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39話 犠牲者。

あの声は気のせいだったのか。


「どうした?水野」


蛍が振り返った先には轟太しか姿がなかった。


「いえ、なにも……」


あの声は気のせいだったのか、と思えば思うほど蛍は不思議な気持ちに襲われた。


それは確かに蛍の耳に声が届いたからである。


蛍は生まれつき、一般の人よりも五感の感覚が優れている。


それは父の影響であったかも知れないが、それ以前に蛍は自身の感覚に自信があった。


それは父の娘であることを誇りに思っているからだ。


「とりあえず、早く、指輪を見つけ出さねぇとな!日が暮れたら大変だ」


もしも、さっきの声が本物ならば轟太にも聞こえているはずである。


それにも関わらず、轟太は声が聞こえてきた素振りを見せない。


「そうですね。早く、見つけましょう」


轟太の言動に蛍の中の自信が揺らぎ始めた時、また甘える声が蛍の心を揺らした。


『ねぇ、遊ぼうよ?』


「…誰なの?」


見逃さないようにと、今度は蛍はその声に対して素早く反応をして見せた。


そんな蛍の行動に一番に反応を返したのは轟太であった。


「えっ!?俺は…嵐山 轟太だけど……」


この轟太の反応を見る限り、轟太には“この声”が聞こえていないのだろう。


蛍はそれを確信するとこの声の主が何者なのか、すぐに理解することができた。


人間に害を及ぼす存在、人間を陰ながら支える存在、科学的根拠を越えた存在。


「あっ…知ってます。すみません、私の独り言です」


この声の正体を察したからこそ、蛍は轟太に誤魔化しを入れた。


それを口にすれば轟太がパニックになるかも知れない、と蛍は判断したからだ。


むしろ、喧嘩早い轟太ならば迎え撃とうとするかも知れない。


それだけは避けなければならない。


それを蛍は強く思っていた。


「すみません。ちょっと、お手洗いに行ってきます」


「おぅ!」


手に持ったゴミ袋を床に置いた蛍は適当なことを言って、轟太と別の部屋に行くと辺りを見渡した。


辺りは相変わらず、ゴミだらけであるが意識を集中させれば“違う者”がいることがわかる。


「大丈夫!ここには私1人しかいないから。姿を見せて」


蛍は自分が危害を加えることがないことを証明する為に両手を広げて笑みを溢した。


周りにはゴミしかないし、人の気配なんてない。


しかし、蛍にはその姿を捕らえることができた。


『あなたには私が見えるの?』


「うん、私には君が見えるよ」


それは言うまでもなく“幽霊”である。


父の影響からか蛍は幼い頃から霊感があった。


その為、幼い頃から幽霊を見ることができたし、会話することもできた。


そして、今ではそれをコントロールすることができるようになっていたが、その先は何もできないのが現状である。


「君はここになんでいるの?」


蛍の目の前にいる幽霊は小学5年生ぐらいの着物を着た女の子である。


見た所、この家の呪縛霊なのかも知れない。


もしも、そうだとしたら蛍は苦戦を強いられることになる。


『私?私はこの家に住んでるの』


「住んでる?呪縛霊ってこと?」


霊に対して呪縛霊なのか、と聞くのはおかしなことなのかも知れないが、本人に聞くのが手っ取り早いだろう。


蛍は目の前にいる女の子の霊の口が開くのを生唾を飲んで待った。


『さぁ~、わかんないよ。でも、そう言われればそうかも知れないね』


「そう……。成仏する気はないの?」


蛍には霊感があるが力はない。


その為、目の前の霊が呪縛霊であったり、人間に害を及ぼす霊であった場合、蛍には何もできない。


成仏することを促すことしかできないのだ。


『うん、ないよ』


「そっか……」


蛍は焦りを行動に出さないようにと膝を曲げると足元のゴミを片付け始めた。


『ねぇ、ゴミ袋持ってるの?』


不意な霊の一言に蛍は思わず、声を洩らした。


「あっ、しまった」


蛍らしくないミスである。


さっきいた部屋にゴミ袋を置いてきたのを忘れるなんてミスは普段の蛍にはないだろう。


それほど、今の蛍は焦りを感じているのだ。


ただ、表に出していないだけで。


『もしかして、私のこと怖がっている?』


それは悪魔のような囁きであった。


ここで素直に怖いと口にすれば、ペースは確実に相手のものになる。


その為、ここは慎重に言葉を選ばなければならない。


「別に怖くないよ。昔から幽霊は見慣れてるしね」


『そう。それなら、遊ぼうよ』


「遊ぶ?なにして」


『お宝探し!』


その霊の言葉に蛍は息を飲むことしかできなかった。


なぜ、宝探しという言葉が出てきたのか。


なぜ、人を誘って遊びたがっているのか。


考えれば考えるほど、蛍は深い溝にはまっていく。


しかし、その中でも蛍は理解していた。


相手にペースを握られてはいけない、と。


だからこそ、蛍は少し強気に女の子に視線をぶつけた。


「ちょうど、私達もお宝を探していたところだよ……。いいよ、お宝探しに付き合ってあげる」


蛍のその言葉を聞いて女の子は無邪気に喜んで見せた。


その姿は悪霊というにはあまりにも人間味を宿しているのかも知れない…。

次回の更新は10月8日(月)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

謎の子ども→ゴミ屋敷に現れた?

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