氷とないものねだり
氷の塊を少し砕くと、中には静かな青が広がっていた。
透明で、灰色がかったその青は目を伏せ傾きつつも、立つ美しい少年を連想させた。彼に、その青に、生は存在していなかった。悠久の時が、進まぬ時が、そこには確かにあった。
氷を割ろうとドライバーを降り下ろす時に氷で擦れたのだろう、じんわりと血の滲んだ手は微かな痛みをもたらした。目をそちらに向けると、滅多にみることない自分の赤は、小さく生をはらみ、ついに溢れたわずかな滴はつぅ、っと時が確かに自分に流れている事を囁くのだった。
醜く朽ちゆく体には決してもたらされない、もたらされ得ない美しいものを求めるのは、ないものねだりとは違う気もした。
突発的に書き上げたから、不安ではあるけど、書きたいことかけたからいいかなぁ。
読んでくださってありがとうございました。