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アフターカタストロフ  作者: 優
天魔境戦争編
16/33

3

休載終了しました!あと、アクセク数2000突破ありがとうございます!

 負傷した仲間と共に、次々と壁の向こう側へと帰還していく天使達。その時、アルは何処かへ消えたエンジェル達の行方を探していた。


 どこまで行ったんだ、あいつら……!


 だが、いくら上空から辺りを見渡しても、彼らの姿を捉えることは出来なかった。そうしているうちに、地上で天使達の介抱をしていたアレクに呼び止められる。


「大丈夫か、アル! なんなら俺も手伝うが」


「———いえ、アレクさんは他の天使達と一緒に先に帰還して下さい! 私は彼らを探してから戻ます!」


 そう言うと、アルはまだ行ったことのない荒野の先に視線を向けた。


「そうか…わかった! だが、気をつけろ。いつ悪魔が来ていたっておかしくない状況だ。もしかすると、後輩たちはもう出くわしてるかもしれない。これを持っていけ!」


 アレクはそう言うと、アルに何かを投げ飛ばした。見事それをキャッチする。それは黒く縦に伸びており石のように固い。


「花火石って言ってな、割って敵のいる方向に投げて使うんだ。数秒の間だけ目眩しの効果がある。やばいときに使え」


 アレクを一瞥してから、再び手元のそれを不思議そうに確認した。

 石を懐にしまい、アレクに御礼を言うと四枚の翼を大きく広げた。


「新米達によろしくなー!」


 アレクはその後ろ姿に手を振った。

 彼の言う通り、実感は無いものの今はかなり危険な状況に陥っている。本当なら一人で行動することは敵に捕まえてください。と言っているようなものだ。だが、それをわかった上でアルは行動した。

 どうしてこうなった。私そんなに嫌われることしたか? あのおっとりしてた子だけはなんか話せそうだったのに。みんないないし……。なに? 反抗期なの? だから、私には向いてないって言ったんだ!


「ああぁ、ほんとっ。面倒なこと任された!」


 愚痴を零しながら、アルは飛ぶスピードを加速させるとあっという間に姿は見えなくなった。アレクは一人手を下すと、その跡を見つめていた。


「……必ず、帰ってこいよ」









 不穏な空気を漂わせた荒野にシオン達は歩いていた。

 その中の一人、チサが徐に口を開いた。


「ねえ…やっばり引き返そうよ」


 間を空けて歩くチサは、帰還するよう前の三体に要求したが、振り返る素振りも見せようとしない。


「隊長さんが言っていたじゃないですか。悪魔が出るかもしれないって………」


「怖いなら、あなただけ引き返せばいいでしょ、俺たちは先へ進みますが」


 と二番手を行くマークにあしらわれると、チサは一瞬歩みを止め、何かを考え始める。しかし、そうしている内にも前の三人は前進していった。


「……おっ、おいて行かないでー!」


 心細くなり、結局、自ら結論を出す前にチサは足を動かした。




 その頃、先頭を行くシオンは聖堂での出来事といい戦闘でのことといい、どこかやるせない気持ちでいた。

 あの聖堂での彼女の発言が、彼の脳裏に蘇った。


 ……どうしてここまでオレ様がむかむかしなきゃならねえんだ。護る。護るだ? 見ず知らずの俺達を? どうしてそこまで言い切れる? どうしてそんなにも胸を張れる? そういう奴に限ってすぐ死ぬんだ。非常に無残に。残酷に……


「———シオン」


 ふといつの間にか隣にいたマークに呼びかけられ、我に返る。


「これからどうする?」


 その素顔にシオンは少しの間放心状態に陥っていた。彼とシオンは小天使だった頃からの幼馴染で、気付いた時には、互いに信頼出来る親友であると同時に、いいライバルになっていた。

 相変わらずの無表情でマークはシオンに指示を促していた。だが、いくら待っても彼の口から答えは出ず疑問だけが返って来た。


「……どうしました? らしくないですよ大人しくなって。まさか、あのアークから離れようと提案した張本人(・・・)までもが引き返そう、とか考えてないですよね?」


 相変わらず嫌味口で淡々と喋るマークに、心底安堵したシオンは口角を上げ、歩く速度を上げ始めた。


「どうもしねぇよ、このまま行く……!」


 シオンはそう言うと、いきなり足を止め皆んなに聞こえるように言った。


「それにしても……案外、悪魔って出て来ねんだな。期待して損したー。こうやって隊から離れりゃ狙って現れると思ったのによ。」


 そろそろ歩き疲れてきたシオンはそのまま辺りをきょろきょろと見渡すが、どこにも悪魔の姿どころか隊から離れてから一匹も魔獣と遭遇していないことに不満を抱き始めていた。


「魔獣があの程度じゃ、悪魔もそんなに強くねんじゃね? 天使あいつら、悪魔のこと怖がり過ぎなんだよ。案外、楽勝だったりして」


「で、でも…実際にやられてしまった天使もいることだし……」


「それはそいつらが弱かったってことだろ? オレらの代は優秀な奴がいっぱいいるって聞いたし。もしかするとオレ達のほうが戦闘力は上かもな」


「でも、危険すぎるよ。相手がどんな力を持ってるかもわからないで。……行くなら、隊長さんも連れて……」


「それじゃ、駄目なんだよ!」


 チサの問いかけを遮りシオンは声を荒げて言った。


「とにかく、俺達だけで悪魔を見つけ出して倒す。そうすりゃ、オレ達も晴れてアークの仲間入り間違いなし!」


 そして、あいつとも————


 シオンが瞳に映るアルに闘志を燃やしていると、ミラが何かを感じたのか空を見上げた。


「なに? アレ……」


 その言葉に、シオン達も彼女が見る方向に視線を上げた。

 その先には、微かにだがなにかの影が浮かんでいた。その影はだんだんと大きくなっていき、両端が上下運動を繰り返していることから、その動作から自然と鳥類の一種を思わせた。だが、その姿が徐々に露わになると、鳥類特有の羽毛といったものは一切なく、鳥の形をした骨が空を飛んでいた。唯一、その羽と腹の辺りにだけ薄ピンク色の皮が骨と骨の間に張り巡らされているだけだった。


「あれも、魔獣の一種なのか?」


 マークが隣で驚いた表情を浮かべた。

 まだ距離は然程近くはないが、かなりでかい。

 シオン達がその魔獣を呆然と見ていると、それは確かに降下し始めた。


「…伏せろッ」


 咄嗟にシオンが皆に言うと、硬い地面に体を密着させた。

 そうしている間に、魔獣はシオン達がいる層とは一つ下の層に降りていった。お陰で、見つかる可能性は低くなった。魔獣は骨と皮の翼を折り畳み着陸すると、首を地面に下げ口を大きく広げた。


「………」


 崖となる所から顔をひょっこりと出し、魔獣の口元に注目した。

 少し経つと、そこから二人の男女が姿を現した。その姿に、シオン達に一気に緊張が走る。


 (角持ち……

 悪魔だッ————!!)


 皆がそう思った。何より、その頭部から生えた角が証拠だ。だが、それだけではない。


 しかも、———デカい!


 どちらの悪魔もゆうに二メートルは越しているだろう。そのせいか、より圧倒される。しかも、男の後ろにいる悪魔の肌は灰色に染まり異様なまでの存在感を放っていた。

 二人の悪魔が魔獣の口から出終わると、それは突然機動を失ったかのように倒れた。そのまま、ぴくりとも動くことはなかった。

 ひっそりと息を潜め、彼らの動向を窺う。二体は何かをぶつぶつと話しているが、それを聞き取ることはできなかった。


「ど、どうしよ……」


 慌てたチサが小声でシオン達に問いかける。


「落ち着け、取り敢えず、オレ達のことはまだ気付かれていないようだ……」


「これからどうする?」


 隣でマークが指示を求めた。

 それを聞き、その後彼らに降りかかることになる出来事が。この時、シオンの中で生まれた。


「……言っただろ? オレ達であいつらを倒すんだよ」


 その発言に、その場の皆が緊迫した空気に包まれた。


「な、なに言ってるんですか…! 相手がどんな手慣れの悪魔か分からないのに……た、隊長さんに伝えましょうよ。そうすれば、」


「だから、それがダメだって言ってんだよ!」


 シオンの気迫に押され、チサは口籠った。


「オレ達で奴らを倒すんだ。なに、相手は二匹。こっちは四人もいる。それに、オレ達は強いんだ。あの女か男かわからねえ奴の言いなりになってたまるかよ。オレ達は天使である前に戦士なんだ。戦士なら、敵に背を向けて立ち去るなんて出来るかよ……」




「……わかった」


 最初に賛同の声を上げたのはマークだった。その後に、ミラまでもが首を縦に振った。


「私も、賛成よ」


「マークさん。ミラさんまで……」


「おい、チサ。お前はどうするんだ」


 いつまで立っても返事をくれない彼女に、ついに痺れを切らしシオンが言った。


「………」


 皆の視線が一気にチサに集まる。さすがに、チサも決意したようだ。真っ直ぐな瞳でシオンに返答した。


「わかりました。……でも、ヤバかったら逃げましょ。皆んなで」


「へっ、そう来なきゃ。」


 シオンはそう言うと、ヴァ―チュの鎧を纏った。そして、今にも悪魔に襲い掛からんと鞘に閉まってある剣に手を駆ける。


「オレが先に行く」


「待て」


 悪魔のいる地に飛び立とうとしたシオンに、マークが待ったをかけた。


「お前は、あそこへ飛べ」


「?」


 マークがそう言って指差したのは、微かに太陽の光が漏れる空だった。






 灰色の空へ向かって一人の天使が飛んでいった。誰にも見られてはいないと思っていたこの行動を、実は彼らから数十キロ離れた所から見ていた者たちがいた。


「撃ち落す? アレ」


 その小さな影の一つは物騒な事を呟くと、隣にいるもう一つの大きな影に問いかけた。


「放っておきましょう、どうせ返討ちよ」


 その口ぶりからして、味方ではないことは明らかだった。


「……それもそうね」


 そう呟くと、二つ影はその場を後にした。

最後まで読んで頂き有難うございました。

前書きにも書いたようにアクセク数が2000を突破しました!本当に有難うございます。そこで何かを企画しようとか考えています。詳しい内容は今後活動報告を通し紹介させて頂きます。

次回も読んで頂けると励みになります。

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