表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/103

第33話 過去の清算

 










「……まさか、本物だったとはなあ。あいつらから報告を聞いた時はまさかと思ったが、こうして直接見て間違うことなんてありえねえ」


 リフトは俺を見て、歓喜の表情を浮かべていた。

 自分のことを思ってそんな表情をしてもらえたのであれば、俺も嬉しくなってしまいそうなものだが……。


 この男は、そんな単純な男でもないのだ。

 思わず苦笑いを浮かべる。


「元気そうで何よりだ。……元気すぎる気もするが」

「当たり前だろ? お前ともう一度会えたんだ。元気にならねえはずがねえ」


 硬い魔王城の城壁を容易く破壊する力。

 昔もそうだったが、リフトの破壊力はすさまじい。


 第四次人魔大戦の際には、人類側から畏怖と恐怖を向けられていた、最強の戦士だ。

 その力は、微塵も衰えていないらしい。


「は、反政府軍のイフリート……。そんな大物が、どうして……!」

「こ、これは好機だ! 我々を苦しめる張本人がここにいる。捕まえて、殺せ! 長い争いに終止符を打て!」


 生き残った警備兵が、リフトを囲もうとする。

 だが、それは悪手だ。


「うるせえよ」


 一言。

 そう言って腕を振るっただけで、業火が猛威を振るう。


 リフトを囲んでいた兵士たちは、跡形もなく燃やし尽くされる。

 彼らの取るべき手段は、一心不乱に逃げ出すことだった。


 リフトは背中を撃つような真似はしない。

 ただただつまらないからという理由だが、生き残りたければそうするべきだった。


 今となっては、もう遅いが。


「きゃっ!?」


 飛ぶ火の粉に、ナイアドが悲鳴を上げる。

 シルフィなら何の問題もないが、ナイアドと子供……そして、弱っている姫さんには危険だ。


 持っていたなまくらを振るい、吹き飛ばす。


「こっちには子供もいるんだ。もうちょっと考えてくれよ」

「こんな危険な場所にガキなんて連れてきてんじゃねえよ」

「…………」


 ぐうの音も出ない。

 でも、俺には信頼できる人が少ないんだから、仕方ないじゃないか!


 一番俺の近くが安全だと思ったんだ。


「よし、これで邪魔者は消した。まあ、これからわいて出てくるだろうが、しばらくは大丈夫だろ。それに……」


 周りを見渡したリフトは、姫さんに目を向ける。


「よぉ。さっそくラモンに助けられたようだな、お姫さん」

「おぬしが遅いからのう」

「それは悪かったな。俺も色々頑張ったんだけど……やっぱり、トップってクソだわ」


 やれやれと首を横に振るリフト。

 今の話を聞いて、ナイアドが反応する。


「あなた、この人を助けるために反政府軍をしていたんですの?」

「まあな」


 意外そうにするナイアドであるが、彼の性格を知っている俺からすると、納得できる。

 というか、誰かのため以外に、リフトが反政府軍なんてところにいる理由が分からない。


 自分のためだったら、もっと直情的に行動するのが彼だからだ。

 それにしても……。


「……でも、お前が反政府軍のトップってどうなんだ?」

「テメエの後釜に無理やり座らされたんだよ! 立場もあるから簡単に動けねえし、最悪だわ!」


 後釜ってなに?

 もしかして、ラモン派とかいうのじゃないだろうな?


 ……いや、大丈夫か。

 反政府軍は人間の俺も嫌いって姫さんが言っていたし。


 うん、俺は関係ない。


「でも、ここにはあなた一人で来ているみたいじゃないですか」

「おいおい、ウンディーネ。当たり前だろ? こいつが生きている可能性があるってんなら、そんな立場なんか捨てて駆けつけるさ。そして、本物のラモンと会えた。俺の判断は間違ってなかった」


 つまり、俺がいると思ったから、今まで自重していた単独行動に移ったということか。

 かなり立場的に危ういことになるとしても、俺を優先したということ。


 ……怖い。


「でも、よかったですわね! かなり騒ぎにはなっていますけど、今のうちに逃げれば万々歳ですわ!」

「こいつがそんな簡単な奴だったら、話はすぐに収まるんだけどなあ……」

「ああ、そんなはずはねえよな」


 ナイアドの言葉に苦笑いすれば、リフトも頷く。

 そうだ。


 この男が、純粋に俺を助けに来るはずなんてないのだ。

 むしろ、自分が認めた男ならば、それくらい自力で何とかしてみろという考えの方が合っている。


 そんなリフトが俺の前に、立場も捨ててやってきた。

 ということは……。


「なあ、ラモン。俺がお前の下についた理由、覚えているか?」

「ああ、もちろん」


 俺が強かったから。

 一度、俺とリフトは戦っている。


 それこそ、負ければどちらかが死ぬ。

 そんな命の取り合いをしたことがある。


 結果として、俺たちは死んでいないが、勝ったのは俺だった。

 だから、リフトは俺の下についたのだ。


 いつでも俺と、再戦できるように。


「お前がいなくなって、俺は一度独り立ちしたんだ。だったら、あの時の約束はチャラ。それが普通だよな?」

「俺はお前と違って、別に戦うのが好きじゃない。余計な争いは避けたいんだけどな」

「余計? 余計なわけがあるか! 最高に尊くて、重要な争いだ!」


 リフトの感情に合わせて、炎が燃え盛る。


「テメエが死んだと思った時から、もう二度とテメエに追いつけねえと思っていた。だが、こうしてまた戦える。あの時は、乱戦の中でテメエの最期を見ることができなかった。テメエを殺した奴も分からなかった」


 もちろん、俺は俺を殺した相手のことを知っているのだが、黙っておこう。

 すでに、【彼女】もこの世界には存在していないのだから。


 しかし、そのことは放っておいても、俺とリフトが戦うことは避けられないらしい。


「だから、ちゃんと付き合えよ、ラモン。過去の清算だぜ」

「……まあ、ここで逃げてもしつこく追いかけてきそうだしな。付き合うよ、リフト」




過去作のコミカライズ最新話が投稿されていますので、ぜひ下記からご覧ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新作です! よければ見てください!


その聖剣、選ばれし筋力で ~選ばれてないけど聖剣抜いちゃいました。精霊さん? 知らんがな~


本作のコミカライズです!
書影はこちら
挿絵(By みてみん) 過去作のコミカライズです!
コミカライズ7巻まで発売中!
挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ