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【コミカライズ】人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された  作者: 溝上 良
第3章 帝国の勇者と聖女編

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第45話 守りたいもの

 










 アイリスに招かれたのは、彼女の私室。

 かなり広く、来賓用の椅子もいくつか置かれてある。


 大きな姿見やベッドもあり、ここで生活していることが分かる。


「いや、アイリスに謝られるようなことなんて、何もないし……」


 千年ぶり――――俺視点ではそんなに時間は経っていないが――――に再開した既知の相手から、理由の分からない謝罪をされた件について。

 心当たりがまったくないので、ただただ困惑している。


 俺、アイリスに何もされていないけど?


「おーん? どう責任をとってくれるのじゃあ?」

「おーん? そうですわそうですわー」

「ひぃぃ……」


 詰め寄る姫さんとナイアド。

 なんで威圧しているんだ、この二人は……。


「ナイアドは当時のことを知らないだろ。姫さんに便乗するな。あと、姫さんは今助けてもらったばかりなんだから、ちゃんとお礼を言いなさい」

「ありがとうございます」

「い、いえ。当然のことをしたまでですから」


 ペコリと頭を下げる姫さんに、苦笑するアイリス。

 そんな丁寧にお礼が言えるのに、どうして最初にオラついたのか……。


「それで、どうして謝ったんですか?」


 通常の形態になっているシルフィが問いかける。

 ……それはいいんだけど、やけに近い。


 まだ椅子に空きがあるからそちらに座ればいいと思うのだが、俺の隣に無理やり座るものだから、かなり密着している。

 水の身体はプルプルしていて心地いいのだが……。


「ラモン様は、死後も慰撫され供養されることなく、あまりにも非道な処遇を受けました。だから……」

「いや、別にアイリスが決めたことじゃないだろ? それに、俺は自分の死んだ後のことは大して気にして……」


 深刻な顔をするアイリスに、思わず言葉をはさんでしまう。

 俺の死後、慰霊されることはなかったということは聞いている。


 だが、別にそれは大したことではない。

 誰かに追悼してもらいたいとも思っていなかったし。


 しかし、そんな俺の思考をぶった切ったのは、ナイアドだった。


「ダメですわ。あなた以上に、あなたのことで怒る人がいるんですもの」


 ナイアドが見ているのは、俺の隣にいるシルフィだった。

 無表情なのに、威圧感があふれている。


「…………思うところがないわけではありませんが、あれは人類だけではなく、受け入れた魔族にも大きな問題があります。それに、ラモンがいいと言っているのに、私が糾弾するのもおかしな話です」

「まあ、そういうことだ。それよりも、姫さんを助けてくれたことに感謝しているんだ。ありがとうな」

「い、いえ、私は……」


 シルフィもしっかりとしているし、ナイアドの恐れることはなかった。

 逆に俺がアイリスにお礼を言えば、彼女はむずがゆそうに身体をよじる。


 しかし、相変わらず凄い回復魔法だった。

 姫さんの呪いもあっさりと解呪していたし。


「というか、魔族の妾を助けても大丈夫かの? おぬし、勇者パーティーの一員じゃろ?」

「今は勇者パーティーではありませんから。それに、人であろうと魔族であろうと、助けを求めるのであれば助けてあげたい。私は、そう思うんです」

「聖女ですの?」


 ニッコリと笑って言うアイリスに、ナイアドが唖然とする。

 聖女だよ。


 しかし、彼女の善性は相変わらず凄い。

 これ、今の時代は戦争をしていないからまだ大丈夫だろうが、それでも仇敵である魔族を癒そうとすると、反発が起きるだろう。


 人類単一国家の帝国なら、なおさらだ。

 そんな環境にあっても、アイリスは自分を曲げず、救いを求める者に手を差し伸べるのである。


 聖女と言われる所以が、よくわかる。


「しかし、凄い団体のトップになっているんだな、アイリス。ホーリーライトって……」

「ち、違うんです! 私が決めたわけではなくて……! それに、この団体を作ったわけでもなくて……! いつものように人を癒していたら、それを恩に感じてくれたのか、手助けしてくれる人が増えて行って、それで……」


 俺がポツリと呟けば、顔を真っ赤にして手を振る。

 あー……リフトみたいなものか。


 あいつも成り行きで反政府軍のトップになっていたし。

 優しいアイリスなら、はっきりと拒絶の言葉を贈ることもできなかったのだろう。


 それに、悪い面ばかりでもない。

 アイリスは一人しかいないわけだから、彼女に救いを求める者が殺到すれば、そのすべてに対応しようとして潰れてしまうだろう。


 それをさばいているというのは、信者たちの功績だ。

 だが……。


「ただ、何と言うか……大きくなりすぎていないか?」

「……そうなんです。規模が大きくなりすぎて、私の目が届かないことも多く出てきて……。本当なら、皆さんにしっかりと言って、私も違う場所に隠れた方がいいと思うのですが……」


 あまりにもホーリーライトの規模が大きい。

 アイリスは求めていないのに、彼女を祭り上げている。


 巨大化しすぎたため、アイリスのためにというよりも、組織のためにという意志が強く感じられた。

 俺とちょっとした言い争いになった男からも、それがにじんでいた。


 アイリスもそれはよくわかっているようだった。


「なぜそうしないのじゃ?」

「……ここに、守りたいものがあるんです」

「守りたいもの?」


 アイリスは、はかなげな笑みを浮かべて口を開いた。


「……勇者様の御墓です」




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