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63話 不幸の手紙。

蛍が気づいた修復屋のポストに入れられていた1通の手紙が開かれたのは数日後、麦の具合が良くなってからだった。


この日はいつものように修復屋には蛍、舞火、轟太、境矢の4人が店に姿を見せていた。


「あの手紙、なんだったんですか?」


店へとやって来た蛍達は元気になった麦の体調を気遣うと同時にマグカップの件に頭を下げた。


4人に頭を下げられた麦は怒りで表情を強ばらせることなく、いつものように能天気に笑みを浮かべて4人の行いに簡単に許した。


しかし、問題はそこではなかった。


麦の笑みに場が和むと同時に舞火が手紙の詳細を麦に尋ねたのだ。


「そうだね……まぁ~…うん、依頼だったよ」


麦はぎこちない笑みを浮かべながら4人を見るとさりげなく視線をそらした。


そんな麦の行動とは裏腹に依頼と聞いた蛍と舞火と轟太は喜びの声をあげた。


「やりましたね!ホームページの効果が出てる見たいですね」


蛍はカウンターに置かれたノートパソコンを見て自慢気に声をあげた。


それはまるで、麦と一緒に作ったキャッチフレーズが今回の依頼に繋がっている、と自慢しているようであり、そう聞こえた舞火と轟太が黙っているはずはなかった。


「いや、これはきっと看板娘のあたしのおかげ!」


「違うぜ!これはアニキの右腕の俺様のおかげだぜ!」


各々、今回の依頼を自分の手柄にしたい気持ちと麦への想いが交差し、それはやがて鋭い視線に変わった。


睨み合う蛍、舞火、轟太の3人を見た麦は苦笑いを浮かべて、特にその争いを止めようとしなかったが横にいた境矢は深いため息を溢した。


そのため息に3人の鋭い視線は集まった。


「はぁ……普通に考えて花形さんの実力でしょ」


境矢の呆れ顔とその言葉は3人の胸を貫くと同時に言い訳する隙を与えなかった。


3人は境矢の言葉を否定する為に言い訳を口にするが、その声はとても小さくはっきり聞き取ることができない。


それだけ、境矢の指摘は的を射ぬいているのだ。


「ずいぶんと人気者になったもんじゃな」


騒がしく揉める4人を見た重春はカウンターから麦にコーヒーを差し出すと同時に声を掛けた。


重春は決して、4人を煙たがっている訳ではない。


重春は少しだけ嬉しく思っているのだ。


それは今までの麦を知っているからこそのものであり、それを語るには麦と重春の出会いまで時間を巻き戻す必要があるだろう。


一種の親心なのだ、これは。


「いや~…ありがたいよ」


麦は一瞬、4人に呆れたような笑い声をあげると心の底からの感謝と嬉しさを一言に納めた。


麦と今、揉めている4人は知り合って日が浅い。


しかし、この世の中には距離を縮めるのに時間がいらい人達がいる。


それは心と心の問題なのかも知れない。


はるか昔から知っていたのかも知れないし、運命的な出会いだったのかも知れない。


その両者のどちらだとしても人はその出会いに感謝し、特別に感じるのだろう。


今の麦と同じように。


「で、コムギ。手紙の具体的な内容は何なんじゃ?」


カウンターに両腕を置いてリラックスしたような姿勢を重春はとってはいるが、その視線は冷やかである。


この視線からは逃げられない。


麦にそう思わせるには十分すぎるプレッシャーが自然と麦の手を自身のポケットに運ばせた。


「これだよ。ホタルちゃんにバレないように頼むよ」


「うん?わかった」


麦の発言は実に意味深であり、蛍の名前を聞かされた重春は蛍を見ようと目線を動かそうとしたが鋭く勘が働き、視線を殺した。


何が重春にそうさせたのかはわからない。


本能であった。


麦の表情を見た重春は瞬時の勘で視線を殺すと同時に麦のポケットから取り出された手紙を手に取った。


そして、その手紙の中身を開いてその中に目を通した。


手紙の中に並べられている字は達筆であるが、焦りや不安を感じさせられるような不思議な気持ちにさせられる。


安定とは真逆の情緒であることを重春は感じたが、気になるのはその中身であった。


『あなたのご評判は伺っております。どうか、“水野 空”といえ男をあなたの力で救って頂けないでしょうか。つきましては林檎が丘病院まで起こし頂ければ幸いでございます。なお、この手紙は目を通した後に処分して下さい。 犬川』


確かに手紙の内容は依頼であり、麦の力で何とかなるようなものなのかも知れない。


しかし、重春の目が止まったのは依頼内容ではなく、“水野(みずの) (そら)”という名であった。


「この“水野”というのは……?」


重春は確信的な何かを感じていたが、それを自分の中だけで簡潔することができなかった。


その為、額から冷や汗を流し、麦に問い掛けたのだ。


「わからない。ホタルちゃんに聞かないとわからないよ」


麦の中でも迷いがあった。


蛍にこれを伝えるべきなのかどうか。


そんなグルグルと渦のように回る迷いを抱えた麦に新たな依頼を知らせる扉の開く音が響いた。


「いらっしゃい……ませ…」


麦は呼吸をすることを忘れて、その場で固まった…。

次回の更新は1月4日(金)になります!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

青野 槙子→ゴミ屋敷の幽霊。

剣持 境矢→??

謎の女?→浄化。

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