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もしも、学校に不審者が来たら…

作者: みやざー

 月曜、それは学生からすれば最悪の曜日である。


 代わり映えしないこの街も6年通えば飽きがくる。


「あぁ、だりぃ」


 そんなことぼやいたとて、急に街が変化することもなく、いつも通り学校に着いてしまう。


 きーんこーんかーんこーん


 学活スタートのチャイムが鳴る。


「うそ、もうそんな時間かよ」


 いつもと同じ時間に出たのに、ここまで時間がかかったのはきっと、6年間という思えば長い時間の経過のせいだろう。


 校門にはいつも立っているはずの体育担当「ナカムラ」が立っていなかった。


 これはかなり遅刻していることを意味する。


 ここで勘違いに気付く。


「授業始まってんじゃねぇか」


 急ぎ、下駄箱の上履きをほっぽり出し、外靴を乱暴に入れる。


「おぉい、授業始まってんぞー」


 教室に入った途端、クラスの笑われ者だ。


 赤面しながらも席に着く。


「えぇ、教科書〜ページを…」



 何事もなく、授業は進む。


 そして給食の前の4時間目のことだった。


 給食のことで頭がいっぱいな俺に授業内容は入ってこない。


『タカヌマ校長先生、タカヌマ校長先生。お客様がお見えです。至急、中央玄関までお越しください。繰り返します。至急、中央玄関までお越しください』


 いつもと様子の違う校内放送。


 授業中の放送は災害以外でしないはずだった。


 しかし、皆はこの放送の意味を知っている。


 学校で毎月、万が一に備えた避難訓練が行われている。


 その中の一つに、不審者が学校に入って来た際、相手に気付かれないように不審者が入って来たことを意味する、言わば合言葉のようなものだった。


 みんなが避難訓練ではない事を担任から告げられ、パニックに陥る。


 だが、俺は立ち上がった。


「おい、頭を下げろ。不審者が何の目的で入って来たかわからないだろ。もし殺しに来たなら真っ先に殺されるぞ」


 担任が脅しの意を込めて放った言葉にクラスはさらにパニックになる。


 女子は叫び、泣き、中には失禁するものもいた。


 男子はニヤニヤしている。


 きっとここに入って来た不審者を退治するつもりなのだろう。


 たが、たかが12歳の子供が大人に敵うわけがない。


 その叶わぬ夢を捨てろ。


「ちょっとトイレに行きたくて…すいません」


 俺はすぐさま教室を出た。


 担任が何か言っていたが、そんなことには耳を貸している暇はない。


 いち早く、不審者を懲らしめなくてはならない。


 全生徒及び、全職員の命は俺が守るしかないんだ。



 放送にあった中央玄関の近くまで忍び足で近づいた。


 こちらから相手を伺える場所に着く。


「いたぞ…ぱっと見、あの二人が持っているアタッシュケース以外、武器らしきものはないようだな」


 そこにいるのはテカテカハゲのタカヌマ校長と放送をした、老けたおばさん副校長を二人。


 そして、不審者はとりあえず確認できたのが三人だった。


「一体、何の目的なんだ…」


 相手の会話に耳をすます。


「早く生徒の個人情報をよこせ。今から5分で全て用意しろ」


「お待ちください。それだけはできないのです。こちらとしても立場があるので…」


 馬鹿野郎、相手の話にホイホイ乗っとけばいいものを…


「立場とか言ってる場合じゃないんじゃない。早くしないと、この一階のフロアの人間全部殺すよ」


 校長と話をしているのは、不審者グループのリーダーだろうか。


 しかし、どうやって殺すのか。


 武器らしきものは見当たらないが。


「待ってください。生徒だけはやめていただきたい」


「個人情報も出せなければ、生徒も勘弁とは。随分とこちらへの要求は多いな。都合が少し良すぎる。なら、お前が死ぬか、ハゲジジイ」


「お待ちを。私の命もどうか…」


「結局お前は自分が可愛いだけじゃねぇか」


 ハハッ、これは面白い、傑作だな。


 自分の置かれている立場に気付かれないのか、あのハゲは。


「おい、アレを出せ」


 リーダーらしき男が後ろの男に指示を出し、アタッシュケースから何かを取り出すらしい。


 何と出て来たのはハンドガンだ。


 本物かどうかはここからではわからないが、あの形状はきっとガバメント、M1911だ。


 まずいことになった。


 ここでの銃という存在は、本物であれ偽物であれ有効だ。


「これをハゲ頭にぶち込まれたくなければ、早く用意することだな。おっと、今の会話で5分は経ってしまったようだ。いけ」


 リーダーが男二人に指示を出す。


 まずい、一人がこっちに来る。


 あいつらは一人一挺持っていた。


 こちらも応戦するため、何か武器に代わるものを探す。


「いいのがあるじゃないか」


 折れた箒の柄があった。


 奴が近くまで来ていると、足音でわかった。


 バコッ


 思いっきり奴の頭を叩く。


 男は吃驚し、叩かれた方を見る。


 しかし、隙も与えず、殴りかかる。


 その反動で男が咄嗟に銃を撃つ。


 バンッ


「………」


 しかし、弾が出ていない。


 そう、やはり偽物だったのだ。


 銃声は立派だったが、薬莢が出ていなければ、壁などにも着弾していない。


 火薬銃だ。


 すぐさま喉を狙い、男を行動不能にする。


 喉を突かれ、もがき苦しんでいる男の頚椎に、更に打撃を加える。


 男はのびきってしまった。


 しかし、火薬銃の銃声でもう一人が走って近づいて来ていることに気がつく。


 廊下でのびている男を、もう一人の男が見つける。


「おい、どうした。おい」


 男が男の頬を叩きまくる。


「クソ、どうなってやがる」


 二人目の男が気づいてない間に、後ろに回り込む。


 柄の先端で思いっきり頚椎に打ち込む。


「ウガッ」


 二人目の男が倒れた。


「ふぅ、危なかった」


 近くにあった事務室に紐を取りに行くと、ドアが開いていた。


 子供を置いて逃げたか。


 だが、どうでもいい。


 紐がなかったから、ガムテープを持っていった。


 口に三周ほど巻いて、手にも巻く。


 最後は二人をガムテープでまとめる。


 バンッ


 二人を事務室にぶち込んだ時に、また火薬銃の音が聞こえた。


 まだ中央玄関にいるらしい。


「早くもってこい。こっちはイライラしてるんだ」


 校長はまだ粘っているようだ。


「わかりました。準備しますので」


 銃声にビビったようだ。


「そうだ、それでいい」


 校長とリーダーは校長室に向かう。


「チャンス。背を向けている」


 箒を持ち、背中に近づく。


 そしてジャンプして、箒の柄を首に回す。


 そのままいっしょに倒れこむ。


「ウグッ、グゾォォ」


 何かを訴えていたが、こちとら首を締めるので精一杯。


 いちいち気に求めていられない。


 校長は今の現状を理解していないようだ。


 激しく暴れる男に更に力を加え、とうとう失神までに追い込む。


「はぁはぁはぁ」


 流石に疲れた。



「き、君は、何を危険なことをしてるんだ」


 事が終わり、警察に不審者を突き出し、事情聴取も終えた。


 校長に怒られた。


「全生徒の個人情報をバラそうとしたあんたよりはマシだよ」


 ぐぅの音も出ないようだ。


 そして、教室に戻る。


「おおぉぉぉぉぉおお」


 教室から歓喜の声が上がる。


「凄えよ、お前。見直したわ」

「いつか何かやると思ってた」

「好き。お嫁にして」

「流石だ、我が友よ」

「君ってやるときはやるのね」


 みんなが思い思いに口走る。


 褒められるのは悪気がしない。



「…い、おい、……、おい」


「…ん」


「授業はもう終わったぞ。いつまで寝ているんだ。お前、今日給食当番だろ」


 眠りまなこを擦り、口に垂れた唾液を拭う。


 またもやクラスの笑われ者になってしまった。

昔の僕の頭の中はいつもこんな感じ。


一度は皆さんもこんな妄想をした事があるのではないでしょうか?


そんな妄想を短編で出して見ました。

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