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助手と雪だるまの話

作者: 朝登優。

冬。積もった雪と冷たい空気に身を縮めながら我が探偵事務所に向かう途中、助手の牧田が子供と一緒になって手のひらサイズの雪だるまを大量生産しているところに出くわした。


「何をしてるんだあいつは」


小学生と混じると見分けがつかんくらいの背の半分はくるくるした栗色の髪で隠れる助手は確かに成人女性のはずなのだが、こう改めて遠くからみていると不安になる。本当に成人女性だよな?


「牧田」

「あっ先生!見てください皆で作ったんです」


まだ小学校に上がる前くらいの子供たちと誇らしそうにいびつに並んだ雪だるまを自分に見せびらかした。


「…お前のが一番いびつだな」

「え」

「時計見たのか?もうすぐ出社時間だが」

「わあもうこんな時間?!」


公園の時計を確認して飛び上がった牧田の周りの子供たちが残念そうに俯いた。


「もういっちゃうの?」

「もっとあそぼうよ」

「ごめんね、また遊ぼうね」


牧田はまたね、と手を振るが子供たちは牧田のコートを掴んで取り囲んだ。


「だめだよ」

「だめだヨ」

「だメダよ」

「ダめだヨ」



「 ダ メ ダ ヨ 」



子供たちは一斉にその様相を変えた。ギョロっと白目を剥き、皮膚は爛れ、服が古びていく。


「ひっ?!」

「やっぱりな。この時間に子供がたくさんいるかよ」


恐怖に固まる牧田を抱き上げるとおもちゃを取り上げられた幼児のように子供たちも必死に手を伸ばす。その手に飴玉をのせてやると子供たちの動きが止まった。


「この姉ちゃんは泣き虫だからお前たちの為にたくさん泣いてくれるがな、これでもうちの大事な助手なんだ」


子供たちは無表情のまま飴を握りしめて消えていった。


「お、終わりました?」

「ああ」

「あっけなかったですね…」

「飴玉のせいだな。払い屋のお手製だ」

「払い屋さんの…」

「お前何時間ここに居たんだ?後で鏡見ろ、鼻が赤いぞ」

「えっと…あれ?思い出せません…」


人に見られる前に牧田を下ろし公園をでた。担いで歩いていたら間違いなく通報される。


「あの子たちは成仏出来たんでしょうか」

「おいあんまり同情するなよ、アレは個の霊じゃない…ただの集合体だ」

「はい…」

「朝食買いに行くぞ」


見た目が可愛いのだと以前助手が言っていたのを思い出し駅前のパン屋まで来た道を戻る。

こいつは隣で呑気に笑っていればいい。そう思いながら。



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