1 きっと、絶対だからね。約束だよ。
風の便り
登場人物
伊織風 中学三年生の女の子
葉守緑 伊織が恋をしている、いなくなった中学三年生の男の子
プロローグ
さようなら。大好きだよ。
本編
あなたと過ごした日々を私は一生、……忘れない。
さようなら。大好きだよ。
と、最後にあなたは私に言った。
きっと、絶対だからね。約束だよ。
夏の日。
十五歳の、今年、中学三年生の伊織風は旅に出た。
電車に乗って、遠くの土地までやってきた。あなたのくれた手紙と、バックに詰め込んだいっぱいの荷物と一緒に、あなたに会うためにやってきた。
それは大変な旅立った。
それは孤独な旅だった。
(なんども泣きそうになった)
でも、それでも諦めずに伊織はこの町までやってきた。
あなたにもう一度会うために。
あなたに、好きです、って告白をするために、やってきた。
緑の森と山のある、この自然あふれる見知らぬ土地までやってきたのだ。
そこはとても不思議なところだった。
そこはとても美しいところだった。
駅には緑あり、猫がいた。その代わり人の姿はなかった。無人駅だ。そのおんぼろの木造の駅を降りると、伊織は一人、駅でお金を払い、(お金を置く箱のようなものがあった)その駅を出た。
すると、世界は緑色になった。
すべてが緑色の世界だった。
不思議なところ。
伊織は思った。
こんなところに、あの人はいるんだ。
そんなことを思いながら伊織は空を見上げた。木々の間から見える空は青色だった。
本当に晴れた青色の空。
本当の青色がそこにはあった。
「よし」
伊織は気合いを入れる。
それから、土色の道の上を一人で歩き出した。
手には白い手紙を持っている。
それはあなたがくれた手紙だ。
その手紙には、『地図』が同封されていた。
そのあなたの手書きの地図を見ながら、伊織は歩く。
あなたの元まで。
大好きな人がいる、ところまで。