表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/130

59話 個性×個性。

修復屋には4人の人材が揃った。


この4人はそれぞれに得意分野が異なり、頼もしいことには変わりはない。


しかしながら、それぞれの個性が強い。


「よし、とりあえずボンドを探すぜ!」


境矢がマグカップの修復に力を貸すことを示したと同時に轟太はそれが嬉しかったのか、声を張り上げた。


だが、それは振り出しに戻ることになる。


今、4人の目の前にあるのは割れて粉々になってしまったマグカップである。


それを治す方法を探している中で轟太の発言は蛍と舞火の肩を落とさせた。


「はぁ……そうじゃないでしょ」


そんな轟太に噛み付くように境矢は口を開き、轟太を睨み付けた。


それに反応するように轟太も境矢に視線をぶつけると2人は距離を縮めていく。


また喧嘩が始まる。


そう感じた舞火は背筋を立たせて、恐怖を態度に示すのに対して蛍は足早に2人の間に入ると両手を広げて轟太と境矢の距離を取って見せた。


「どけ、こいつ、さっきからなんか嫌味ばかり言いやがって……もう、我慢の限界だぜ」


「はぁ……本当にガキですね。今、花形さんが居ないからこのマグカップの修復方法を考えてるんじゃないんですか?そして、あなた達の様子を見ればボンドも時間もないことは明らかです。それにも関わらずまだボンドを探しますか?」


「あぁん?、あるかも知れないだろ」


「その時間が無駄って言ってるんですよ」


境矢の言っていることは合理的判断の元に下された発言であり、それは正しい。


時間もボンドもないことは確かであり、マグカップが割れて一番に悲しむのはお客さんである。


今、最善の行動は一刻も早くマグカップを治すことである。


だが、そのことは轟太も理解しているし、そんなに頭が悪い訳ではない。


轟太が腹を立てたのは麦のことを想ってなのだ。


この状況を作ったのは境矢であることも現実。


「だいたい、アニキはお前のせいで……」


再び、熱くなった轟太が再び、境矢の確信を突こうとした時、店内に床が割れるような大きな音が鳴り響いた。


「ひぃぃぃ!」


当然の破壊音に驚きと恐怖を隠せなかった舞火は思わず、変な声をあげたが、その音の正体は首を回す必要もなく理解できた。


そう、轟太と境矢の間に空いた穴。


辺りには床の破片が散らばっている。


言うまでもなく、蛍が床に穴を開けたのだ。


床に穴を開けた方法はいたって簡単であり、そのか細い足で床を踏み抜いたのだ。


あまりの破壊力に轟太も境矢も言葉を失っていた。


「嵐山先輩の気持ちもわかります。だけど、ボンドがない以上、マグカップを治す方法を一刻も早く見つけないといけないのは事実です。剣持さん、何か良い方法をご存じですか?」


結成されたと同時に解散の危機を迎えようとした4人の修復士達は過激で破壊的な一撃によって解散を回避された。


決して、蛍は喧嘩がおさまることを計算して床を踏み抜いた訳ではない。


正直なところ、蛍はただ、感情的になっただけなのだ。


その感情の根底には轟太と同じように麦への想いがある。


それが表に出た、ということなのだがそれはあまりにも暴力的であり、轟太も境矢も蛍に逆らわないようにしよう、と心に誓った。


「方法はあります」


境矢のこの一言は力がなかったが、店内に浸透した。


それは蛍も舞火も轟太もその言葉を心待にしていたからである。


そして、何より力強い一言である。


「本当ですか!?それはなんですか?」


さっきまで怯えていた舞火は境矢との距離を縮めると境矢をジッと見つめた。


境矢に集まる期待の視線。


それは境矢に必要以上にプレッシャーのストレスを与えている。


だからだろうか、境矢が口を開かないのは。


「どうしたですか?剣持さん…」


黙り込む境矢に追い討ちをかけるように蛍が境矢に視線をぶつけた。


「方法はあります。だけで、それには時間がかかる」


「その時間はどれぐらいですか?」


「……3日はかかります」


それは絶望的な一言であった。


蛍は境矢に向けた視線を落とすと同時に境矢が考えた修復の方法に興味を惹かれてしまった。


あの事件以降、蛍の中で境矢は“くせ者”なのだ。


だからこそ、境矢の発言の1つ1つは不思議であり、疑うべき点が多々ある。


しかし、今、そんなことは大事ではない。


この場にいる者の気持ちは一緒のはずなのだ。


そう、マグカップを治す、と。


「それじゃ無理じゃねぇか……」


悔しさを噛み締めるよう自身の拳を自身の手で受け止めた轟太は蛍と同じように視線を落とした。


どれだけ知恵を搾ろうともどれだけ努力をしてもどうにもならない時がある。


それは当人の力不足ではない。


現実が悲惨で残酷なだけであり、己の無力さに涙をすることはない。


だから、諦める、というのも1つだが、ここに集まった4人は絶望を感じると共に次の策をそれぞれ考えた。


そして、4人が口を開こうとした時、4人よりも早く店の扉が開いた…。

次回の更新は12月29日(土)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

青野 槙子→ゴミ屋敷の幽霊。

剣持 境矢→??

謎の女?→浄化。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ