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62話 治すべきもの。

明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願い致します!

恋する乙女の衝動に任せて蛍と女性の会話に花が咲いていく。


それはまるで、花畑と言うに相応しいぐらい楽しげなものになっており、カウンターから2人の様子を見ていた舞火はそれを羨ましそうに見ていた。


舞火の耳に2人の会話が全て入ってきている訳ではないが、時折、聞こえる好き、という言葉に反応していた。


「春下、なにをボーッとしてるだ」


不意に轟太が舞火に声を掛けると舞火は2人から目を離した割れたマグカップを見つめた。


蛍は十分に時間を稼いでいることは舞火も轟太もそして、境矢もわかっている。


だからこそ、プレッシャーだった。


この限られた時間の中でマグカップを治せなければ店に来た女性は酷く落胆するだろう。


3人は頭の中で落胆する女性を容易に想像することができた。


「で、どうします?」


舞火の問い掛けに轟太も境矢も目を失せて黙り込んだ。


そう、どんなに考えても、どんなに時間があってもマグカップは治らない。


それを轟太も境矢も理解しているが、それでも諦める訳にはいかなかった。


轟太は慕っている麦の顔に泥を塗らないように。


境矢は恩を受けた麦の顔に泥を塗らないように。


しかしながら、彼らに修復技術はない。


「……ダメだ。何も思い付かない……」


「あぁん?諦めるなよ!」


「冷静になってください。やはり、この状況は乗り越えられない」


境矢の諦めの姿に轟太は怒りを(あらわ)にしたが、境矢は冷静に状況を把握することができる男である。


それは轟太も舞火も知っている。


だからこそ、轟太は怒りを口にするだけでその先は何も言わなかったし、舞火は口を閉ざした。


「じゃ、あの女の人に言うのか?」


轟太は威圧的な態度で境矢に問い掛けた。


「えぇ、それしかないでしょ」


「ふざけるな!それじゃ、アニキの顔に泥を塗ることになる!」


「なら、君はどうやってこの状況を乗り越えるんだ!」


お互いに熱を燃やす轟太と境矢を見て舞火は些細な違和感を覚えていた。


いや、違和感と言うにはあまりにも気持ちが悪いものかも知れない。


それは今までの麦の行動を見てきたからこそ、感じるものなのかも知れない。


「マグカップを治すとか治さないとか……そういう問題じゃないと思います」


不意に口を開けた舞火に轟太も境矢も動きを止めて舞火に目をやった。


その時に2人は何も口にすることはなかった。


胸の奥に秘めていた答えを抉り出された気分になったからだ。


「いつも麦さんは物だけを治していた訳じゃないと思うんです。その……うまくは言えないけど…麦さんは治せないものを治していたような気がします……」


麦のことを口にする舞火自身もうまくそれを表現できていない。


そして、当然のように舞火の話を聞いた轟太と境矢もそれをうまく理解できていない。


それにも関わらず、理解できた。


麦の今まで姿を思い出せば麦が何を治してきたが、よくわかる。


割れたマグカップは大切な思い出が詰まった大切な物であることに違いないが、それ以上に大切なものはそこにはない。


大切な物が大切な思い出を持っているのではなく、それは人が持っているもの。


本当に治したいものほど、治せない。


そして、それを麦は治しているのだ。


「春下さんの言うとおりです…」


「だな……」


各々、理解の仕方は違いなのかも知れない。


しかし、共通して言えることは“治すもの”がわかった、ということである。


「謝りに行きましょう」


境矢が割れたマグカップを見てそう言うと舞火と轟太は深く頷いてカウンターから女性が座るテーブルへと向かった。


女性が座るテーブルに向かう最中、3人は覚悟を決めていた。


何を言われても仕方がない、と覚悟を決めていたがそんな3人を1つの影が素早く抜き去った。


そして、女性が座るテーブルに綺麗なマグカップを置いて見せた。


「すみません、お待たせしました。マグカップです」


綺麗になったマグカップを見ればすぐにわかる。


テーブルにやって来たのは麦だった。


蛍と舞火と轟太と境矢の4人は麦を見て感動の声をあげようとしたが、麦の様子を見て声が喉に落ちていった。


麦の額には冷却シートが張ってあり、寝巻きのようなだらしない服装をしている。


麦が無理をしているのは言うまでもない。


「いえ、こちらこそ、ありがとう。体調が悪そうで……すみません」


「大丈夫ですよ。それにこの子達だけに頑張ってもらうのも店長としては悪いですし」


ダルそうな顔で4人に視線を向けた麦は優しい笑みを溢した。


“本当の修復”はこうなのだろう。


麦の笑みから学ぶことは沢山あって、まだまだそれを全て理解するには時間がいるかも知れない。


マグカップを大事そうに持って、店を出ていく女性を店の前まで送った蛍は女性に頭を下げて別れを告げた。


「ありがとうございました」


その言葉の深い意味を蛍は噛み締めて店内へ戻ろうとした。


そんな一瞬、店のポストが僅かに開いているのを目にして蛍は手を伸ばした…。

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

青野 槙子→ゴミ屋敷の幽霊。

剣持 境矢→??

謎の女?→浄化。

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