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48話 力の使い方。

重春の問い掛けに修復屋は静寂に包まれた。


次に境矢が何と口にするのか。


それが麦達に緊張を与えて冷や汗を流させた。


「確かに、あなたの言うとおりですね」


それはあまりにも淡白な答えであり、何かを観念したような口ぶりに重春は視線を強くさせた。


そして、同時に修復屋にいる皆が境矢に対して警戒心を強めたのは確かであったが、1人だけ警戒心を解いていたものがいた。


「ま、いいじゃんか」


言わずと知れた麦であった。


麦は明るく笑みを溢して緊張感に包まれた修復屋を明るい雰囲気へと変えた。


しかし、そんな麦に重春はすぐに食い付いた。


「コムギ!ワシはお前に仕事をしろ、とは言うが危ない橋は渡ってほしくないんじゃ……。その意味がわかるな?」


「わかってるよ」


何も考えていないように笑みを溢していた麦は瞬時に真剣な顔を作って重春を見た。


麦は重春がどれだけ自分のことを大切にしているを十分に理解している。


それは出会った時からそうであった。


もしも、“あの時”、重春とは違う人にあっていたら麦はここにいなかっただろう。


だが、恩人であり自身の親のような重春に注意されても麦にも譲れないものがあるのだ。


「オレは修復屋だ。皆、色々な事情があってここへ来て修復を依頼してくる。その中で本当に怪しい奴なら治してほしい物を正確に教えてくれないさ」


「確かに…そうかも知れんが……」


麦の言うことも一理あるが、それでもその麦の理屈には共感できない部分が重春にはあった。


それは麦が相手を信じることを前提に考えている、という点である。


怪しい奴だからこそ、正確な情報を歪めて教えて、信じさせようとする。


それも事実な以上、重春はなかなか首を縦に振ることができなかった。


「おやっさん、大丈夫さ。とりあえず、現地まで行ってこの人を信じられなかったら逃げてくるよ」


「うーん……わかった。その綱はいつまでに治す必要があるんじゃ?」


重春は苦い表情を浮かべながらさっきから黙る境矢に話を振った。


話を振られた境矢は重春に疑われているにも関わらず涼しい顔をして口を開いた。


「明日には治してほしいと思っています」


「明日!?」


重春の予想を遥かに越える急な予定に重春はおかしな声をあげた。


これには隣に座る麦も驚きを隠せずに口を開いた。


「おやっさん!?ど、ど、どうしたんだよ?」


「……お前さんに何を言っても無駄じゃろうから、ワシも一緒に現地まで行こうと思ってたんじゃが……明日は老人会があっての……」


「老人会!?それなら、別にオレ、1人で行くから大丈夫さ」


不安な表情を浮かべる重春を置いて景気よく胸を叩いた麦は境矢を見て深く頷いた。


そう、この動作は依頼承諾の動作である。


「依頼を受けて下さるんですね?」


「うん、もちろん」


「それじゃ、明日、15時に駅でお待ちしています」


「わかった。それじゃ、また明日」


テーブル越しに固い握手を交わした麦と境矢は依頼の待ち合わせ場所と時間を決めるとテーブルから腰をあげた。


テーブルから腰をあげた境矢は麦と重春に深く頭を下げるとそのまま背を向けて修復屋から姿を消していった。


あまりにもスムーズに決まってしまった怪しい依頼。


麦以外の人間は皆、境矢に対して疑心を持っている。


「良いんですかい?アニキ」


境矢が店から姿を消した瞬間、轟太が麦に声をかけた。


「なにが?」


しかし、麦は轟太の問い掛けの意味を理解できていないようで首を傾げて見せた。


「なにがって…あの怪しい野郎っすよ!」


疑いを露骨に口にする轟太に対して、重春も蛍もそれに共感するようにうんうん、と頷いてはいるが舞火だけは違った。


「イケメンは謎が多いのよ…ふふふふ……」


完全に酔っている。


境矢のことを小さく呟く舞火を見た蛍はため息を溢してそれ以上、舞火に触れることはなかった。


「怪しい奴ねぇ…。ま、大丈夫だろ」


「大丈夫って……ムギさん、その根拠はどこにあるんですか?」


蛍は取り乱して麦に声をあげた。


それは無理もなく、一瞬であるものの境矢の殺気を感じた蛍は麦が危険なことに利用される、としか考えられなかった。


麦の力は“神の力”と言って良いほど万能な力である。


それ故に麦が危険に晒されていることは間違いないのだ。


そう、麦の力は危険な力なのだ。


「根拠はないけど……人には言えないこともあるだろ。皆、心に傷はあるし、言いたくない過去だってあるさ。オレの力でそれらを軽減できるなはそれに越したことないよ」


蛍は忘れていた。


麦の器が大きいことを。


それは何も考えていないように捉えることもできるが、麦の心の奥にあるのは救いたい、という想いだけなのだ。


だからこそ、相手を疑わないし力を使うことに躊躇いがないのだ。


麦の力は使い方によっては自身の欲求をいくらでも満たすことができる。


だが、それを誰かに使う心があるから麦にこの力が宿ったのだろう。


麦だからこそ、使いこなせる力なのだろう…。

次回の更新は11月18日(日)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

青野 槙子→ゴミ屋敷の幽霊。

剣持 境矢→??

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