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【コミカライズ】人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された  作者: 溝上 良
第3章 帝国の勇者と聖女編

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第40話 憎悪

 










「……告白?」


 アイリスの隣で、勇者が不可解とでも言いたげな声音を発する。

 それはおかしなことではない。


 命が一秒ごとに失われるような戦場とは、あまりにもかけ離れた理由だったからだ。

 アイリスも、ラモンの気持ちを知らなければ、勇者以上に困惑し、憤慨していたかもしれない。


 あの洞窟での時間がなければ、だ。


「ああ、なんていうかな。あんたたちが思っている通りのことじゃなくてだな。あーと……俺はアオイに用があるんだ。だから、どいてくれ」


 自分でも不適切な発現だったということを認識しているからか、ラモンは後ろめたそうに頭をかいた。

 純粋に愛を伝える告白……というわけではなさそうだ。


 いや、それも含まれているのだろうが、もっとそれ以上に……。

 アイリスは、先ほど感じていたラモンへの恐怖も忘れて、問いかけてしまう。


「アオイっていうのは……聖勇者様のこと、ですよね」

「……ああ、アイリスか。久しぶりだな。ごめん、あんまり目も見えなくなってきていて、誰か分からなかったよ」

「ラモン様……」


 不倶戴天の仇であるはずなのに、アイリスはどうしても胸が締め付けられた。

 一度、彼と過ごした時間があったから、優しい彼女はどうしても突き放すことができなかった。


 あまり焦点の合っていない目を向けられれば、なおさらだ。

 そんな彼は、聖勇者……すなわち、教皇国の勇者に会いに行くと言う。


 魔王軍を押しつぶすための、全戦力が集まった人類軍。

 もちろん、聖勇者アオイも、その中にいる。


「知り合いなのかい?」

「……恩人です」

「俺も君に助けられたから、そんな一方的なものじゃないさ。ただ、悪い。思い出話をすることができるほど、余裕があるわけんじゃないんだ」


 ラモンはアイリスに笑いかけると、鋭い目を向けた。

 アイリスはビクッと肩を震わせる。


「もう一度言う。どいてくれ」

「……勇者様。私は……」


 ラモンには、強い意思が感じられる。

 その目は真摯で、だからこそ他者を思いやる優しい心根のアイリスは、その意思を尊重させたくなる。


 すがるように、勇者を見た。


「……アイリスが助けてもらったらしいから、そこは感謝しているよ。ただ、君は魔王軍最強の指揮官。君をここで倒せば、魔王軍を一気に押し込むことができる。それに、君が聖勇者のところに向かう理由も信じられるものではない。僕は、ここを通すわけにはいかない」

「……そうか。まあ、ここを通してくれたとしても、俺は後で死ぬと思うんだけどなあ」


 決して敵意だけではない目が、勇者から向けられる。

 ラモンは苦笑いしつつも、その返事は想定していたのだろう。


 とくにうろたえることなく、ダーインスレイヴを構えた。


「アイリス、君は戦いづらいんだったら、後ろに下がっていてくれ。僕は、人類の勇者として、【赤鬼】を倒す!」

「わ、私は……」


 勇者の言葉に、アイリスは歯がみする。

 自分は、直接的な戦闘には何の役にも立たない。


 それでも、戦う意志を持って、戦場にいる。

 だが、相手がラモンだと、どうしてもそれがくじける。


 あの洞窟で、彼と話さなければ……。

 彼の人となりを知らなければ、これほど苦悩することはなかっただろうに。


 勇者とラモンの戦闘は、苛烈の一言に尽きる。

 アイリスの目では、彼らの動きはとらえきれない。


 姿がぶれ、現れたと思えば火花を散らして切り結ぶ。

 そんなことを何度か繰り返し、再び彼らが姿を現した時、膝を屈しているのは勇者だった。


「ぐっ……!?」

「はぁ……。さて、じゃあ俺は行くよ。時間もないしな」


 ラモンは止めを刺そうとせず、先を急いだ。

 その時間も惜しい。


 もともと、致命傷をいくつも負っているほどの重傷で、激しい動きをしたものだから、傷口が開いて仕方ない。

 余命もいくばくもない。


 それが分かっているから、先を急ぐ。


「じゃあな、アイリス。勇者のこと、回復してやってくれ」

「あ……」


 薄い笑みを浮かべて、ラモンはアイリスの隣を過ぎ去った。

 彼の背中に手を伸ばすも、それが届くことはなかった。


 間違いなく、死に向かって歩いている。

 なぜなら、あんな傷で、聖勇者アオイの元に向かうことなんて、命知らずにもほどがある。


 魔族のことごとくを虐殺し、教皇国の敵ならば人類をも殲滅する、最強最悪の勇者と呼ばれるアオイなのだから。


「どこに行くつもりだ?」

「貴殿を自由にさせるつもりはない」

「ココデ死ネ」

「……次から次に出てくるなあ、本当」


 そんなラモンを囲む、絶対的な強者たち。

 帝国四騎士の一人、教皇国大魔導、共和国猟兵団の団長だ。


 まさに、人類のトップ戦力。

 一人で小国を落とせるような力の持ち主に囲まれて、ラモンはため息をつく。


 次の瞬間、ラモンから悍ましいほどの殺意が吹き荒れた。

 決してアイリスたちには向けなかった、圧倒的な憎悪だ。


「どけよ、殺すぞ」




第3章開始です!

過去作のコミカライズ最新話も公開されていますので、良ければ下記からご覧ください。

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