ひとつめ
深夜から並んで大人気ゲームの最新作を手に入れたのが先週のこと。攻略本等は見たくないタイプである俺はゆっくりじっくり時間をかけて着実にゲームを攻略している。
……しかし問題が1つ。
俺の背中にへばりついているこいつだ。
「重い」
「んんんー」
ぎらぎらとした金色の髪の毛、見ててこちらが痛くなってくるような数のピアス。少し香るタバコの匂い。
ばりばりの不良である。ヤンキーである。オタクである自分の最大の敵である。 そんなコイツは非リア充歴16年であった俺の恋人……だ。何故こうなったのかは自分でも分からない。俺の口では語れないようなことがいろいろあり、いつのまにか恋人になっていたのである。
「おーもーいいいいっての、どけよ」
「んんんーー」
ぐいぐいとひじで胸を押すが、やはり不良。びくともしない。
はぁ、とため息をついて何も言わずゲームを続行する。そんな俺に奴は囁いた。
「無視すんなよりょーじー。愛しの恋人さまだろーが」
がしゃんと思わずゲーム機を落としてしまう。ああ、危ない危ない。
急いでとろうとするががしっと体に抱きつかれて身動きが取れなくなってしまった。
「ちょ、おい須田っ、ゲーム」
ばたばたと手足を動かせばゲームが足の先に当たって遠くへ行ってしまう。
あああああっ!!!
ぎゅーー、ぎりぎり。
さっきにも増してもがけば奴もどんどん強く抱きしめてきた。
「椋蒔は恋人よりもゲームなのかよ。ぁあ?」
「なっ……!!」
ふと最近あまり聴くことの無くなった不良の声でそう言われてかああっと顔が熱くなった 。エロイ。俺にはまねできないエロさがあるのだ。
「真っ赤」
ぼそっと呟かれるその言葉にさらに体温が上昇。まじでこいつは俺を殺すつもりなのだろうか。最近は体温が上昇しっぱなしだ。そう言えば奴はどんどん腕の力をつよくしてきた。イタイイタイ。
「もうまじでお前は……俺をどこまではまらせるつもりなわけ?」
「は? 何言ってんの、須「奏太」…………そー、た」
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そのまま座っていたベッドにどさりと倒されてどうなったかは分かると思う。
アッーー! な展開であったとだけ言っておこう。放置されたゲームは勿論台無しであったが、そこまで奏太を憎く思えないのは俺もなんだかんだいって奴のことが好きなのだろう。