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43話 指輪の意味。

“悪魔”の存在を頭によぎらせた蛍は緊張を隠せなかった。


もしも、目の前にいる槙子が本当にその生け贄になったとすればその悪魔はどうなったのだろうか。


“エクソシスト”によって退治されたのか。


それとも、まだ人間の中に紛れ込んでいるのか。


悪魔は人間の世界では人間に依存することではじめて自由を手に入れることができる。


「お姉ちゃんの願いを叶える……?君のお姉ちゃんは一体、何者なの?」


蛍は震える声にグッと力を入れて槙子に問い掛けた。


問い掛けられた槙子は蛍から視線を外してうつむいた。


それはそうだろう。


誰も命を落とした時のことを良くは思っていないだろう。


それ故に気持ちよく言葉が出てくるはずもない。


加えて、実の姉に命を奪われたとなればその記憶はトラウマの域を越えている。


「……ごめんなさい。詮索がすぎたね」


黙ってうつむく槙子に蛍は頭を下げた。


お姉ちゃんの願いを叶える為の生け贄なの、というさっきの槙子の言葉はきっと、槙子の中で限界ギリギリのラインの言葉だったのだろう。


激しく襲い掛かる死の記憶に打ち勝ち、やっとそのことを口にすることができた槙子に本来ならば蛍は敬意を払うべきである。


それなのに蛍は槙子を急かしてしまった。


「ううん。でも、これ以上は……しんどいかな」


その槙子の言葉に蛍は心をハンマーで叩かれたような衝撃に襲われた。


悪魔を頭によぎらせて、その恐怖からくる好奇心に身を任せた自身の行動に恥を感じたからである。


「本当にごめんなさい……」


「ううん、大丈夫。大丈夫だから……。だから、指輪を見つけておばあちゃんを解放してあげて」


「解放?」


槙子の“解放”という言葉に頭を傾げた蛍。


そうして、蛍がこのゴミ屋敷に眠る指輪を見つけることの本当の意味に迫ろうとしている時、1階で作業をする麦もその意味に近づこうとしていた。


「麦さん、指輪じゃないですけど……写真みたいなものを見つけました」


ゴミをゴミ袋に入れていく中で舞火は写真の切れ端を見つけていた。


その写真の切れ端には綺麗な女性と幼い女の子が写っているが、そのすぐ隣に僅かながら人の体の一部が写っていることからそれが家族写真であることが予測できる。


「写真?どれどれ……」


舞火から写真の切れ端を手に取った麦は顔を近づけてその写真の切れ端に写る女性を見つめた。


どこかで見たことがある女性。


写真の切れ端に写る女性を見た麦は始めにそれを思って首を傾げた。


「もしかして、これって温子さんか?」


「えっ!?これって温子さんなんですか!?」


「うーん……たぶん。とりあえず、この写真を修復して見よう」


舞火と目を合わせて頷いた麦は写真の切れ端に意識を集中させて切れ端を1枚の写真へと修復させた。


「さすが、麦さん!」


写真を修復した麦に舞火は拍手を送って褒め称えた。


これは麦の好感度を上げようと計算した行動ではなく、純粋に驚いたからこそ、拍手を送ったのだ。


何度、見ても麦の修復能力は人知を越えている。


そう、感じさせられるほどに鮮やかで優しい力。


「へへへ。どうやら、家族写真みたいだな」


舞火に褒められて照れるように頭を掻いた麦は修復した写真に目を通すと写真が家族写真であると断定した。


麦の修復した写真には若い男性と女性、そして、幼い女の子と高校生ぐらい女の子、そして青年が横に並んでおり、その隣に温子と温子の旦那と思われる男性が立っている。


「そうですね、家族写真みたいですね」


その写真に写る温子は実に微笑ましい表情をしており、それを見ている麦と舞火のほうも心を和ませられた。


「さぁ、作業を続けよう!やっぱり、指輪は家族の思い出が詰まった大事なものみたいだかんな」


写真に写る温子の指には指輪がつけられている。


きっと、これがゴミ屋敷に眠る指輪であり、家族の思い出の詰まった大事なものなのだろう。


麦のその掛け声に大きく頷いた舞火は自身に気合いを入れるようによし、と声を出すと作業を開始した。


そんな舞火を見て麦も作業を開始し、纏めてある新聞紙を手に持って部屋を出た。


自身の予想を遥かに越える新聞紙の重さに麦は歯を食い縛って、新聞紙の束を玄関の端に置いた。


「ふぅ……腰が……」


腰に手を置いてその場で猫背になった麦は疲労した体に苦しみを覚えた。


そんな麦から少し離れた所で依頼者である温子はボーッとベンチで座っている。


まるで、魂が抜けたかのように。


麦がそんな温子に駆け寄ろうとした時、麦を1人の男が呼び止めた。


「もしかして、青野さんの家のゴミを処理しているんですか?」


「えっ…あっ、はい。そうですけど」


眼鏡をかけていかにもマジそうな男性である。


「実は私は市の職員で……2年前と1年前にも青野さんの家を掃除したんですけど無駄で」


「そうなんですか?掃除したのにまたこんなにゴミが……」


「……青野さんは認知症なんです」


急な言葉に麦は言葉を口から発することができやなかった。


認知症。


それがこのゴミ屋敷を生み出しているエネルギーなのかも知れない…。

次回の更新は11月3日(土)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

青野 槙子→ゴミ屋敷の幽霊。

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