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35話 あなたのこと。

麦に促されて作業着に着替えた蛍、舞火、轟太の3人は依頼者である温子の気持ちをくみ取るために、ゴミ屋敷の前に立っていた。


「さぁ、行くぞ!」


同じく作業着に着替えた麦が拳をあげて、ゴミ屋敷へと向かっていくが、蛍と舞火と轟太の足はなかなか前へとは進まなかった。


その理由は言うまでもなく、汚いからである。


いざ、近づいてみるとゴミ屋敷だけにゴミの量が恐ろしく、そこから放たれる異臭は意識を根こそぎ刈り取られそうになる。


そんなゴミ屋敷に入れば自分達はどうなるのだろうか。


3人の胸にあるのは未知の領域へ踏み出す恐怖というよりも、わかりきった恐怖に怯えていた。


「どうした?皆、来ないのか?」


ゴミ屋敷の玄関の前に立った麦はクルリと振り返り、なかなか足を動かさない3人に目を向けた。


麦に目を向けられた3人は姿勢を正して、麦と目を合わせようとはしなかった。


「い……行きますよ。ねぇ?」


はじめに声を出したのは蛍であったが、蛍は自分のその答えに自信が持てなかったのか舞火にその先の答えを委ねた。


しかし、まさか自分に委ねられると思わなかった舞火は声を裏返して焦りながら必死で答えを導きだした。


「えっ!?あっ……。うん、そうだね。少しだけ、ビックリしただけですよ」


「そ、そうだぜ!少しビビっちまっただけだぜ!」


舞火の便乗するように轟太は拳をあげて自身に葛を入れると重い足を前へと進め始めた。


「そうか。じゃ、とりあえず、この玄関にあるゴミをどけて中へ入ろう」


「了解っす、アニキ!」


麦が玄関にあるゴミを片付ける姿を見た轟太は動かした足を早く回転させて、麦に合流すると麦と共にゴミを片付け始めた。


そんな轟太を見た蛍と舞火は顔を合わせて覚悟を決めるように深く頷くと麦のもとへと向かった。


「う……」


麦と合流した蛍と舞火はすぐにその激しい異臭に意識をかすめられたが、麦の呼び掛けのおかげで意識を保つことができた。


「大丈夫か?」


「はい。なんとか……」


顔を青くさせながら麦に返事をした蛍は麦からゴミ袋を手渡されて、玄関に転がるゴミを片付け始めた。


「麦さんはなんで平気なんですか?」


蛍と同じようにゴミ袋にゴミを入れる舞火は一瞬、手を止めて作業をする麦に問い掛けた。


そして、その疑問は蛍も轟太も感じていた。


なんの躊躇いもなく、ゴミ屋敷へと歩いてく麦の姿は実に頼もしく心が刺激されるものがあったが、なぜ、麦は平気なのかは誰にもわからなかった。


きっと、そこには何か大きな秘密があるのだろう。


蛍と轟太、そして、麦に質問をした舞火は生唾を飲んで麦の答えを待った。


「平気?」


「はい、臭いとか……。それに汚いし…あたしとしてはけっこう、苦しい所があるんですが……」


「そっか、そっか。それは何か悪いことしたね。オレもどちらかと言うと綺麗なほうが好きかな」


麦は手を止めて明るく笑みを溢すと舞火を見つめた。


舞火はそんな麦の笑みを見て、自身の質問の意図を忘れ顔を赤くさせた。


そんな舞火に変わって轟太が話を続けた。


「麦のアニキは潔癖症なんすか?」


「うーん……。一般以上潔癖症未満ってやつかな。俗にいうきれい好きってやつだよ」


「なるほど!俺もっすよ!」


轟太がきれい好きかどうかわからない。


蛍からしたらむしろ、轟太のそれは麦との共通点を作る為の嘘にしか聞こえなかったが、轟太の働きには感謝していた。


それは麦のことを1つ、知ることができたからである。


単なる“きれい好き”ということがわかったことぐらいで喜ぶなんておかしいのかも知れない。


しかしながら、それが蛍には嬉しかったのだ。


それは麦に対して特別な感情を抱いているからだろうが、それに蛍自身は気づいてはいない。


それは舞火が原因なのか、蛍の経験不足からくるものなのかはわからない。


だが、嬉しいのだ。


「蛍、どうしたの?そんなににやけちゃって」


顔を赤くしていた舞火は不意にゴミを片付けながら、にやける蛍を目にしていた。


「えっ!?そんな、にやけてなんてないよ!」


あまりの不意打ちに蛍は顔を赤くして両手をバタバタと振り回すことしかできなかった。


その動きは照れ隠しとしては下手くそで、にやけていたことは明白であることを意味している。


両手をバタバタとさせている蛍を見た麦は優しく笑っていたが、轟太は蛍にかまをかけてきた。


「あ、もしかして、水野もきれい好きか?」


かまをかけたと言うよりはただ単に轟太は疑問に思っただけなのだろう。


それにも関わらず、蛍は焦りを隠せなかった。


「き、き、きれい好き!?別に私は普通って言うか…。一般的並と言うか……」


両手をバタバタしたり、モジモジしたりと情緒不安な蛍の心を麦は知らない。


それは蛍にもわからないことの為、麦がそれを理解することは難しいのかも知れない。


だからこそ、恋というものはややこしく辛いのだろう。


本人と相手の間で揺れ動く恋心。


それはいつか大きな実をつけることがあるのだろうか。


きっと、それに実をつけるのは本人しだいである…。

次回の更新は9月22日(土)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

青野 温子→ゴミ屋敷の住人。

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