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37話 儚い乙女心。

目の前に広がるのはゴミの海である。


そう、表現するほかに言葉が出てこないほどの光景が麦、蛍、舞火、轟太の目の前に広がっている。


いくら、麦に体力を回復させてもらったからといっても、やる気とは別である。


「さぁ……やるぞ!」


そうゴミ屋敷の掃除を口にした麦だったが、その声は震えていた。


それはまるで絶望しているようで、嫌がっているように蛍と舞火と轟太は感じた。


「あの…ムギさん……」


「どうした?ホタルちゃん」


「今日中に終わりますかね……?」


その蛍の問い掛けに横にいた舞火と轟太は生唾を飲んだ。


なぜなら、2人も蛍と同じことを感じていたかからである。


そんな3人の視線を受けた麦は3人と目を合わせようとしなかった。


そして、1歩、前へ踏み出すと3人の顔を見ずに口を開いた。


「と、とりあえず、時間がないから分担だ。この家は2階建てだから、1階と2階で2人ずつ別れて、ゴミの撤去と指輪を探すそう」


「あっ、それならあたしは麦さんとが良いです!」


さっきの蛍の質問はどこへ行ったのか。


麦の提案に対して瞬時に反応を見せた舞火は手を空高くあげて、麦にアピールをした。


それにつられてか轟太も負けじと麦にアピールをして見せた。


「それはせこいぜ!俺もアニキと一緒がいいっすよ」


舞火と轟太に迫られた麦は手を前にやって2人を鎮めようとして、チラリと横目で蛍に目をやった。


そんな麦の視線に気づいた蛍は胸を踊らせた。


もしかして、自分を指名してくれるかも知れない。


そんな期待を蛍は感じていたが、それはただの期待でしかなかった。


「いや、何かあったら危ないからな。男同士はダメだ。ゴウタはホタルちゃんと。マイカちゃんはオレと一緒に1階の捜索だ」


その瞬間、舞火は声を高くして喜び、轟太は大きなため息を溢した。


それは蛍も同じであり、轟太のように大きなため息を溢すことはなかったが、心の中で大きなため息を溢した。


舞火のように素直に感情を表に出すことができれば、どれだけ楽なのだろうか。


喜ぶ舞火に嫉妬を覚えながら、蛍はゴミ屋敷の2階へと向かった。


「じゃ、私は2階へ行きます」


「あぁ、頼んだよ」


少し不機嫌な蛍に首を傾げながら麦は蛍にゴミ袋を手渡して手を振った。


蛍に対してなかなか、2階へと向かおうとしない轟太を目にした麦は轟太に近づくとゴミ袋を手渡した。


「じゃ、ゴウタ。 ホタルちゃんのことは任せたぞ!」


任せたぞ。


その言葉はやけに轟太の心に深く刺さった。


それは麦を信頼し慕っているからこそ、轟太の心に深く刺さったのだろう。


そして、それは慕っている人からの頼みでもある。


義理や人情に弱い轟太は麦のその言葉に頬を赤くして喜んで見せた。


「オッス!!アニキの頼み事は絶対!水野のことは俺に任せて下さい!」


「おぅ、期待してる」


大きな声をあげて胸を叩いた轟太は蛍を追いかけるように勢いよく蛍に続いて2階へと走っていった。


今、1階に残されたのは麦と舞火だけである。


場所はゴミ屋敷ではあるものの、舞火にとっては麦といるだけでそこは花畑になるのだ。


これはチャンスなのだ。


2人きりでいることなんて滅多にない。


「さて、オレ達も作業をはじめるか」


麦は両手をあげて背伸びをすると苦い顔をして、ゴミ袋を手に持った。


「あ、あの……麦さん…」


「うん?」


ゴミ袋を手に持って渋々、ゴミを片付ける麦は声を掛けてきた舞火に笑みを溢しながら首を傾げて見せた。


その笑みを溢す、1つ1つの動作は舞火にとっては甘い誘惑であり、刺激が強すぎる。


どうしても、気持ちがはやってしまう。


そう、ここまで好きなのだからもう、何も怖がる必要はないのだ。


「大切な話があるんですけど……」


「大切な話?なに?もしかして、この後に用事とかあるの?」


「ううん。そういうのじゃないんです」


胸がいっぱいになって、もう、今にも口から麦への想いが溢れ出しそうになっている。


言いたい、伝えたい。


舞火は純粋にそう思っているが、その気持ちは乙女心によってうまく、言葉として消化されない。


「じゃ、なに?」


ジレンマに陥る舞火を追い込むように麦は舞火に声を掛ける。


わかってる、わかってる。


舞火は麦を見つめて、今がチャンスであることを言い聞かした。


そうでもしないと気持ちが伝えられないのだ。


「あたしは……麦さんのことが……」


ここまで来たらもう、引き返せない。


腹を括った舞火は一斉一代の告白をしようと口を開けた瞬間、悲劇は起こった。


「あっ……」


それはあまりにも間抜けな声で、危機感を感じさせない麦の声だった。


しかしながら、舞火にはわかっていた。


自分の頭になにかが飛んできたことを。


そして、それがピクピクと触覚を動かしていることを。


「マイカちゃん、頭にゴキ……」


「やめてぇぇぇ!!言わないでぇぇぇ!!いやぁぁぁぁぁ!」


舞火は頭についたそれを手で払うと白目をむいて失神した。


それほどまでの衝撃。


乙女心は黒いあいつによって、呆気なく壊されしまった…。

次回の更新は10月2日(火)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

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