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突然だが…この日の朝練は原田のこの言葉から始まった。曜日は金曜日、明日明後日と練習続きの土日を迎えなければならないことは全員にとって憂鬱であるといえよう。そんな中、原田の一言に全員が歓喜する




「明後日、日曜日は練習試合を組めた。長い付き合いの『日ノ方高校』との試合だ。正直去年の不祥事から野球部のイメージは最悪だ、他の高校との練習試合も高校側から禁止されていた。が、みんなの日ごろの頑張りが先生方に評価されたんだ、明後日は思いっきり暴れよう」




試合と言われて健太の心は浮かれたがすぐにランニングに駆り出されテンションガタ落ちのまま教室へと戻った



「おはっよ!クボケン!聞いたぜ~明後日試合だってな!女子連れて見に行くから頑張れよ!」

洋平の大きな声で気持ちよく寝れそうだったのに目が覚めてしまった。これでは、授業中に寝るしかあるまい。というか洋平はどこから情報を得たのであろうか、まあ興味もないので別にいいが


いつの間にか教室では健太、風香、洋平、それに背の高い女子『星野 真奈美』、風香よりも小さい女子『七瀬 未来』、そして、我らが野球部の弟キャラじゃなくて、一塁手の風間 翼の人で集まっている事が多くなった。特段何かをするわけではないが、クラス窓際一番後ろの健太、洋平、風香の周りに集まって喋っていた


ちなみに洋平はバスケ部、真奈美はバドミントン部、未来もバドミントン部である。バスケ部の洋平は1年ではずば抜けており、練習試合でも活躍して1年レギュラー入りは確実だとか。真奈美と未来は同じ中学でバドミントン部のダブルスを組んでいて今でも組んでいるらしい






「日曜日休みだから、あたし野球部見にこようかな」

未来が唐突にそういうと真奈美も健太の方をちらちらと見ながら、私も行こうかなと言っている。そんな見せられるような試合ができるはずがない。多分洋平が女子をたくさん連れて来れば来るだけ村澤のファンが増えるだけである。今でさえ、あのルックスとクールな性格に同級生、2,3年の先輩方のファンは絶えず増え続け、噂ではファンクラブがあるらしい




まあ、当の本人は女子苦手だから多分気にせず無視するだろうけど…




昼休みに昼飯を食べ終わると女子の集団が何やら隣のクラスに詰めかけている。何事かと思ったけど村澤という単語が聞こえてきてなるほどと思った。これが噂のファンクラブなのだろう、数十人の女子生徒が村澤のクラスに押しかけている。こいつら全員明後日の試合を見に来るのだろうか…



恐らく村澤を探して、学校中を探し続けているのだろう。健太は昼休みの村澤の過ごし方は知っているが教えない。校舎を出て、体育館の裏側、少し進んだ先に小さな小屋がある。そこには数羽のウサギが飼われている。なんでも校長が好きらしい




「よう、透」




俺の呼びかけに後ろを振り向き、ようとだけ言うと手に持っているスティック状の野菜をウサギにあげていく。村澤は無類の動物好きであり、自身の家でも猫と犬を飼っているらしい。あとぬいぐるみが好きなんだ、特に動物物…ウサギは特にやばいらしいが何がやばいのかわからない。むしろ村澤に動物の話を振る方がやばいので聞かない



これを女子が知ったらどう思うのだろう…やっぱり騒ぎ立ててみんなで村澤のファンが増えるだけなのだろうか



「ウサ太郎、お前太ったか?食べ過ぎはいかんぞ」

普段は全然笑わない村澤もウサギを前にすると自然と笑顔になる。こいつの女子嫌いはぬいぐるみとウサギに起因する物であるが、今はまだ言わなくていいか




飯の後はこの静かな空間で昼寝するのが健太の楽しみである




放課後の練習はいつも以上に気合が入っていて、みんあがみんな試合に向けて気持ちを高めていることが分かった。練習後、いつものようにじゃんけんで負けた奴が近くのコンビニにパシリされて買い物に行く。今日は健太とコアラが負けた




「ピッチャーメニューのあとにこれはきついぜ…なあコアラ」

コアラは無口で全然喋らないと学校では言われているけれど結構喋る。ただの人見知りだ。コアラは野球初心者であり、キャッチボールすらままならない。しかし、力の強さなら野球部でも随一の持ち主であり、バットのスイングは速い


「最近バットの振り早くなったよな。透にも勝てるんじゃね」


「村澤は憧れるよ…初心者の俺でもあいつのスイングには見惚れるし。村澤に追いつきたくて毎日バット振ってるから」


「結構振ってるのか?」


「うん、ノルマは600回だね。自主練で300回。家で300回」


「600回!?そんなの村澤でも振ってないぞ、凄い気合いだな。明後日楽しみだな」


「楽しみだけど出してもらえるのかな…俺初心者だし」


「こんだけ頑張ってたら出してくれるだろ…監督だって鬼じゃないし…」


ん?と健太が立ち止まる。コアラはどうしたのと言った顔で立ち止まるとあ!といつもより大きな声を出す。



「監督って誰よ…」


健太の声が夜空に響いた




監督の所在が分からぬまま、ついに明後日…日曜日が来てしまった


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