表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/130

33話 キャッチフレーズ。

蜜柑高校での授業を終えた蛍と舞火はいつも通り修復屋へと向かっていた。


特に何か用がある訳ではないが、学校終わりに修復屋へと足を運ぶことが2人の習慣になっていた。


「ごめん。あたし、今日、用があって麦さんの所に行けないや」


「あっ、そうなんだ。じゃ、私はどうしようかな…」


視線を落として修復屋へ行けないことを悔やむ舞火に対して、蛍は難しい顔をして修復屋へと行くことを悩んで見せた。


「行ってきたら?きっと、麦さんも待ってると思うよ」


「ムギさんが!?…そうは思えないけどなぁ…」


「とりあえず、今日、麦さんが何をやってたか明日、教えてね。それじゃ、また明日!」


舞火は時間を気にするようにして、蛍に向かって手を振ると足早にその場から姿を消した。


「なるほど…。ムギさんの今日の様子を私に教えてもらうのがねらいか」


その場から姿を消した舞火に納得した蛍は遠ざかる舞火に手を振って、ため息を溢した。


舞火が完全に見えなくなった頃、蛍はゆっくりと修復屋へと続く道を歩き出した。


思えば、蛍は麦と2人きりで修復屋で会ったことはない。


それを思った蛍はポッと顔を赤くして、モジモジとし始めた。


「待って、待って、待って。もしかして、私、緊張してる!?……ない。それはない。絶対にない!」


赤くなった顔を両手でおさえて蛍はその場で立ち止まり、恋の(トラップ)にはまった。


1度、その人のことを考えればドンドン悩みや考えは深くなっていく。


恋人はいるのだろうか、好意を抱いている人はいるのだろうか、過去にどんな人とお付き合いをしていたのだろうか。


考えれば考えるほど、蛍の頭の中は熱くなり、それと同時に蛍は顔を赤くさせた。


「……そう言えばムギさんって恋人いるのかな」


それはシンプルな疑問だった。


今まで習慣のように修復屋へ通っていたが、蛍は麦のことを何も知らない。


なにより麦の“家族”のことを知らない。


蛍はこの間、麦が悲しそうに呟いていた姿を脳裏に浮かべると少し視線を落とした。


あまり深く追及してはいけない。


そう蛍が思ったのは蛍もまた“行方不明の父親”について触れてほしくない部分があるからである。


心に秘めたあらゆる想いを抱えて蛍は再び、修復屋へと歩き出した。


「ふぅ……よし!こんにちは!」


しばらく、歩いて修復屋へと到着した蛍は店の前で深呼吸をして心を落ち着かせると元気な声をあげて店の中へと入った。


修復屋は相変わらず、お洒落な内装で客がいない。


そんな中、カウンター席で麦はノートパソコンを広げて、頭を抱えていた。


「おぅ、ホタルちゃん。今日は1人なんだね」


「はい。舞火は用事があるらしくて。それよりも、何をしてるんですか?」


「あぁ、実はホームページを作ろうと思ってさ!」


「ホームページですか?」


自慢げにノートパソコンの画面を麦に見せられた蛍は画面に目を向けてその中身を確認した。


修復屋、と大きく書かれたページには従業員紹介や仕事内容などがまとめられていて悪くはないできになっている。


その為、麦が頭を抱えている理由が蛍にはわからなかった。


「いいじゃないですか。なんか悩んでる見たいですけど、何を悩んでいるんですか?」


「それが…キャッチフレーズが決められなくて!!」


確かにホームページ等を作成する際に一言で何をしているかがわかるようなキャッチフレーズがあれば便利であることは確かである。


しかし、蛍はあまりにも可愛い悩みに度肝を抜かれた。


そして、それは以外でもあった。


蛍の知っているだけでも、麦は多くの人をその力で救ってきた。


そんな人がこんなことで悩むんだな、と蛍は思うと親近感を覚えた。


いや、始めたから麦という人間味溢れた人に親近感を覚えていたのかも知れない。


「な、なるほど。それは難しい問題にですね」


「だろ?ホタルちゃん、何か良いキャッチフレーズある?」


正直、蛍はキャッチフレーズなどを考えられるほどの奇抜な発想も想像力もない。


せいぜい、一般並みである。


しかしながら、麦の親にすがり付く子猫のような潤んだ瞳を見た蛍にはそれを拒絶することはできなかった。


「そうですねぇ……」


蛍が声をあげてから沈黙が続いた1秒後、蛍は手を叩いて口をあけた。


「“どんなことでもスピード解決!修復屋!”って言うのはどうでしょうか…?」


蛍は振り絞った。


それで出てきたキャッチフレーズがこれである。


決して、悪くはないだろうが良くもない。


ありきたりで修復屋を象徴しているようなキャッチフレーズではない。


むしろ、便利屋や探偵に近いようはキャッチフレーズである。


だが、勢いというものは物凄いもので麦は蛍の勢いに押されるように首を激しく縦に振った。


「それだ!!“どんなことでもスピード解決!修復屋!”か!いいじゃん。いいじゃん!」


その場の勢いで決定したキャッチフレーズをホームページに打ち込んでホームページを完成させた麦は満足げな表情でノートパソコンを閉じた。


麦も蛍も謎の大きな達成感を感じていた…。

次回の更新は9月9日(日)です!

【登場人物】

花形 麦→修復屋ウィートの修復士。

半 重春→修復屋のオーナー。

水野 蛍→蜜柑高校1年1組。父親を探している。

春下 舞火→蛍の友達。蜜柑高校の生徒。

月並 零花→病気が完治。

嵐山 轟太→学校の問題児?

嵐山 雪子→轟太の6つ下の妹。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ