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91話 分岐点。

学校の玄関へ到着した蛍と舞火は靴を履き替えようとしていた。


誰も2人を止める者はいない。


もしも、いたとしても2人に止まる気などない。


今すぐにでも、修復屋へ行く必要が2人にはあるのだ。


その理由は私情を挟み、合理的ではない。


だが、蛍と舞火にとってはそれで良いのだ。


それだけがあれば十分すぎるのだ。


「行こう、舞火」


「ちょっと…待って」


靴を素早く履き替えた蛍とは違い舞火は靴を履き替えるのに手こずっていた。


なにも急いでいない訳ではない。


急いでいるからこそ、空回りしているのだ。


さらに、素早く靴を履き替えた蛍に急かされることで舞火のスピードは遅くなっていく。


そんな玄関であたふたする2人に勢いよく近づく足音が近づいていた。


「うん?足音?」


その音を耳で捕らえた蛍は教師が来たのではないか、と思い面倒だと思っていたがどうやら教師ではないようだ。


いつも口酸っぱく廊下を走るな、と言っている教師達がこんなにも騒がしい足音を廊下に響かせないだろうと思ったからだ。


それは重く、うるさく、力強い足音。


「おい!お前らどこに行くんだ!」


大きな怒鳴り声を玄関に響かせたのは轟太であった。


眉間にシワを寄せて怒っているような表情であったが、蛍と舞火は轟太を見て安心を覚えた。


少なくとも轟太のほうが教師よりも理解があるからだ。


「嵐山先輩…。どこって今から修復屋へ……」


「俺様も行くぜ!」


蛍が行き先を述べようとした時、轟太はそれを遮るように大きな声をあげた。


轟太がそんな反応をすることは蛍には予想できていた。


ここに轟太が勢いよく走ってきたのも教室を覗きに来たからだろう。


きっと昨日、麦が店にいなかったことを気にしていたのに違いない。


「え…。先輩も……」


轟太が一緒に行くことを知って舞火は露骨に嫌な顔を見せた。


舞火にとって麦を過剰に慕う轟太は邪魔で仕方がない存在なのだ。


舞火の麦と2人きりになりたい、という願望が叶えられないからである。


嫌な顔を見せた舞火に反応した轟太は素早く舞火を睨み付けた。


「あぁん!?俺様はアニキの所へ行ったらダメなのか!!」


「ひぃ!」


舞火は鏡矢とは違う。


鏡矢が相手ならば敵意を向けても怖がることはなく、むしろ睨み返してくる。


しかし、舞火は喧嘩慣れしていない為に轟太の敵意に肩を震わせた。


そして、素早く蛍の背に身を隠した。


「蛍~……」


「はいはい。よし、よし」


蛍は自身の背に隠れる舞火をなだめると轟太を睨み付けた。


轟太が一緒に来ることに対して嫌な顔をした舞火も悪いし、それに対して過剰に反応した轟太も悪い。


だから、どちらとも悪いという訳になる訳だが轟太は蛍の視線にゾッとした。


蛍の怪力を知っているからこそゾッとするのだ。


蛍は柱に穴を開けるほどの腕力を持っている。


轟太にはとてもできない芸当であり、簡単に体に穴を開けられそうで怖くて仕方がなかった。


「あの、いじめないで下さい」


「あぁ…すまん……」


簡単に謝った轟太は渋々、靴を履き替えた。


そんな轟太を見て舞火が良い顔をしていたことは言うまでもない。


修復屋にたむろすメンバーは鏡矢を除いて揃った。


3人は靴を履き替え終えると顔を合わせて学校を出た。


この3人はそれぞれに想うものがある。


そして、この3人とは別の場所にいる鏡矢もそうだ。


麦に対して慕う気持ちや吸い寄せられるものを感じている。


蛍達が学校を出た頃、鏡矢はとある喫茶店にいた。


テーブルにはコーヒーが置かれてモクモクと湯気を立てている。


どことなく修復屋に雰囲気が似ている喫茶店。


しかし、この喫茶店にはあまり人がいない。


これは時間が関係しているのかも知れないが、ここは隠れ家のような知る人ぞ知る店なのかも知れない。


鏡矢がここにいるのは待ち合わせをしているからだ。


そして、この待ち合わせには人気が少ないことが条件である。


完全に人気が少ない所であると逆に怪しまれる。


人気が多すぎると情報漏洩の危険が伴う。


その為に人気が少ないこの店を選んだ。


「ふぅ……」


鏡矢はため息を溢してテーブルのコーヒーをスプーンでかき混ぜ始めた。


コーヒーに口をつける気は全くなかった。


そんな気分になられないのだ。


鏡矢は麦と接するうちに自身の使命を忘れていた。


それは麦と蛍という存在を霧に隠すため。


変えられない事実を自身に気づかせないように目を閉じていたのだ。


しかし、それも今日で終わる。


偽りの日々は今、音を立てて崩れるのだ。


「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」


「……連れが先に来ているはずだが」


店内を訪れたその声を聞いた鏡矢はゆっくりと席から腰を上げた。


待ち合わせをした相手が現れたのだ。


そして、ここから分岐点が用意される。


鏡矢はスッと息を吸い込むと表情を殺した。


鏡矢は“聖人”になったのだ…。

次回の更新は4月6日(土)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→??

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

青野 槙子→ゴミ屋敷の幽霊。

剣持 境矢→聖人?

謎の女?→浄化。

鶴巻 大也→鶴巻グループの人間。

犬川→手紙の主。

水野 空→??

槍の男→麦の命を狙う者?

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