プロローグ 0.5: 老人の物語
プロローグ 0.5: 老人の話
ブルム。小さいが活気に溢れた町として知られたこの町は、ヒューマン大陸のニッケルへリム王国と、デモンキン大陸の強力なバロー帝国国境に位置する。
この2つの国の間で40年間続いた先の戦争は、帝国の貴族の多くが継続を望んだにも関わらず停戦されることになった。
見た目の違いが少ない為、ヒト族と魔族はしばしば同じ種族と見間違えられる。しかし一つ明確に違う点があった。それは平均的な魔族は、平均的なヒト族に比べて強いマナ能力を持っているということだ。
ブルムは安全で平和だった。それは自衛団のパトロールの努力と、自然の防壁とも言える深い森林、そして町に駐在する王国で最も有名な冒険者ギルドがあった為だった。
このギルドには冒険者として生きる覚悟を決めた色々な者が所属していた。下劣なモンスターから洗練された紳士まで、鍛冶の能力を持つドワーフから自然と心を通わせられることで知られる妖精までここにいた。
このギルドの建物には2つのフロアがあった。それぞれのフロアに掲示板があり、そこには異なるレベル・年齢の冒険者の為のクエストがびっしりと書き込まれていた。(尚、これらのクエストは一般市民からのものもあり、中には特別なクライアントからのものもあった)
建物の一階には冒険者の登録の為の受付と、冒険者達がお互いに交流し、酒を飲み、楽しむ為の酒場があった。二階はより経験を積んだ冒険者の為の場所で、モンスターマテリアルを査定する為の受付もあった。
酒場のテーブルの一つに二人の冒険者が座っていた。一人は簡単な服の上に革の鎧を着た若い男で、背中には磨かれた剣と盾を身につけていた。もう一人は老人で、背が低く長い髭を生やしたその風貌は、多くに人にドワーフと見間違えさせた。
「ご老人、あなた本気かい?」若い男は疑問の表情を見せながら老人に尋ねた。
「若者はいつも我々年寄りは作り話をするものと思っている。しかし若者よ、この話は作り話でなく、真実の記憶さ」老人はパイプを吹かしながら答えた。
「馬鹿馬鹿しすぎて信じられない!別の世界から来た人間?この世界に転生して来た人間?それはただの神話や伝説じゃないのか?」若い男はは不快そうなしかめ面でそう言った。
老人は咳払いをした。
「若いロブよ、そのような人々は私たちの周りに住んでいるかもそれない。そして同じような話をする人は世界中にいるだろう。」
ロブは腕を組み、疑いを込めた声で答えた、
「 そしてそれは本当なのか? あなたの命を救った後、その男はモンスターの群れを5分以内で全滅させたって?」
「そうだ、ただ偶然に遭遇した出来事だが、これは私には一生忘れられない出来事だ。私の言葉を覚えておくといい、我々のこの世界に外から来るものは、善良な意志を持つものであれ、邪悪な意志を持つものであれ、一夜のうちに力のバランスを変えてしまう力を持つ。なぜこのような人たちがこの国や他の地で支配階級にいると思うかい?」
彼はパイプを吹かし、そしてその古い冒険話を締めくくった。
老人には知る余地もなかったが、彼の話は間も無く実現することになった。
二人の「異世界人」の到来により、アステルフォリスの世界に大きな変化が起こるのであった。
Author Note: I hope you can understand this chapter now.