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64話 黒い鶴。

騒がしかった店内は店にやって来た1人の男によって静寂に包まれた。


スーツをしっかりと着こなした、いかにもできるビジネスマンというような印象を与える男。


袖からチラチラと見える眩しく輝く時計は自身の地位を表しているようで嫌味を感じさせる。


「コムギ、早く席に案内せんか」


男を見て固まる麦を動かそうと重春は麦の肩を叩いた。


しかし、麦はその重春の掛け声に反応しないどころか視線を強めて店にやって来た男を睨み付けている。


憎しみにも似たような強い視線に重春だけでなく、蛍、舞火、轟太、境矢の4人も緊張の息を飲んだ。


「いえ、結構。私は立ったままでも構いませんよ」


店にやって来た男は重そうに持ったスーツケースを近くにあるテーブルに置いて麦を見つめた。


依頼者であることに間違いはないだろうが、この傲慢な態度はいかがなものだろうか。


麦に向ける視線やテーブルにスーツケースを置く様はまるで、麦を威圧しているようで気に障る部分がある。


「よくまぁ~こんな店で働けたもんだな」


男は店内を見渡すと綺麗な壁や喫茶店のような店の姿に指で顎を擦った。


そんな偉そうな物言いに誰もが不自然さを覚えたのは言うまでもない。


重春はもちろん、蛍達でさえ今までこんなにも馴れ馴れしく傲慢な客には出会ったことはない。


だからこそ、不自然さを感じたのは確かだがそれ以上に麦に対して馴れ馴れしい態度を取ってることに一同は疑問を感じていた。


「あの……失礼ですがお名前は?」


緊張感を漂わせる店内に切り込みを入れたのは蛍であった。


もちろん、蛍には躊躇いもあった。


しかし、どうしても蛍は男の正体が気になってしまった。


それは麦が強い視線を男に向けているからである。


麦があそこまで嫌悪感を露にした姿はあまりにも珍しい。


だからこそ、蛍は男のことを知りたいと思ったのだ。


「おっと、私としたことが……。私は鶴巻(つるまき) 大也(だいや)と申します」


鶴巻はスーツの胸ポケットから名刺を出すと麦以外の人物に名刺を渡した。


鶴巻の名を聞くと同時に名刺に目を通した境矢は思わず驚きの声をあげた。


「鶴巻!?鶴巻ってあの……?」


「えぇ、知って下さっていて光栄です」


境矢の驚いた顔がそんなにも嬉しかったのか鶴巻は笑みを溢しながら頷いて見せた。


そして、一同の顔を舐めるように見つめた。


それはまるでお前らとは住む世界が違うんだ、と言うような優越感を鶴巻から感じることができる。


「境矢さん、何か知ってるんですか?」


舞火は首を傾げて境矢の鶴巻について尋ねると境矢は間をおかずにすぐに返答した。


「“鶴巻グループ”って言ったらわかりますか?」


その名を聞いて舞火だけでなく、蛍と轟太、そして重春も思わず口を開けた。


鶴巻グループ。


開発業で世界に名を馳せた大企業であり、最近では開発業だけではなくあらゆる分野で好成績を納めている。


この国を支えている企業と言っても過言ではないだろう。


そして、その認知度は高い。


「な、な……なんでそんな大企業の方がこの店に?」


重春は鶴巻から受け取った名刺を強く握り締めて、ここに来た理由を尋ねた。


それはここにいる誰もが感じている疑問であり、一同は生唾を飲み込んで鶴巻の返答を待った。


「ま、正直に言いますとあなた達の力を借りなくとも何とかなります。修復屋と言っても我々の技術には敵わないでしょう」


「なんだと!麦のアニキの力はすげーんだぞ!」


鶴巻の麦を言い出した物言いに轟太は興奮を押さえられなかったが、それを誰もなだめることはしなかった。


なぜなら、皆、それに腹を立てたからである。


「ほぅ……あいつの力がそんなにも凄いんですか」


鶴巻は腕を組むといつの間にか視線を落としてしまった麦の顔を覗き込んだ。


覗き込まれた麦はそれに気づくと再び、鶴巻に対して嫌悪感を露にした。


「近頃、大事な仕事があるんだが…それに必要な“もの”が壊れてしまって困ってるんだ。だから、それを修復して欲しいんですよ」


「あなた達の技術で何とかなるのでは?」


蛍は鶴巻を威圧するように睨み付けた。


そんな蛍を見た鶴巻は蛍に対して嫌悪感も怒りも表すことはなかった。


むしろ、それらの逆で少し蛍に見とれるように蛍を見つめた。


「お嬢さん、良い目をしていますね。ご存じですか?社長夫人なんかは気が強い人が多いんですよ」


それはきっと、鶴巻の口説きもんだろうが蛍はそれに表情を変えることはなかった。


逆に視線を強くして、より鶴巻を警戒した。


蛍に警戒を強められたことを察した鶴巻は参ったと言わんばかりの表情を作り一同に背を向けた。


「これはチャンスなんですよ。その意味はきっとわかるはずです」


鶴巻はテーブルに置いたスーツケースを手に持つことなく、一同に背を向けたまま店から姿を消した。


鶴巻が姿を消した後、皆、スーツケースではなく麦の様子に気が集中させられた…。

次回の更新は1月6日(日)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

青野 槙子→ゴミ屋敷の幽霊。

剣持 境矢→聖人?

謎の女?→浄化。

鶴巻 大也→鶴巻グループの人間。

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