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57話 ピンチ。

“女”との対峙を終えてから3日が経過したが、修復屋には麦の姿がなかった。


正確に言えば麦は修復屋にいない訳ではなく、店のプライベートスペースで麦は眠っていた。


「まったく……無理をしおって……」


布団で頬を赤くして眠る麦の額にあるタオルを濡らして重春はまた麦の額にタオルを置いた。


なんとも複雑な気分であり、その場に自分がいたらこんなになるまで麦に無理をさせなかった、と言う自分と麦を止められていたかわからない不安が重春の心に付きまとった。


重春は深いため息を溢すと薬が入った小さな袋を手に取って中に目を通した。


だが、袋の中の薬の数は少なく、麦の様子からして麦はしばらく動けないだろう。


「困ったの……。依頼者が来るっていうのに」


重春が薬袋を手にして頭を抱えていると店のほうから声が響いた。


その声を聞いた重春は依頼者かと一瞬、思ったがそれはいつもの馴染みのある声であり、それが蛍と舞火であると理解すると急いで店のほうへと足を運んだ。


「おぅ、何か用かの?」


店へと顔を見せた重春は店へとやってきた蛍と舞火の前に現れると声をかけた。


「いえ…特に用はないんですけど……ムギさんのことが心配で……」


蛍も重春と同じように責任感を感じていた。


それは境矢に対する疑心を行動で示せなかったからだ。


もしも、あの時、蛍が境矢に対してもう少し踏み込んでいれば何か変わっていたのかも知れない。


そんな罪の意識を蛍は感じているが、蛍の横にいる舞火のほうがその罪の意識を強く感じていた。


それは麦に好意を寄せている分、大きいのかも知れない。


「すいません。あたしのせいで……」


「気にすることはないわい。それよりも、1つお願いをして良いか?」


蛍と舞火の罪の意識を察してか、重春はその意識に付け入るように蛍と舞火に視線を向けた。


しかしながら、蛍と舞火は急な重春の申し入れに首を傾げた。


「実はこれからコムギの薬を買いにいかなくてはいかんのじゃ。恐らく、その間に依頼者がやってくるから対応して欲しいんじゃ」


「ちょ、ちょっと待って下さい!依頼者が来ても私達じゃ、治せませんよ」


蛍は思わず声をあげて焦りを隠せなかったが、そんな蛍に背を向けた重春は棚から2つのマグカップを取り出した。


「それは問題ない。もう、治しとるから来たら渡してくれれば良いだけじゃ」


「あっ、それならあたし達でも大丈夫そうです」


重春がマグカップを見せると舞火はため息を溢して安心して見せた。


マグカップは青い色のハートと赤い色のハートがそれぞれに描かれておりカップルや夫婦にはもってこいのデザインになっている。


そんなマグカップを見て心を癒す蛍と舞火によろしく、と声を掛けると重春は足早に店から出ていった。


その様子はまるで息子を心配する父のようだった。


重春が出ていってから数分。


修学屋の扉が開いた。


「いらっしゃいませ!」


扉が開くと同時に蛍と舞火は元気な声で挨拶をしたが、店にやって来た者を見て嫌な顔をした。


「なんだ…先輩か……」


「なんだってなんだ!それよりも麦のアニキは大丈夫なのか?」


店にやって来た轟太は蛍と舞火の嫌なため息を華麗に避けるとすぐに麦へと心を向けた。


「今、重春さんが薬を買いに行ったところです。それで私達が店番をしているんです」


「なるほど。それなら俺も手伝うぜ!なんたって俺はアニキの弟だからな」


轟太は胸を叩くと椅子に鞄を置いて堂々と構えた。


なぜ、胸を張って店の中で堂々と構えるのかはわからない。


だが、蛍と舞火と同じように轟太も落ち着かないのだ。


麦が今、体調を崩しているのは自分のせいだ、という罪の意識を轟太も感じているからだ。


「なんだ、このコップは?」


「それを取りに来る人がいるので、それを渡してくれと重春さんに頼まれたした」


蛍の説明を耳にした轟太は机に置かれたマグカップを手に取るとマグカップをまじまじと見た。


その轟太の行動に不安を覚えた舞火はつかさず、轟太からマグカップを取り上げようとした。


「先輩!それをあたしに貸して下さい」


「なんでだ?少しぐらい見ててもいいだろ?」


「ダメです!なんか割っちゃいそうだし……」


舞火を自身の不安を拭い去ろうと轟太の手に持たれたマグカップに手を掛けた。


しかし、自分を(けな)す舞火に腹を立てた轟太はマグカップを離そうとしなかった。


「先輩、貸して下さい」


「ふざけるな、大丈夫だって!」


舞火と轟太の間を上下左右に動くマグカップを見た蛍は2人の間に入った。


「とりあえず!マグカップを机に置きましょう」


だが、蛍のその行動は2人を熱くさせて、より激しく2人を動かした。


そんな2人に負けじと蛍も力を加えたが、それがまずかった。


蛍の力は簡単に2人を吹き飛ばし、マグカップも吹き飛ばした。


宙を舞うマグカップ。


そして、3人が大きく口を開けて声をあげると同時にマグカップが割れる音が店内に響いた…。

次回の更新は12月22日(土)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

青野 槙子→ゴミ屋敷の幽霊。

剣持 境矢→??

謎の女?→浄化。

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