ったアオイに対する対処法は決まっている。

 要は、嵐が過ぎ去るのを待つのである。


 彼女の怒りが沈静化するまで、ただひたすら聞き役に徹していれば……。


「過去の女がいつまでもうるさいですね……」

「は?」


 シルフィの爆弾発言に、空気がビシッと凍り付く。

 凄い、震えが止まらない。


 どうして煽った!?

 というか、姫さんとナイアドはよくこの状況で寝ていられるな!


 早く起きて助けて!


「そんなことより、アオイ」

「そんなこと?」

「……その話はあとでしよう。でも、まさか本当に……」


 何とか話題変更を……。

 そんなこと、と言った時のアオイの顔が怖すぎて声が裏返ってしまったが、許容範囲内だ。


「偽者じゃないわよ。本物よ、本物。なに、最近本物か偽者か疑ったことでもあったの?」


 怪訝そうに俺を見てくるアオイ。

 あったんです……。


「この駄肉ですね」

「ぐえっ!?」


 シルフィが寝ているオフェリアを踏んづけた。

 あ、これは気絶したわ。


 まあ、天使だしどうでもいいや。

 俺は改めて、アオイと向き直る。


「そうか。アオイ、久しぶりだな」

「あ、ちょっと待って!」


 そう言って近づこうとすると、鋭い声で制止された。

 やっぱり、俺が殺してしまったことが……。


 そりゃそうだよな。

 どういった理由があっても、殺した奴に近づかれたら怖いよな。


 俺はショックを受けながら納得していると、アオイはスンスンと鼻を鳴らして自分の身体を匂っていた。

 え、何してんの?


 すると、アオイは俺を覗き見て、恐る恐る聞いてきた。


「……私、臭くない?」


 え、いきなり何?











 ◆



「えーと、こちらの方は誰ですの?」


 目を覚ましたナイアドが問いかけてくる。

 起きたら知らない女がいて、そんな女に正座させられている俺がいたら、困惑するのも当然だろう。


 ナイアドと姫さんが起きてきたことによって、俺もようやく正座から解放される。

 オフェリア?


 シルフィによって踏みつぶされたので、まだ気絶中である。

 初対面のナイアドに、アオイを紹介する。


「アオイだ。元聖勇者で、俺の幼なじみ」

「過去、ラモンが好きだった女よ」


 余計なことを言ってくれるな、アオイ。


「……おかしいですわ。わたくしの記憶だと、亡くなったとお伺いしたのですが……」

「正解よ。私は確かにあの時死んだはずなんだけど、またあの気持ちの悪い男に呼び出されたみたいね。余裕のない男って、格好悪いのよ」


 吐き捨てるように言うアオイ。

 ミカエルの情報通り、彼女を生き返らせたのがゴルゴールであることは間違いない。


 しかし、あの男がアオイをそう簡単に手放すとも思えないのだが……よく逃げ出せたな。


「というか、あの男なんでまだ生きているのかしら。ゴキブリ?」

「ゴキブリはそんなに寿命長くないんじゃないか?」

「無駄にしぶといってことよ。嫌われ者ほど長生きするものね」


 話に乗った俺が言うのもなんだが、ぼろくそだな、ゴルゴール。

 まあ、俺にとっては現在殺害したいランキング第一位だからな。


 庇う理由はどこにもない。

 ちなみに、メルファがいた時は彼がずっとランキング一位だった。


 おめでとうございます。


「そんな奴と一緒にいるなんて絶対に嫌だったから、逃げ出したってわけ」

「あなたがその男のスパイでない証拠はありますか?」

「水を差すようなことを言うのう、お前は」


 姫さんは呆れたようにシルフィを見る。

 彼女もきっと、こんな疑うようなことは聞きたくなかった……はずだ。


 うん、きっとそうだ。

 でも、俺もそこは気になっていた。


 ゴルゴールがアオイを簡単に見逃すとは思えない。

 ありえないとは思うが、俺を殺すために派遣したと言う可能性もある。


 実際、生前はそうだったわけだし。

 しかし、アオイは首を横に振った。


「私が生き返ったことだけど、洗脳される前に戻っているのよ。いつの肉体状態で蘇ったのかは知らないけど、洗脳前だから、あの男に従う理由はどこにもないわ」


 なるほど、と思った。

 アオイが生前ゴルゴールにこき使われていたのは、彼女が洗脳されていたからだ。


 それは、聖勇者としての力を無理やり発現させられ、心身ともに余裕がない時に洗脳されたもの。

 マインドコントロールというのは、相手に余裕がない時に付け込むのが肝要だ。


 アオイもそうされていたのだが、それ以前の状態に戻されていたのであれば……。

 一度死んでリセットされたと考えていいだろうか?


 そっちの方が分かりやすいし。


「ほほう。じゃあ、聖勇者としての力もないということかの?」

「いえ、それはあるわ」


 アオイはニッコリと笑う。


「つまり、ハイパーアオイちゃんってことよ」

「ずるっこですわ」


 確かに。




過去作『偽・聖剣物語』のコミカライズ最新話が投稿されていますので、ぜひ下記からご覧ください!

コミックス最新刊も、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新作です! よければ見てください!


その聖剣、選ばれし筋力で ~選ばれてないけど聖剣抜いちゃいました。精霊さん? 知らんがな~


本作のコミカライズです!
書影はこちら
挿絵(By みてみん) 過去作のコミカライズです!
コミカライズ7巻まで発売中!
挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ