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私の白黒と貴方の色彩。

作者: 春乃

私はいつも1人だった。友達はいる。と言ってもあまり喋らない。用事がある時ぐらいだ。だから私はそこまで仲が良いとは到底思えなかった。

私が中学3年生になった時だった。始業式だと言うのにも関わらず、頭痛が凄かった。またいつものことだろうと思い、薬を飲んでから学校へ向かう。だが、頭痛はおさまらない。課題の提出や、色々やる事が沢山あるのに、全く集中できなかった。家に帰るとベットに飛び込む。さすがのお母さんもその様子に気づき、かかりつけ医の病院に向かう。すると、総合病院への招待状を渡された。車に乗り、気がつくと総合病院の診察室。

結果は、「起立性調節障害」。

そこまで大きい病気ではないとのこと。安心しつつも不安な気持ち。それからというもの学校には行っていた。でも私にとっては凄く辛いことだった。朝起きれない。頭が痛い。立ち上がれない。学校に行けない。そんな日々が続いた。学校なんて休んでばかり。さすがの親もため息が出るほどだった。


学校を休む事はそんなに辛くはなかった。ただテストの点数だけが問題だったぐらいだ。別に友達から心配のメールが来るわけでもないし、先生が家に来ることもない。ただ、久しぶりに行った時の皆の視線が、針のような視線が、私は嫌いだった。

朝から学校に行けない日は、放課後、皆が帰った時間に学校へ行く。先生に


「明日は来れるといいね」


なんて何回も言われながらも気にしてはいない。だから、


「そうですね。」


と作り笑顔で返す。これが普通になってきた。教室へ向かう途中物音がした。フロアには誰もいないし、教室の電気はついていない。後ろに誰かいるのかと振り返るが誰もいない。「早く行こう。」と自分に言い聞かせながらも教室へ入る。すると、1人の男子がいた。


「まだ居たの?」


と聞くと、


「ちょっとやりたい事があってね。」


と返される。彼は幼なじみの雅也。幼なじみって言ってもあまり家は近くないが幼稚園から今までずっと同じ所に通っていると言うだけで、彼が勝手に幼なじみと言っているだけだ。あまり話さないし、休み時間になるとはしゃぎ始めて教室中に声が響くぐらい大きな声を出す。私は彼が苦手だった。絡んでくるとことか気分屋なとことか。でも、そんな彼にいい所はある。優しいとこだ。彼は私が休んだ時はメールをくれる。ただそれだけでも私にとっては嬉しかった。


「よし。」


久しぶりの朝からの学校。先生達への作り笑顔はもう特技と言っても過言ではなかった。教室に入ると話しかけて来る人はいない。と思いながらも、それに納得してる自分がおかしくて笑いそうになる。なぜなら、


「1人なんだっけ。」


そう、毎日のように思うからだ。大体、移動教室は1人でギリギリまで移動しないし、休み時間はずっと本を読んでいる。だから、いつの間にか1人が好きになっていたのかもしれない。

そんなことを考えてると、クラスメイトに話しかけられる。颯人だった。何を言うのかと思いきや、


「俺さ、お前の事好きなんだよね。付き合って。」


言われた瞬間、思考停止になる。


「え?」


思わず声に出してしまった。たまたま今日は早く起きれて早めに学校に着いたから、他の人はいなく、聞いてた人はいないようだ。それとは別になんで今って思った人もいるだろう。実はつい先月、私は小6から付き合っていた彼氏と別れたのだ。理由としては、私の力不足とこれからを考えての結果だった。その時は私から振ったものの涙か止まらなかった。だから、今回は後悔したくない。そんな気持ちでいっぱいだった。なのに特に私は思いやりの気持ちが強いらしいく告白してくれたんだもん答えなくてはと思ってしまうらしい。だから答えは、


「いいよ、付き合ってあげる。」


そう答えた。でも私は条件を付けた。


「みんなに内緒でね。」


うちの学年は噂の回るスピードがものすごく速い。だから大騒ぎになっては困るので内緒という条件をつけようと思った。


「いいよ、内緒ね。」


そう颯人は答えてくれた。颯人とは、アニメが好きだったりと趣味が会う部分が多かった。だから幸せになれると思った。


でも、そこからだった。私の幸せが狂い始めたのは。


次の日、学校に行くと、噂が広まっていた。それはもちろん「私と颯人が付き合っている」といううわさだった。「なんで?どうして?」そう思った。もちろん、私は誰にも言ってないし、言うつもりもなかった。それなら。もちろん颯人が言ったに決まってる。


「噂広まってるんだけど。どういう事?私は何も言ってないし、それに約束したよね?」


と聞く。もちろん私たちが喋ってるだけで、噂を本当だと思う人が増える。本当の事だけども。


「知らないよ。俺は広めてない。」


いくら聞いてもその一点張りだった。ならもうこっちが折れるしかないのだ。


「分かった。」


そう言って私は自分の席に置いてある恋愛小説に目を向ける。いつもサブバッグに5冊の小説が入ってあって常備してるもののひとつだ。「こんなふうに恋愛が出来たらいいのに」なんて思いながらも続きを読む。そんなことがありながらも長かった1日が過ぎてゆく。

帰りはお母さんの迎え。でもまだ来てないみたいだ。うちの学校は校門を抜けるとすぐ左に駐車場がある。少し離れにあるため、はっきりとは見えないが、自分の家の車はすぐに見つけられるようになった。まだ来ていないとなると、「孤独の石」という勝手に自分で命名した大きい石がある。そこでいつも1人で待つのだ。でも時間が経つにつれて帰る生徒が多くなる。1、2年生も帰りの会が終わったようだ。そうなると、車を待つ人でうるさくなる。でも逆に私はその方が良かった。自分に気づき話しかける人がいなくなるからだ。そう思って駐車場を眺める。すると、


「じゃあね。また明日。」


自分に言ったのだろうか。久しぶりに聞いた、「また明日」誰かと思って振り返ると、雅也だった。


「うん。バイバイ。自転車気をつけてね。」


そう返す。すると、ちょうどいいタイミングでお母さんの車があった。車に乗り、家に帰ると、まずは携帯を触る。これが日課だ。すると、颯人からメールが来てた。


「ごめん。別れよ。好きな子ができた。」


「え?」そう思った。それと同時に私は必要なかったんだなとも思った。泣きたくなった。自分の居場所が分からない。必要とされてるのかもわからない。いきなり不安のどん底に埋まった気分だった。人間不信にもなりかけていた。そんな時、


「ね〜宿題教てぇ」


とメールが来た。雅也だ。こんな時に。


「今じゃないとダメ?ちょっと今しんどくて。」


こんな事誰にも言えない。そう思った。


「今じゃなくてもいいけど……なんかあった?」


「振られた。好きな子ができたんだってさ。私、いら

なかったみたい。笑えるよね。」


そんな感じの会話が続くのかなと思っていた。こんな話されても嫌だよね。と思いながら、


「ごめん無かったことにして。宿題ね、今送るよ。」


そう送った。その瞬間だった。携帯が小刻みに揺れ着信の合図を出している。相手は、「雅也」。さっきまで泣いてたから声が……でも、出ないのも失礼だよね。そう思って


「何?」


「大丈夫か?」


大丈夫。なわけない。着信が来るまでに実は颯人からメールが来ていた。


「ごめん、やっぱり君がいい。好きな人なんていない。君しかいない。お願いだから、もう一度付き合って貰えませんか?」


こんなん見たらむかつき過ぎて逆に泣けてきたのだった。


「た、助けて。」


それから雅也には全て話した。雅也は全部受け止めてくれたのだ。嬉しかった。でも、多分心のどこかで好きでもあった。

数日後、雅也が颯人に言ってくれたらしい。私が嫌がってたこと。そしてもうやめろと 。その後、私の元にもメールが来た。

「嫌がってたなんて分からなかった。ごめん」

「別にいいよ。」

なんて送りながらも興味がなかった。そこまで好きでもなかったから。付き合って好きになる恋があるのかもしれないと思っていたから。

そしてこれをきっかけに自分の存在と生きる意味について何もかも私が居なくなればいいのかななんて考えるようになった。


「生きたくないけど死にたい。」そう思うようになったのは数ヶ月後の事。何もかも努力しても上手くいかない。人間関係も上手くいかない。ならいっそと考える。そんな時にいつもメールをくれるのが雅也だった。相談事も沢山した。される事もあった。それが唯一の楽しみでもあった。だから、私はまさはのことが好きで思い切って雅也の好きなボブにした。そこまで似合わなかったけど自分としては満足だった。


学校が終わり、家に帰る。メールを確認すると、誰からも来ていなかった。いつもなら雅也から何かしらは来ていた。疲れているのだろうと思い携帯を閉じた。でもそれが数週間続いた。さすがに私は耐えられなかった。今までは、雅也と話すことだけが生きる意味であったが、それがなくなり、また「自分は必要ない」と思うようになった。学校でも話さなかった。もう必要ないのだと確信してしまった。

受験まで気がつくと1ヶ月。勉強勉強の日々にはもう慣れた。相変わらず話してこない。「もう諦めよう。多分、私が告白しても多分振られる。」それが確信になったのは翌日だった。


告白したらしい。相手は、雅也の好きなボブの似合う可愛い女の子。返事はまだらしいが、絶対付き合うだろう。2度目の失恋か。そう思った。付き合ったら、絶対応援するんだ。諦めよう。

「振られた。」

久しぶりのメール。相手は、雅也。振られたって。え?その瞬間、私は電話をかける。

「大丈夫?」

「大丈夫だと思う?」

「大丈夫なわけないと思う。」

必死に慰めた。できる限りのことをした。でもどこか嬉しかった。そんな自分に嫌気がさした。


翌日、学校へ行くと、暗い顔の雅也。そんな雅也に私は何度も話しかけた。気分屋という事もあり、立ち直るには時間がかかった。

そんなことをしていたらもうすぐ受験だ。そのあとは卒業式。私は卒業式が終わったら雅也に告白しようと決めた。


受験の日。朝は早めに起きて支度をする。最終の勉強を少ししたら受験会場へ向かう。廊下でも勉強。五教科テストの後、面接がある。面接は私立試験の時に練習して、2回目の経験となるから大丈夫であろう。そんな軽い気持ちで望んだ。筆記は手応えあり。面接も手応えあり。あとは発表を待つだけ。やっとの開放感。でも、落ち着いてはいられない。あと数日で卒業式。

そのあと数日は凄い早かった。気づけばもう明日。

「告白か〜」

なんて口にしながらベットに飛び込む。明日は久しぶりに髪の毛にアイロンをかけようとか、ハンドクリームを塗ろうとか、たくさん考える。がんがえているうちにいつの間にか眠ってしまった。


卒業式。卒業証書をもらい、写真を撮る。そのあと外に出て、後輩たちの花道を通って終わり。そのあとは個人で写真を撮り、帰る。帰ってから、メールで告白しよう。そんなことを考えながら花道を通る。元々所属していたバスケットボール部の皆で写真を撮り、クラスで写真を撮る。今どきの加工を使って。家に帰り、制服に感謝しつつハンガーにかける。携帯を手に取り、


「卒業式お疲れ様。」


と送り、


「あのね、実は。」と打ち込んでいると、


「お疲れ様。今までありがとな。高校頑張れよ」


とメールが来た。その返事をしようと打ち込んだ文字を消していると、


「俺さ、実はお前が好きだった。」


「え……」目には涙が浮かんでいた。人生2度目の両思い。嬉しかった。なんて、表せないぐらいに。


「告白ありがとう。私はね、」


と返し、

「ずっと大好きだったよ。」


と送る。


何も見えず、ただ一人でいた自分を、周りに人のいる世界に連れ出してくれたのは君だったんだね。気分屋でもうるさくても私はあなたがいい。1人でいるよりあなたといた方が私は幸せ。そう、始めて思えた。彼と一緒にいると、白黒だった私の世界に色が着いたように明るく彩やかになっていった。「ありがとう。」こんな言葉じゃ伝えきれないくらいの感謝と「大好き」では伝えきれないぐらいの愛を教えてくれてありがとう。

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