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68話 好敵手との友情。

教室の机で頬をつく蛍は授業中にも関わらず、ボーッとグラウンドを眺めていた。


グラウンドでは他学年の生徒達が持久走を行っている。


その中に轟太の姿があったが、蛍は特に心で応援することなく、轟太から視線を離した。


風に揺れる葉や枝が蛍には切なく感じて仕方がなかった。


麦を追い掛けて河原へと蛍は足を運んだが結局、蛍は麦に何もすることができなかった。


今まで麦にもらったものは沢山あっただろう。


麦に何も返せない無力感に蛍は深いため息を溢すしかなかった。


「はぁ……」


蛍のそんな深いため息は黒板を叩く教師の耳に届いたらしく、教師はチョークを挟んだ指で蛍を指差した。


「おい、水野。しっかりと聞いているのか?」


教室で授業を展開する教師は黒板に書かれたいくつもの数式を叩いて蛍に威圧的な態度を取った。


情熱的で人望が厚い教師であり、生徒からの人気も高い。


しかし、その情熱が誰にでもいつでも通じる訳ではない。


人によっては目障りに思うこともある。


熱い炎は近くにいけば火傷してしまうのと同じことなのかも知れない。


「えっ…あっ、はい……」


教師に指を指された蛍はあどけない返事を返した。


蛍の返事から教師のいうことを全く理解していないことがわかる。


それに腹を立てた教師は蛍と同じように深いため息を溢すと黒板に書かれた数式を蛍に見せた。


「じゃ、ここの問題を解いてみろ」


「4x-5です」


あまりにも素早く、そしてあっさりと答えを口にした蛍に教師は悔しそうな顔を浮かべると蛍に目を合わせることなく正解を認めた。


学校では成績優秀であり運動神経も良い。


そんな蛍がサラッと答えを口にしたことに対して周りの生徒は当たり前だ、というように頷いて見せた。


自身のプライドに傷を付けられた教師は咳払いを1度すると蛍とのやり取りを消し去り、生徒に背を向けて黒板に新たな数式を書き始めた。


蛍の中では正解を言い当てることができても微塵も心はスッキリしなかった。


数式のように心が単純ならばどれだけ良いだろうか。


黒板に書かれている数式を目にした蛍はそんなことを心の中で呟いていた。


蛍の心が授業に向けられることなく、授業終了のチャイムが檸檬高校に響いた。


「蛍、どうしたの?なんか元気ないね?」


授業が終わると同時に蛍の様子に異変を感じた舞火が蛍のもとへとやって来た。


実際、舞火は蛍の様子に朝から気づいてはいたがそれに触れないようにしていた。


いや、触れられなかったのだ。


「そう?…大丈夫。元気だよ、ありがとう」


蛍は心配そうな顔を作る舞火に笑みを溢した蛍は立ち上がると鞄を肩にのせて帰る姿勢を見せた。


「そう……。あたし、今日は委員会があるから先に帰ってて」


「わかった、頑張ってね」


「うん……」


いつもならば、学校が終わると同時に修復屋へと足を運ぶ。


しかし、今日は修復屋へと行かないのだろう。


舞火は蛍の表情を見てそれを感じていた。


だが、だからこそそれを口にした。


「麦さんの所に行くでしょ?」


「え!?」


「今日、クッキーを焼いたんだけど…麦さんに渡しておいて欲しいんだ」


蛍は舞火から袋に入ったクッキーを手渡されたがそれをすぐに舞火に突き返そうとした。


「じゃ、よろしくね!」


しかし、舞火は蛍にクッキーを手渡すと足早に姿を消していった。


その為に蛍の手には舞火のクッキーが残った。


舞火が麦と蛍との間に何かあったことは知らない。


あの日、河原で何を話したのか、何があったのかは知らないが舞火には感覚的にわかっていた。


だからかこそ、蛍に舞火はクッキーを託したのだ。


舞火にとって蛍は恋のライバルであることに間違いない。


だが、それと同時に舞火にとって蛍は“親友”でもあるのだ。


舞火はクッキーを持って学校を後にする蛍を見て微笑むと委員会が行われる教室へと向かった。


「はぁ…気まずい」


学校を出て商店街を歩く蛍は舞火のクッキーを見てふっと呟いた。


いつもならば軽い足取りで修復や屋へと向かうが今日は心がそうさせない。


重くのし掛かった重りが蛍の体を前へ進ませていないようである。


蛍も舞火の優しさには気づいていたがそれは悪意にも等しく感じられた。


麦との仲を何とかする機会を得られたことはありがたく感じているが、それは今でなくても良かった。


蛍の心が落ち着きを得られていないのに。


ズルズルと足を引きずるように蛍は商店街を向けると修復屋の前までやって来た。


「ムギさんいるかな……」


まるで麦の留守を願うかのような一言は店に届くことはなかったが、それは自身にプレッシャーを与えることになった。


なかなか足が進まない蛍だったが、舞火の優しさを無駄にできない、という気持ちが蛍を動かした。


「よし!考えてても仕方がない!」


蛍は覚悟を決めて修復屋の扉に手を掛けた。


そして、その扉が妙に軽いことに違和感を感じた…。

次回の更新は1月19日(土)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

青野 槙子→ゴミ屋敷の幽霊。

剣持 境矢→聖人?

謎の女?→浄化。

鶴巻 大也→鶴巻グループの人間。

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