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47話 怪しい依頼。

重春の怒りのげんこつを食らって踞る麦にそれを見て顔を青くさせる蛍、舞火、轟太の3人。


そんな4人の前に現れたのはすらりと伸びた足に整った顔立ちをしている1人の青年であった。


そう、剣持(けんもち) 境矢(きょうや)である。


「すみません、お取り込み中だったみたいですね」


境矢は修復屋の扉を開いて場の空気を察するとクルリと麦達に背を向けてその場から姿を消そうとした。


そんな境矢を見た重春は境矢を呼び止めた。


「別に取り込んでおった訳じゃない。何かの依頼かの?」


「えぇ、治してもらいたいものがあるんですが」


境矢の話を聞いた重春は麦に視線をぶつけた。


その視線は仕事じゃぞ、と言わんばかりのものであり、麦もその視線の意味を理解して深く頷いた。


姿勢を正した麦は重春と共に境矢を奥のテーブル席に促すと蛍達に背を向けた。


「どうやら、仕事みたいだな」


「そうですね。静かにしてましょう」


ペンを回しながら麦達がテーブル席で腰を下ろしたのを確認した轟太の呟きに対して蛍はこの場に留まる選択をした。


その選択は本来ならば良くはないだろう。


いくら、蛍達が麦と親しいからと言って仕事の場面に居合わせることは好ましくはない。


だが、ゴミ屋敷の件が蛍達をその場に留まらせた。


また、手伝いを頼まれた時に変な依頼だったら困るのは自分達だ、という意識がそうさせれているのだ。


「それにしても…あの人……イケメン……」


だが、舞火だけは違ったようで、境矢の整った顔立ちに心を奪われていた。


これには蛍も轟太も深いため息を溢すしかなかった。


「で、依頼内容はなにかな?」


蛍達を置いてテーブル席に腰を下ろした麦は境矢を見て口を開いた。


「はい。治してもらいたいものがあるんですが……何でも治すことは可能なんですか?」


境矢は神妙な表現で麦に修復技術の確認をした。


これは当然の疑問である。


初めて修復屋に訪れた者は皆、どれほどの修復技術があるのか気になるものであり、それが本物かを疑う。


そして、これを麦に尋ねる傾向として多いのが修復する規模が大きい、ということである。


修復する規模が大きい依頼を頼みに来た者は一番に麦の力を確認しようとするのだ。


「えぇ、何でも大丈夫。小さいものから大きいもの…何でも大丈夫だよ」


麦は胸を張って自信満々に境矢に答えて見せた。


それを聞いた境矢は安心した顔をみせたが、その後に一瞬、殺意を見せた。


その殺意に反応して麦と重春は境矢を警戒し、カウンター席に座っていた蛍は握っていたペンを投げやすいように持ち替えた。


「そうですか。それは安心しました」


その言葉と同時にさっきの殺意は嘘のように境矢から消えた。


「ま、修復するものが大きければ大きいほど依頼量は弾むがな」


重春は境矢に対してあえて威圧的な態度を取った。


それはさっきの殺気の正体を探る行為であったが、境矢はそれに対しておどけて答えるだけだった。


「それはそうですよね」


笑みを溢してはいるがカウンター席に座る蛍は境矢に対して警戒を緩めなかった。


あの人は“慣れている人”だ。


蛍の境矢への第一印象はこれだった。


殺気を一瞬、放ったと思ったらそれを瞬時に引っ込めた。


これは普段からそういう中に生きているからこそ、できる芸当である。


それを理解しているからこそ、蛍は境矢に強い視線を向けた。


「治してほしいものは大きいのか?」


さっきの境矢の殺気を忘れたかのように麦は境矢に問い掛けた。


そういう意味で考えれば麦は大人なのだろう。


相手は依頼者であり、修復屋としては大事な客人である。


その人物に殺気を放たれてもあくまでも、何もなかったように振る舞う。


境矢が慣れている人ならば、同様に麦も慣れている人なのだ。


「まぁ、そうですね。1mちょっとぐらいの石なんですけどね」


「1mぐらいの石!?ヒビでもあるの?」


「ヒビと言うか……。その石には綱が巻かれているんですがそれが切れてしまって。その石はこの町から少し離れた場所にあるんですが…治せますか?」


「あぁ、そこまで行けば大丈夫だよ」


話は少し大きな石に巻かれている綱を修復すること。


一見すると依頼はスムーズに行われているかのように見えるが、重春はこれに気になる点があった。


「1つだけ、聞いて良いかの?」


重春は真剣な顔を作り人差し指を立てると境矢に視線を合わせた。


「なんでしょう?」


「石に巻かれている綱を治すことなんて、コムギにかかれば余裕で治してしまうじゃろ。じゃが、なぜその綱をここへ持ってこなかった?」


そう、この境矢の依頼は大きな石を治す、ということではない。


その石に巻かれた綱を治すことが依頼なのだ。


そして、その依頼はわざわざ現地に行く必要がないものである。


1m少しの石に巻かれている綱ならば持ってくることは可能なはずである。


そう、これは怪しい依頼なのだ…。

次回の更新は11月17日(土)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

青野 槙子→ゴミ屋敷の幽霊。

剣持 境矢→??

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