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94話 偽りの日々へ。

道を走る数々の車はミニカーのように小さく見える。


そして、どれもこれもボロボロであると錯覚させられる。


それも無理はなく、麦の乗っているリムジンがあまりにも強烈的だからである。


道の脇を歩く者達は鶴巻のリムジンが道を走る度に目を丸くして、指を指した。


その行動は決して、鶴巻のリムジンをバカにしている訳ではなく尊敬なのだろう。


道をキラキラと輝きながら走るリムジンに皆、心を踊らせているのだ。


自分もあんな高級車に乗りたい、と顔を見ればわかる。


そんな人々を見る度に鶴巻 大也はご機嫌そうに指で自身の顎を撫でた。


「ま、汚い庶民どもにはこの車に触れることもできんだろう」


人間としての品格や行いは最悪であり、底辺である。


しかし、それに反比例し鶴巻には金が集まり、鶴巻に力を与えている。


あまりにも腑に落ちない現実に苛立ちを隠せない麦は鶴巻の言うことを無視し窓の外へ目をやっていた。


「この件を無事に解決したからお前を幹部として向かい入れてやってもいいぞ。どうだ?」


「オレには店があるから」


麦に迷う時間はなかった。


鶴巻にポストを用意してもらえることほど光栄なことはないのだろう。


修復屋と鶴巻ではその規模は蟻と像ほど違うのだから。


だが、麦にとって鶴巻ほど居心地の悪い場所はない。


麦にとってはそこは太陽の光が当たらない海底なのだ。


暗く、寒い場所であり孤独な場所。


騒がしい修復屋とはまるで違う場所である。


「店?あんな小さい小屋が店とは……。ま、あんな小屋でも今回は私達、鶴巻グループの力になれるんだ。自慢の1つや2つはしても良い、と許可をやるよ」


鶴巻 大也の態度は実に上からであり、常に麦を見下している。


いや、麦だけを見下しているのではない。


鶴巻グループに属さない人間を見下している。


道を楽しそうに歩く人達や忙しなく歩く人達。


彼らや彼女らは決して、この世の見下しの対象にはならない。


皆、この世にとって大切な歯車であり主役なのだ。


それにも関わらず自身を主役以上の存在、つまりは自身を神であると勘違いしているような鶴巻の発言に麦は失望感を覚えていた。


その後も鶴巻 大也は民衆を敵に回すような発言を繰り返してたが、それに麦が答えることはなかった。


ジッと窓の外を見て無視し続けた。


「お待たせ致しました。到着しました」


麦が口を閉ざして数十分後に鶴巻のリムジンは停車した。


それと同時にスーツを着こなした男が車の扉を開けると鶴巻 大也と麦に深々と頭を下げた。


「さて、着いたぞ。これから働いてもらうからな」


リムジンを降りた麦の目の前には大きなビルがそびえ立っている。


20階以上はあるだろうか。


麦はそんなビルを目の前にして、驚くよりも先に嫌悪感に襲われた。


このビルの中に入ることを拒む自分と仕事への義務が格闘しているのだ。


これから先に待ち受けるものは何なのかはもう、わかっている。


だから、心づもりを麦はしていた。


だが、そんな心づもりは結局は無意味であったのだ。


どれだけ、色々なことを考えて心づもりをしても実際のものとは違うのだ。


迫力や圧迫感、プレッシャーが段違いなのだから。


鶴巻 大也はリムジンを下りて軽い足取りでビルへと向かったが、麦がついて来ないことに気づくと足を止めた。


「おい、どうした?まさか…今さらできないとか言うんじゃないだろうな?」


圧倒的なプレッシャーであり、脅迫である。


ここで逃げれば修復屋を潰す、と鶴巻 大也の顔を語っている。


麦は(よじ)れるような心をグッと噛み締めて鶴巻 大也の元へと歩き出した。


そんな麦を見て鶴巻 大也は得意気な顔を作ると再び、歩き出した。


「お帰りなさいませ」


顔立ちが整い、艶やかな黒髪を伸ばした女性が現れると2人をエレベーターのほうへと先導し始めた。


「良い女だろ?お前の店にいた女…水野…蛍だっけな?良い勝負だと思うんだが」


「おい!」


「冗談だよ、冗談。だが、この依頼を成功させれば女をくれてやっても良いぞ」


蛍のことを口にした鶴巻 大也に怒りを見せた麦に対して、なだめようと報酬の話を鶴巻は持ち出したのだろう。


しかし、その話は麦の期限を余計に悪くさせること話であった。


「いらないよ。今回の報酬はいらない」


「ほぅ…じゃ、金もか?」


「当たり前だ」


報酬は何もいらない。


だが、その代わりに“もう2度と修復屋へ来るな”というのが麦にとっての報酬なのかも知れない。


少なくとも麦の鋭い視線がそれを語っている。


女性につられてエレベーターへと取り込んだ麦はリムジンの時と同様に外に目をやった。


幸い、エレベーターの壁はガラス張りになっており外が覗ける。


「お前は…昔からそうだな」


鶴巻 大也は昔を思い出す様にそう口にしたが、麦の心には何も響かなかった。


“偽りの日々”に思い出が存在しないからだ…。

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→??

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

青野 槙子→ゴミ屋敷の幽霊。

剣持 境矢→聖人?

謎の女?→浄化。

鶴巻 大也→鶴巻グループの人間。

犬川→手紙の主。

水野 空→??

槍の男→麦の命を狙う者?

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