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51話 探り合い。

蛍はその視線に恐怖しか感じられなかった。


覗き、と言うにはあまりにも殺意が混じっている視線。


その視線を浴びながら蛍は周囲を見渡した。


「この視線は…どこから……」


危機を感じる蛍とは反対に舞火は蛍の焦りを理解できずに困惑することしかできなかったが、蛍の視線、という言葉から覗きを疑っていた。


その為、舞火は体を隠すタオルを手で強く握り締めてガードを固めた。


蛍が意識を集中させて辺りを見渡すが、怪しい人物はどこにもいない。


それどころか、辺りは暗くなり始めていることから見つけるのは困難である。



「見つからない…私の気のせいなのかな」


「蛍、さっきからどうしたの?」


辺りをキョロキョロと見渡す動作から落ち着きを取り戻した蛍に舞火はその行動の意味を尋ねた。


「いや……なんか視線を感じてさ…」


「覗き!?」


「いや……どうだろう?」


別に舞火の言った覗きが視線の正体だとして、蛍はそれに安心した訳ではない。


さっき感じた恐ろしいほど激しい殺意よりはマシだということだけで、結果から言えばどちらも最悪であることは違いない。


「なんか気味悪いね。そろそろ上がらない……?」


少し恐怖を顔に出した舞火を見た蛍は首を縦に振ると舞火と共に温泉を後にした。


その後、部屋に戻った蛍と舞火を待っていたのは豪華な料理であり、2人が部屋に戻った頃には麦、轟太、境矢の3人がお腹を鳴らして待っていた。


「さぁ、皆、揃ったから食べよう」


麦がそう言って手を叩くと一同は箸を手にとって合掌して食事を始めた。


とても楽しい時間と美味しい料理。


冗談を言い合って、時には喧嘩をして、互いの距離を縮めていく。


そんな和やかな空間の中、境矢だけはぎこちなかった。


「すいません…お手洗いに行ってきます」


盛り上がる食卓からそう言って脱出した境矢が向かった場所は当然、お手洗いではない。


部屋を出て廊下をゆっくりと歩いた境矢は廊下の先にある椅子に腰を掛けるとため息を溢した。


「なかなか…慣れないな……」


決して、麦達と過ごす時間が嫌と言うわけではない。


ただ、人との距離感がわからないのだ。


昔から境矢は人と距離を取ることは拒絶してきた。


それは境矢の家族の方針であり、そうしなければ命に関わるからである。


そう、人の皮を被った化け物に騙されないように。


だから、境矢に人の間にある信頼だとかがわからないのだ。


そして、境矢にとって花形 麦は警戒すべき相手になろうとしているから。


「大丈夫ですか?」


廊下の先にある椅子に腰を掛ける境矢に声を掛けたのは蛍だった。


「えぇ…少し疲れてしまって……」


境矢は体調を心配する蛍に頭を描いておどけて見せると笑みを溢した。


「そうですか…」


一言、ソッと呟いた蛍は境矢の正面に設置されている椅子に腰を掛けた。


境矢は正面に座った蛍の目を見た時、自分のことを心配してここへ来たのではない、と悟った。


蛍の目は境矢に疑いを掛けているように鋭いものである。


「なんですか?」


最初に口を開いたのは境矢のほうであった。


そして、境矢が口を開いたことによりその場は一気に緊張感に包まれた。


「1つ聞きたいことがあります」


「聞きたいこと?えぇ…構いませんよ」


蛍に質問の許可を出した境矢は余裕そうな笑みを溢した。


それが蛍にとっては薄気味悪く、恐怖を与える。


だが、蛍の中ではもう引き返せない、という意思があった。


その為、境矢の余裕の笑みを消し去ろうと蛍はさらに目付きを尖らせて口を開いた。


「実はさっき、温泉に入っている時、視線を感じました」


「視線……?あぁ……それは花形さんと不良君が女湯を覗こうとしてたからね。もちろん、僕は覗こうとしてませんよ、止めましたから」


境矢は笑みを溢して蛍に謝罪したが、蛍はそれに納得していない。


覗こうとした行為に納得していない訳ではない。


「覗きの視線にしては殺気を感じました。単刀直入に聞きます。あなた何者なんですか?なぜ、ムギさんに綱を治させたんですか?そして、あの石はなんですか?」


境矢も気付いていた。


修復屋に行った時から蛍が一番に自分を警戒していたことに。


しかしながら、その警戒心や洞察力、危険察知能力は人並みを越えている。


その為、境矢も蛍に同じ質問を返した。


「それじゃ…僕も聞かせて下さい。水野さん、あなたこそ何者なんですか?明らかにあなたは人並みを越えている。気配や殺気の関知にあまりにも敏感すぎる」


蛍も境矢も口を閉ざした。


境矢には言えないことがあったからであったが、蛍はわからなかったからだ。


自分が何者なのか。


その答えを蛍は見つけることができなかった。


全て、生まれつきなのだからわからない、というのが正確な答えだろう。


互いに視線をぶつける蛍と境矢。


そんな2人を現実に戻したのは窓ガラスが割れた大きな音であった。


その瞬間、蛍と境矢の緊張はピークに達した…。

次回の更新は12月1日(土)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

青野 槙子→ゴミ屋敷の幽霊。

剣持 境矢→??

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