表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/130

66話:鶴の力。

これが鶴巻グループの偉大なる力だ。


そう、鶴巻 大也は格の差を見せつけるようにスーツケースを修復屋へ置いていったに違いない。


店にいる誰もがそれを感じたし、それを疑わなかった。


スーツケースの中には1000万円は入っているだろう。


自分達にとってその金額ははした金だと言っているようなものである。


「これは……」


スーツケースを開けて大量の札束を見た重春は声を絞りあげたが、その声は呆気にとられていて頼りない。


しかし、それは蛍、舞火、轟太、境矢の4人も同じであり、若い4人にしてはあまりにも刺激が強い金額であった。


1000万円の大金を目にして何に使おうか、と考えるよりも鶴巻から逃げられない、という恐怖が重春の意識を覚醒させた。


「とりあえず、コムギを待つしかないじゃろ」


重春はそう言うとそっと、スーツケースの蓋を閉めた。


1000万円の大金が視界から消えたことをきっかけに蛍達も意識を覚醒させて重春の声に耳を傾けた。


「麦さんを待つんですか?」


「そうじゃ」


鶴巻が店にやって来てから麦の様子はおかしいことに舞火も気づいてはいたが、重春の発言に舞火は首を傾げた。


鶴巻グループと修復屋ではあまりにもスケールが違いすぎる。


例え、麦が鶴巻グループの依頼に首を振っても恐らく、逃げられないだろう。


「この店の仕事はあやつが行っておる。故に依頼を受けるかどうかはあやつが決めることじゃからな」


重春の言うことは最もである。


客が店を選ぶ時代は終わりを向かえて、店が客を選ぶ時代が来ようとしている。


店員とお客様という関係ではなく、物を売り買いする場面や依頼を受けるか場面において大切なのは“人間”である。


どんな関係であっても人間であることは変わりはなく、人間同士の関わりこそが大切なのだ。


しかし、今回の場合、麦が乗り気ではない。


「そうかも知れないですね……」


重春の言葉の意味を十分に理解した蛍は視線を落として、頷いて見せた。


その頷きは実に元気はなく、腑に落ちていないようであった。


「それで鶴巻グループからの依頼を断れるんですか?」


それはまるで鶴巻グループから逃げられるんですか、と境矢は言っているようでその言葉は場を悪くさせるようなものであったが、重春は違った。


重春はスーツケースを強く叩いて境矢に目を向けると力強い声をあげた。


「この店の店主はワシじゃ。そして、ワシには従業であるコムギを守る資格がある。相手が誰でも!」


拳を強く握り締めた重春はとても頼りがいがあり、悪くなった空気を吹き飛ばすような活気を感じる。


そんな重春に影響されるように轟太が両腕をあげて雄叫びをあげた。


「うぉぉぉ!!アニキは俺が守るぜ!!」


「そうだよ、麦さんはあたし達が守る!」


「仕方ないですね…」


轟太の雄叫びに反応して舞火が麦を守る覚悟を決め、境矢は乗り気ではない様な振る舞いをしているが、その心には確かな想いがあるのだろう。


その中で蛍は店内から消えた麦の姿が脳裏に浮かんだ。


あの切ない表情と寂しそうな後ろ姿が蛍の心にジワジワと穴を開けていく。


そして、その心の穴は蛍を焦りを駆り立てた。


「すみません、先に帰ります」


一同が盛り上がってる中、蛍は誰とも目を合わせることなく店を飛び出した。


しかし、店内の雰囲気が悪くなることはなかった。


なぜなら、蛍が麦を探しに行ったことをわかっていたからだ。


「どうするんですか?」


境矢は舞火に鎌を掛けるように問い掛けたが、舞火は優しい笑みを溢して境矢を見つめた。


「蛍に任せる」


それは嫉妬だとか妬みの気持ちは一切ない一言。


舞火は麦のことを想っているが、それと同じぐらい舞火は蛍のことを想っている。


だからこそ、蛍に麦を任せようと心から思える。


舞火が店で蛍に信頼を寄せる中、蛍は物凄い勢いで商店街を走っていた。


蛍の心に焦りや不安はある。


しかし、麦の行き先を見失うほど冷静さを失ってはいなかった。


麦がどこにいるのか、麦がどこで視線を落としているのか。


そんなこと、蛍には容易に理解できた。


「ムギさんはきっと、あそこだ……」


商店街を走る蛍は真っ直ぐに向かった場所、そこは河原だった。


いつも眠そうな顔をして釣れない魚を釣ろうとしている麦を見たい。


そんな麦を見て安心したい、という気持ちが蛍を河原へと急がせる。


そして、蛍が河原へとやって来た時、夕日が空を赤くしていた。


河原には人影が少なく、冷たい風が寂しさを感じさせる。


「ムギさん……」


足を止めた蛍が河原に目を向けた時、蛍はその目で確かに見た。


河原で1人、冷たい風を浴びる麦の姿を。


その瞬間、蛍は体が動かなくなった…。

次回の更新は1月12日(土)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

青野 槙子→ゴミ屋敷の幽霊。

剣持 境矢→聖人?

謎の女?→浄化。

鶴巻 大也→鶴巻グループの人間。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ