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74話 プロフェッショナル。

麦のかざした手が金色の光に輝き始めた時、蛍は息を飲み込んだ。


決して、麦の言葉を信じていない訳ではない。


だが、蛍の心の中に不安があることは事実であり大きな期待があるのは確かなのだ。


麦の手から放たれる光はやがて水野 空を包み込みと辺りは水野 空を中心に照らされた。


「くっ……」


麦は力を使う中で苦しそうな表情を浮かべた。


それは水野 空の状態が最悪に近い状態であることを告げているようであり、蛍は両手を組んで父親が目を醒ますことを祈った。


そんな中、この依頼をした犬川は麦をジッと見つめて険しい表情を浮かべていた。


今の犬川の頭の中には水野 空に対しての心配の気持ちはない。


ただただ、麦の力に驚きを隠せないという思いに比べて、麦の力があまりにも危険な力であることを確信していた。


「う……くっ……」


麦が水野 空に手をかざして数秒しか経過していないが、麦はもうすでに満身創痍の様に蛍には見えた。


それは蛍が常に麦がスムーズに傷を治してきた様を見ているからこそ、そう感じたのだろう。


いつもならば、瞬時に人の傷や物を治してしまう。


しかし、今日はいつもとまるで違う。


歯を食い縛った姿や額から流れる汗がこの修復に大きな力が必要であり、難しいことがわかる。


「ムギさん……」


そんな麦を見た蛍は無意識に声が出た。


いや、溢れ落ちたと言ったほうが良いだろう。


それほどまでに今の麦は苦しそうなのだ。


「大丈夫!オレは大丈夫だから……」


苦しそうな表情を隠して無理に笑顔を作る麦の姿はまさしく、プロフェッショナルである。


ある職人達はどんな仕事も簡単にこなしてしまう。


だが、それは職人達の腕が優れているからこそ簡単に見えてしまう訳であり、決して仕事の難易度が低い訳ではない。


今、麦はそんな職人達と同じなのだ。


どれだけ、苦しい依頼だったとしても笑みを溢し余裕を見せる。


それは自分の為以上に依頼者の為でもある。


依頼者を不安にさせない、という思いが麦に限界を超える力を与えているのだ。


「まさにプロですよ、あなたは」


麦の笑顔を作る姿にすっかり感服した犬川は麦に対して尊敬の眼差しをおくった。


犬川が麦の力に対して恐怖を覚えたことは確かである。


それは使い方次第で“世界を変える力”になるからである。


そして、犬川は知っている。


“古の王の力”を。


「よし!」


蛍と犬川に視線を飛ばした麦は再び、水野 空に視線を向けると自身に渇を入れるように声を出した。


そして、それと同時に水野 空を包む光が大きくなった。


そう、それは麦が出力を上げた証拠である。


これほど、大きな輝きを見たことがなかった蛍は口を開けてしまった。


今まで見たことがなかったからこそ、この後の麦が心配になって仕方がなかった。


いつも、麦は力を使った後、ひどく疲労していた。


これだけの出力を出した場合、麦はどれほどの疲労を味わうことになるのか。


どれほどの体力を削っているのだろうか。


そんな不安が蛍に麦の生命の危機を伝えているようで蛍はつい、声をあげようとした。


もう、やめて下さい。


その一言で麦が楽になることは間違いないだろう。


だが、それを言葉にできないのは麦があまりにも強い意志を蛍に見せたからである。


「ムギさん…頑張って……」


だから、蛍は麦を応援することしかできなかった。


そんな応援を聞いた瞬間、光は一番の輝きを放ち、消えた。


ドン、という何かが床に崩れ落ちた音が病室に響くと蛍と犬川は麦に視線を向けた。


床に膝をつく麦は今にも気を失いそうであり、生きながら死んでいるようである。


「ムギさん!!……ムギさん!!しっかりして下さい!!」


「……大丈夫。しっかりと治ったから……あとは目が覚めるのを待つだけ……だから……」


床につけた膝をゆっくりと立てた麦は若干、フラフラとしながら病室の扉へと向かった。


「犬川さん……オレは少し席を外します……。だから、水野さんのことを…ホタルちゃんに教えてあげて下さい……」


犬川には親子の関係に気を遣って席を外そうしているようには見えなかった。


どちらかと言うと麦は蛍に気を遣っているのだろう。


麦があれだの力を使って立っていられるのは蛍のことを想っているから。


蛍に気を悪くして欲しくない、という麦の気持ちが必死で病室の外へ麦を運んでいるのだろう。


「ムギさん!私も……」


「駄目だ」


病室の扉に手を掛けて病室を出ようとする麦に蛍は手を伸ばしたが、犬川がそれをすぐに遮った。


ここで蛍が行けば麦の努力は無駄になる。


この依頼を頼んだ犬川には麦のプロフェッショナルの姿を守る必要がある。


それが友を救ってくれた麦への感謝の気持ちなのだ。


「ありがとうございました」


病室から麦が姿を消す瞬間、犬川は麦に深く頭を下げた。


そんな犬川の隣では水野 空が気持ち良さそうに眠っている…。

次回の更新は2月9日(土)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

青野 槙子→ゴミ屋敷の幽霊。

剣持 境矢→聖人?

謎の女?→浄化。

鶴巻 大也→鶴巻グループの人間。

犬川→手紙の主。

水野 空→??

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