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78話 優しい光。

槍を強く握る男の言うことを麦も蛍も1つも理解することができなかった。


それは勝手な因縁であるからであり、全く心当たりがないからである。


男はジッと蛍を見つめて槍の先を2人に向けた。


黄金に輝く槍の刃は実に鋭く、ベンチを簡単に破壊できたのも納得できるほどの威圧感を放っている。


「“ゲイ・アッサル”は狙った者を逃がさない」


槍で突き刺すのではなく、槍投げのように腕をあげて槍を構えた男は一言、言葉を洩らすと投擲の構えをとった。


男の言葉は相変わらず何を言っているのかわからない。


しかしながら、麦も蛍も槍がこちらへ飛んでくることは理解できた。


麦は槍が飛んでくるかも知れない恐怖から1歩、身を後ろに退いたが蛍は堂々と構えていた。


男と麦と蛍までの距離は5m近くはある。


その距離から槍を投げられたとしても蛍には避ける自信があった。


持ち前の反射神経を屈すれば避けることは容易であると考えていたのだ。


「大丈夫です。ムギさんは私が守りますから」


「ホタルちゃん……」


蛍が麦に対して強い意思を見せた時、それは突然やって来た。


男の腕から放たれた槍は物凄いスピードで麦と蛍のほうへと向かってきている。


そのスピードは風を切る音からうかがえる。


このスピードなら避けられる、と蛍は余裕を持って麦の手を取ろうとしたが槍は突如、2人の目の前から姿を消した。


「消えた!?」


あまりにも予想外の出来事に蛍は目を丸くして男を見つめた。


男には槍で2人を貫く自信があるのだろう。


ジッと2人を見つめて得意気な顔を作っている。


だが、蛍がどんなに目を凝らしても槍の姿を捕らえることができない。


まさかの出来事にパニックになる蛍では麦を守ることはできないだろう。


その時、冷静に周りを見ていた麦には槍の姿を捕らえることができていた。


いや、正確に言えば槍を音で捕らえていた。


槍が空を裂く、ヒューヒューという音を麦の耳は確かに捕らえていた。


その為、麦には槍がこちらへ向かってきていることがわかった。


「危ない!!」


槍が空を裂く音から槍が目の前まで来ていることに気がついた麦は蛍の肩を抱いてその場で身を伏せた。


それと同時に麦と蛍の後方で爆発音が響いた。


「なにが……?あれは……」


麦に助けられた蛍は爆発音がした後方に目を向けて穴が開いて、倒れる木を見つめた。


グッと息を飲む蛍は生きた心地がしなかった。


麦を守る、と威勢良く口にしておきながら麦に命を救われたことに対して無力感を感じつつ、男との力の差を感じたのだ。


最初に男の顔面を捕らえた蛍のパンチがいかにラッキーパンチだったことだろうか。


今になって蛍は麦を連れて逃げることを考えたがそれは難しいと瞬時に思った。


「また避けられるとは……。それほど君達が“特別な存在”であると言うことか」


槍を手放してもなお、余裕を見せる男を見る限り全ての力を出していないことがわかる。


それが圧倒的な差を蛍に見せつけている。


「ムギさん…逃げて下さい。あなただけなら、何とか逃げられるはずです。時間は私が稼ぎますから……」


蛍は額に汗を滲ませるながら麦にそう言うと麦の前に立ち、男を睨み付けた。


蛍に余裕がないことを知ってか、男は不適な笑みを浮かべている。


いつでも殺せるんだ、とその笑みは言っているようで蛍を追い詰めるように敗北感を与えている。


「ホタルちゃん…」


「私は大丈夫です。とりあえず、ムギさんは…逃げて下さい!」


「ホタルちゃん……」


「だから!早く、逃げて!!」


余裕のなさからか、蛍は大声をあげて麦を睨み付けるように視線を飛ばした。


そんな蛍の瞳に映ったのはいつもの麦であった。


麦は優しい笑みを浮かべ、余裕の表情を浮かべている。


それは呑気、という言葉では片付けることができないほどの眩しい笑み。


蛍が麦に見とれていると麦はソッと手を伸ばして蛍の手を握って見せた。


「ムギさん…なにを……?」


蛍が麦に手を取られ、自身の手に目を向けると手の甲から出血があった。


おそらく、槍がかすったのだろう。


「大丈夫です。こんなのすぐに治りますから」


自身の傷に気づいた蛍は意識を傷口に集中させ、自己修復を試みるがその傷から血は止まらない。


「なんで?いつもならこれぐらいの傷、すぐに治るのに…」


蛍が自身の体に異変を感じる中、麦は蛍に金色の光を放った。


それはとても暖かい、優しい光。


手の甲の傷が治ると同時に蛍は心も癒されたような気分になり、少し心に余裕を見いだすことができた。


そして、あの町に麦と一緒に帰る決意をすることができた。


「これで大丈夫だよ」


「ムギさん…何から何までありがとうございます……自分が情けないです」


「そんなことはないよ、守ってくれることは嬉しいよ。でも、今度はオレがホタルちゃんを守る番だ!」


麦は蛍の治療を終えると男の前に立った。


そして、ジッと男を睨み付けた…。

次回の更新は2月23日(土)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

青野 槙子→ゴミ屋敷の幽霊。

剣持 境矢→聖人?

謎の女?→浄化。

鶴巻 大也→鶴巻グループの人間。

犬川→手紙の主。

水野 空→??

槍の男→麦の命を狙う者?

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