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38話 思い出。

1階でゴミを片付ける麦と舞火は突然、姿を見せた「黒いあいつ」に苦戦していた。


「いやぁぁぁぁぁ!!」


「ちょっと、マイカちゃん、落ち着いて!」


「むりむりむりむりむり……」


黒いあいつに苦戦をしている、というより麦はパニックになるマイカに苦戦を強いられていた。


ゴミ屋敷を逃げ惑う舞火のせいで片付けたはずのゴミはさらに散らかり、黒いあいつもどこに行ったかわからなくなっていた。


これにはさすがの麦も言葉をなくしてしまった。


そして、しばらくして落ち着きを取り戻した舞火は激しい罪悪感に溺れた。


「あの…本当にすいませんでした」


舞火は深く麦に頭を下げてさっきの自分の行動を反省して見せた。


「いや、別にいいよ。と、とりあえず、作業を続けよう」


麦は舞火の否を認めて、笑みを溢すと舞火にゴミ袋を手渡した。


せっかく、片付けたのにそれを無駄にした自分の行為を受け止めてくれた麦。


その麦の言動がさらに、舞火の胸を熱くさせた。


そして、焦る必要はない、と舞火は思った。


なぜならば、こんなにも麦のことを想っているから。


そうやって、1階で麦に恋心を激しく燃やす舞火をおいて、2階で作業をする蛍と轟太は着々とゴミを片付けていた。


2人は決して、仲が悪い訳ではない。


だが、それ故に話題が見つからないのだ。


別に無言で作業をすることに対して、蛍は居心地の悪さを感じてはなかったが、轟太はそうではなかった。


麦に蛍を任せる、と言われた轟太からすれば何かしらの責任感と使命感を感じているのだ。


その為、必死で轟太は話題を探した。


「……アニキ達は作業、順調に進んでるのか?」


「進んでるんじゃないんですか」


轟太は勇気を出して口を開いたが、その言葉は蛍によってあっさりと消化されてしまった。


蛍の態度は悪い訳ではないが、会話を続けようとしないその蛍の態度に轟太は気を落とすしかなかったが、このままでは引き下がれない轟太は再び、話題を探した。


そして、轟太が導きだした話題はこれであった。


「そういえば、アニキって恋人とかいんのかな?」


轟太は蛍が麦に好意を抱いていることを知っている訳ではないが、それでも自分と同じように慕っていることはしっかりと理解している。


その為、轟太はそれを話題に出したし、なによりも轟太自身もそれを気になっていた。


「………わからないですよ、そんなこと」


蛍はゴミを袋に入れる手を止めて、少し不機嫌そうに轟太にそう答えた。


轟太以上に蛍はそれを気にしているのだ。


実際のところ、麦に恋人がいるのかはわからない。


それならば、本人に聞けば良い話なのだが、それが蛍にはできない。


もしも、いたら。


それを思うと蛍の喉を通って、言葉が出てこないのだ。


「水野はいると思うか?」


その轟太の問い掛けはあまりにも難しいものだった。


素晴らしい人には恋人がいる。


それは言わずと知れた恋の常識みたいなもので、恋愛において余り物に福があるというのはあまりない。


もちろん、例外もある。


しかしながら、希望通りにはならないのが恋愛である。


「私は…いると思います」


「やっぱり、そうか!アニキは男気があっていい男だからな。きっと、これまでに沢山の女を抱いてきたに違いねぇ!」


胸が(よじ)れそうになった。


心にもない自分の言葉に蛍は心が痛くなった。


きっと、あの人に恋人はいるだろう。


そう思うことで蛍は心に防御壁を作っている。


「…かも知れませんね。早く、作業を続けましょう」


「お、おぅ」


蛍の冷たい雰囲気と不機嫌そうな顔を見た轟太はぎこちなく蛍に返事をして、作業を再開した。


ずっと、気になっていたことをつついてくる。


本当は自分も1階で作業をしたかった。


そんなことを思わせるような轟太に蛍は少しだけ、怒りを感じていた。


いや、怒りというよりは嫉妬なのかも知れない。


素直に疑問を口にできることに対して。


そんな些細な嫉妬を胸にして、作業を続ける蛍は不意にボロボロになったアルバムを見つけた。


「これは…アルバム?」


埃がこべりつき、表紙はゴミに埋もれていたせいか変色している。


だから、だろうか。


蛍は温子の個人情報のことも気にはしていたが、好奇心に負けてアルバムを開いた。


すると、そこには着物を着た綺麗な女性とスーツを着た男性が2人で並んでいた。


「これは青野さん?」


アルバム、ということから写真に写る女性が若い頃の温子であることがわかる。


それに伴い、隣の男性が温子の旦那であることも何となく蛍には理解できた。


「この人が明日……」


指輪を見つける、という使命を胸に蛍はアルバムを閉じて再び、作業を始めようとした時、声がした。


『ねぇ、一緒に遊ぼうよ?』


その声はあまりにも幼く、甘えた声である。


それは轟太のものではないのだろう。


蛍は額に汗をにじませながら、ゆっくりと声がするほうへと顔を向けた…。

次回の更新は10月6日(土)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

謎の子ども→ゴミ屋敷に現れた?

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