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97話 失敗作。

麦が視線を落とした先には豪華な絨毯(じゅうたん)があった。


そんな絨毯に対して羨ましい、だとか良いなと言うような憧れの気持ちを麦は感じなかった。


ただ、大也の言った“実の父親”という言葉に違和感を感じていたからだ。


いや、それは違和感と言うにはあまりにも生ぬるい。


激しい嫌悪と疑惑。


そして、激しい怒りが麦をドロドロと溶かしていく。


麦自身もそれには気づいており、足元から頭にかけて黒いドロドロしたものに身を包まれるような感覚を覚えていた。


「腑に落ちない顔ね…麦」


栞菜は麦の中の嫌悪感だったり怒りを紛らわすように口を開いたが、麦の意識は栞菜には行かなかった。


ソッと麦は自身の肩に置かれた栞菜の手を払うとベッドで眠る鶴巻 賢次から距離を取った。


麦のその行動は大也と栞菜を激しく不安にさせた。


なぜならば、その行動が鶴巻に対しての拒否行動と捉えられたからだ。


それはつまり、本依頼への拒否であり、失敗である。


しかし、それでは大也も栞菜も収まりがきかないのだ。


それは“実の父親”を救いたい、という意識が関係しているのではない。


麦が感じているように“自己利益”の為なのだ。


「“実の父親”……。本当にそんなことを思ってるのか…?」


麦は大也と栞菜に背を向けて、高い部屋の窓から町を眺めながら2人の心に問い掛けた。


鶴巻家の人間は気高い野心というよりは“どす黒い野心”の塊である。


だからこそ、麦は大也と栞菜に人の心があるのかを確かめたかった。


少しでも、人の心を持っていてほしい。


そんな期待を麦はしていたが、そんな期待を大也も栞菜も見事に裏切るように笑みを溢した。


「はっはは。おい、麦。お前もわかっているだろう?俺達のことは、えぇ?」


大也は笑い声をあげると麦の横に立った。


そして、窓の外の世界を指差しながら偉そうに口を歪めて口を開いて見せた。


「知ってるか?この国を今、支えているのはこの鶴巻だと言っても過言じゃない。今、あそこで道を歩いているサラリーマンも赤子を抱く女も……皆、俺達が支えていると言っても良いんだよ」


それは大也の傲慢な性格が顕著に現れた瞬間なのかも知れないが、麦にとっては呆れた気持ちだった。


化けの皮が剥がれたと言うよりはそれが大也、本来の姿でありむしろ、清々しく感じた。


これからが、本当のスタートなのだ。


大也が本性を見せたからこそ、交渉が始まるのだ。


麦は窓の前で自慢気に民衆を見下す大也に嫌な顔をした。


しかし、大也は麦のことを気にせず自身の価値を下げる発言を重ねていく。


「そう、この世は鶴巻のものだ。…そんな鶴巻の頭である鶴巻 賢次はデカイ金庫を……いや、むしろはあれはシェルターだな」


「シェルター?」


「あぁ、シェルターだ。あの男はこの建物の地下にシェルターを持っている。だが、その中に入るのにはパスワードが必要なんだ」


大也の目的はこれだったのか、と麦はこの先に大也が何を口にするのかを容易に想像することができた。


怒りというよりは諦めに近い感情が麦の気持ちを冷ましていく。


「そのパスワードの解読は特殊なセキュリティの為に正しくパスワードを打ち込まないと開かないようになっている。もう、わかるな?」


大也は麦を拘束するように鋭い視線を麦に突き刺したが、麦はそれをさらりと避けて、再び、鶴巻 賢次の隣へと移動した。


鶴巻 賢次は父親としては最低最悪であった。


子どもの為に何かをすると言うよりは将来の自分の右腕を育てることに精進していた。


それが幼い大也は栞菜、そして、麦に厳格で尊敬すべき父親だという暗示をかけていた。


「噂によれば、その金庫には“膨大な富”が隠されているって噂よ。……いいのよ、無理をしなくても。私達だってそんなに鬼畜じゃないわ。金庫の財産をあなたに少し分けてあげるじゃない?ねぇ、欲しいでしょ?」


先程と同じように栞菜は麦の肩に手を置いたが、同じなのは形だけであった。


麦の肩にのせられた手は汗が滲んでおり、強く麦の肩を握っているのだ。


それはまるで、麦を逃がさないようにしているようで麦は居心地が悪かった。


できることならば、ここから早く逃げたいと思っていたがそれをすれば自身の首を締めることは明らかである。


修復屋は鶴巻によって、破滅への道を歩むだろう。


「金なんて……いらないよ……」


麦は栞菜を鋭く睨み付けると強く栞菜の手を払い除けた。


これには栞菜も驚いたようであり、目を丸くして麦を見つめた。


「無駄だ。そいつは金で動かない人間だ」


それは褒め言葉と言うよりは皮肉に聞こえるのは麦の心が荒んでいるからではないだろう。


親への尊敬も愛もない大也の言葉だからだろう。


「オレは…鶴巻家の“失敗作”だ。だけど、オレはそれで良かったよ」


麦は自身の出生を皮肉たっぷりに大也と栞菜に語った…。

次回の更新は4月14日(日)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→??

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

青野 槙子→ゴミ屋敷の幽霊。

剣持 境矢→聖人?

謎の女?→浄化。

鶴巻 大也→鶴巻グループの人間。

犬川→手紙の主。

水野 空→??

槍の男→麦の命を狙う者?

鶴巻 栞菜→鶴巻 大也の妹。

鶴巻 賢次→鶴巻グループの社長。

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