表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/130

77話 罪人達。

蛍の瞳に映る黄金の槍は一目見れば、その美しさにその価値を頭の中で巡らせるだろう。


しかし、蛍の場合はそんな考えは浮かばなかった。


麦に槍が向けられているという状況が蛍から冷静を奪ったのかも知れない。


蛍は勢いよく病院の廊下の窓を開けるとそこらから身を投げた。


蛍のいる場所は3階であり、高さにすれ約8m。


そこから身を投げれば普通ならば負傷を負うが、蛍は見事に地面に着地すると息をつく間を忘れ、槍を持った男に突進した。


「ムギさん、伏せて!!」


その蛍の言葉で蛍の存在を認識した麦は蛍が突如、姿を見せたことに疑問を感じたがすぐに身を守るように丸くなった。


槍を持った男も蛍のその声で蛍の存在に気づいてたはいたが、油断をしたようにその場から動こうとしなかった。


その行動が麦と蛍に幸いした。


動かない男に対して地面を蹴り、突進した蛍は大きく腕を体の後ろに引き、拳を握り締めた。


その様子を見ても男は動こうとはしたかったが蛍が地面を蹴る跡を見て焦りを顔に出した。


蛍が走った道が抉れているのだ。


そこから繰り出されるパンチの威力は言うまでもない。


しかしながら、男が恐怖を感じるのは遅く、蛍のパンチは見事、男の顔面を捕らえた。


鈍い音と血を撒き散らしながら男は数メートル先に吹き飛ばされると仰向けになり、動かなくなった。


「あ……あ…あ……」


あまりの威力に開いた口が塞がらない麦は男を見つめて、生唾を飲み込んだ。


相手の心配をさせられるほどの威力が蛍の拳にはあるのだ。


それも人智を超えたレベルで。


「ムギさん、お怪我は?」


男を殴り飛ばした険しい表情を浮かべながら丸まる麦に声を掛けたが、その視線は男のほうへと向いていた。


決して、麦を心配していない訳ではない。


逆に心配しているからこそ、男から目を離せないのだ。


確かに蛍の拳には男の顔面を砕いた感触が生々しく残ってはいるが、蛍は不安にかられていた。


そして、その不安は形となるように数メートル先で男はゆっくりと体を起こした。


「怪我はないけど……あいつ、生きてるのか?」


「見たいですね。あの人は誰なんですか?」


蛍に男のことを聞かれて麦は改めて知った。


あの男が何者か全くわからないと。


男のことを探ろうとしたがそれは無意味で、男は純粋に麦の命しか狙ってはいなかった。


麦自身にもその意味が全くわからないままなのだ。


「……わからない。でも、オレの“力”が関係していることは確かだと思う」


「そうですか……」


蛍が抑揚のなく答えたのは麦が頼りない、と思ったからではない。


得体の知れない相手に対して恐怖を感じているからである。


「痛いな……」


麦と蛍に視線を向けられている男はゆっくりと立ち上がると服の汚れを気にするように服を叩いて見せた。


余裕があるようなその仕草が麦と蛍の動きを止めた。


誰がどう見ても絶命レベルのパンチを食らったのにも関わらず、けろっとしているのだ。


加えて、蛍に殴られた頬は少し腫れているだけで重症というにはほど遠い。


「まるで、“悪魔の拳”だな」


男の鋭い視線を浴びると同時に槍を強く握り締めた姿を見た蛍は窓から身を投げたのには理由が2つあることに気がついた。


1つは麦を助けるため。


2つは男の手にしてる槍に激しい嫌悪感を感じたからである。


それはこの世から抹殺しなければならい、と1つ1つの細胞が叫んでいるようなのだ。


「黙れ!!」


蛍はさっきと同じように男に突進し、拳を男に向かって突き出した。


しかし、その蛍の拳は男に届くことはなかった。


男は蛍の攻撃を華麗に避けると麦との距離を縮めた。


それを見た蛍は大きく跳躍し再び、男の目の前に立った。


「この人は私が守る」


「ホタルちゃん……」


蛍の献身的な姿に感動を麦は感じてはいたが、それに浸ることはしなかった。


この場において僅かな気の緩みが命取りになる。


相手が怪物ならば尚更、そうだろう。


「なぜ、この人を狙ったんですか?」


蛍は男に確信的なことを尋ねたが男はそれを無視し、蛍の顔をジッと見つめた。


その視線は先ほどまでとは違い親しみを感じられる。


だが、蛍にとっては気持ちが悪くて仕方がなかった。


だから、蛍は強い視線を向けたが男の視線は変わらない。


「私になにか?」


不機嫌にそう蛍が口にすると男は口元を緩めて、軽く笑みを作ると呟くような声で声をあげた。


「……似ている」


その言葉の意味は男にそう言われた蛍にも理解できない他、麦も当然、理解することができなかった。


2人が疑問に溢れる中、笑みを見せた男は笑みを瞬時に殺して険しい顔を作ると殺意を飛ばした。


その殺意は凄まじく、麦も蛍も身を退いてしまった。


「もしも、君がそうならば2人とも殺さなければならない」


これは勝手な因縁である。


麦と蛍には命を取られる心当たりがないのだから。


それでも、何もしなければ命を取られるのは確かである…。

次回の更新は2月17日(日)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

青野 槙子→ゴミ屋敷の幽霊。

剣持 境矢→聖人?

謎の女?→浄化。

鶴巻 大也→鶴巻グループの人間。

犬川→手紙の主。

水野 空→??

槍の男→麦の命を狙う者?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ