覆元
本来、漢字は違うんですが…(復元)
やらかして今までの関係性を覆したのを、覆い隠して、元通りのように見せかけようとしてる様子を。
今日もまた、彼らからのお手紙が届いております。
私が倒れた後。リアーオ様達は追い返され、国王陛下たちよりお叱りを受けたそうです。
さすがに目の前で倒れたのを見ては、殿下方も直接会うことはまだ無理だと判断されたようで、あれ以来訪問してくることはございません。
ですが、手紙や贈り物は前以上に贈られてきております。
私はもう終わったことと思っておりましたが… リアーオ様は婚約の解消という結論に納得せず、陛下やお父様に、償わせてほしい、やり直させてほしい、と懇願し続けていたそうです。
それまでに送られてきていた手紙にも、彼女、リーリア嬢の偽りを知って、騙されていたことを悔い、私を無実の罪で貶めたことを謝罪し、許しを乞う言葉が書き連ねてありました。
他の3人からも、似た様な内容の手紙がこまめに送られてきていて。
ですが、私は。
正直、先日会った時のことを思い返すだけで、血の気が引いて、気付けば小刻みに震える指でスカートを握り締めております。
感情の問題もありますが、それをさておきましてもこの有り様では、いずれ王妃の役割どころか、知人程度の関係にすら戻れるかどうか…
リアーオ様には、改めて婚約解消の意思が変わらない旨と、揺るぎない信頼を戴けず、支えとなるべき立場を放棄することになる謝罪と、どなたか別のご令嬢との、支え合え、愛し合える未来をお祈りした手紙をお送りいたしました。
ほかのお三方にも、信頼を得ることが出来ず、共に殿下を支えるはずだった立場を放棄する謝罪と、明るい将来と、今後は間違えず進んでいけるようお祈りした手紙をお送りしました。
最後に、
<私のことなど忘れて、幸せになって下さいませ>
<過ちは、2度と繰り返さないでくださいませ。そうして下さるのであれば、謝罪はこれ以上は結構です>
との意も添えて。
ですが…
皆さん、ずうーっと変わらず、誠実に謝罪の意を示し続け、折に触れては、気遣って下さっております。
最初は、無実の罪であんなに私を傷つけ、無神経にも直接屋敷に押しかけて、良くなっていたところをまた倒れさせたということで、非常に冷たい目で見られていた殿下たちですが…
そうやって半年ほど変わらず謝罪の意を示しているということで…
「コルディリア。殿下との婚約の解消だが… こうやって1年近く変わらず謝罪の意を示して下さってる。
そのまま解消でいいのかね? 後悔はしないかね?」
お父様だけでなく、いろいろな人たちからも同じように、心は変わらないかを聞かれるようになってまいりました。
ええ。今はまだ変わりません。ですが… このままではそれこそ何の状況も変わりません。
いずれの時にかは諦めて下さるでしょうが… このまま無為に時間だけを費やすのもよろしくありませんわね。
変わらぬ内容の手紙がずっと来ているのを見ながら、私も考えておりましたの。
私の意思としては、やり直すなんて無理ですわ。少なくとも1年や2年では。
でも。
皆さん、すぐにでもやり直したいとおっしゃいますのね? どんな謝罪でもする、と。
そう、ですわね。 でしたら、そういたしましょうか。
もっとも、その時。 やり直すかどうかを決めるのは、殿下たちになりますわ。
さあ、その時。 殿下たちは一体どうなさるのでしょうか。
そして、1年ぶりの直接の顔合わせの場。
場所は、王城の庭をお借りすることになりました。
国王陛下やお父様も、あれ以来初めてとなる顔合わせをご心配下さいまして、少し離れて見守って下さっております。
さすがに緊張した面持ちで、殿下と他3人が案内されてきて、お茶の用意されたテーブルに着きました。
「お久しぶりですわ。皆さんお招きに応じて頂き、ありがとうございます」
まずはご挨拶。あの以前通りのようで以前通りではない笑顔で。
「いや。こちらこそ無理を言って直接会ってもらってすまない」
さて、一応最終確認いたしましょうか。まあ無駄とは思いますけど…
「で、さっそくですけど… どうしても以前のような関係に戻ってやり直したいとおっしゃいますの?
私とではなく、新たになんのしがらみも無い方と新しい関係を築いていこうとは思いませんの?
私が直接関わる気はないのですけど、お力になれることでしたら間接的にお手伝いしますし、遠くから皆様の幸せは祈らせてもらいますわよ?
私は貴方方が二度と間違えなければ、そして私をそっとしておいてもらえればそれでよろしいのですが…」
「あの節は本当に申し訳なかった! 俺たちのことを快く思えないのは当然のことだ。
君の気が済むなら、どんな罰でも甘んじて受けよう。
だが、俺たちはもう二度と間違えない。どうかそれを証明させてもらえないだろうか」
「私もあの時の愚行を深くお詫びいたします。どうか再びのチャンスをいただけないでしょうか。
もう一度信じていただけるなら、どんなことでも致します」
「僕もなんであんな女の言うことを鵜呑みにしたのか…。本当にゴメンなさい。
二度と間違えないと神に誓うから、それを見ててもらえないかな」
「申し訳なかった。君の愛情も助けも、あまりに有ることが当然と思っていて、その有難さ、重みを軽んじてしまっていた。
愛しているんだ。虫のいい話だがどうかやり直させてもらえないだろうか。
もちろん、信じてもらえるよう、今後の行動で証明させてくれ」
そうですの…。結局言い分は変わりませんのね。
では。 そうしていただきましょうか。
やらかしたら、基本は捨てて別のに行きますよね?
婚約破棄自体はともかくも、断罪(しかも公開処刑)がセットだと…
正直、魅了とか強制力あったならともかく、単に騙されたんだと怖いなぁ。
王になってから、プロな他国のスパイだの、毒蜘蛛や女狐な愛妾だのに騙されたらねぇ…
その時、王妃やその子ってどうなるんでしょうね?
既に、実行した実績、ありますもんね。
皆さんは、どうしてくれればもう一度、そんなのの王妃コースに復帰しますか?