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Skill Make Online  作者: 金平琥珀
<始まりのダンジョン編>
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終焉。

 カノンが戦うためのスタイルを手に入れてから数日が過ぎていた。現状ではカノンのみが使える戦闘中での生産。生産に必要なキットを用いることなく生産系スキルを使えるのもカノンのオリジナルとなっている。

 

 公式掲示板にそのスタイルを発表することもなく、カノンは自分だけのスタイルを楽しんでいた。


 『ジャイアントスパイダーロード』を倒したカノンはその素材から薬になりそうなものを選び、その他はギルドの保管庫に預けることにした。


 ギルドには共有保管庫の他に個人保管庫があり、個人保管庫に入れてあるものであれば本人しか取り出すことが出来ない仕組みになっている。ちなみに自分のギルドを立ち上げると、預金などもギルドで出来るようになっている。


 保管庫には制限はなく、手持ちのアイテムで不要になったものを保管する役割を持っている。


「レアアイテムも結構手に入ったし、装備でも整えようかな?」


 現在の装備を見ても、あまりいい装備だとは言えない。生産職である以上は装備にもそれなりに気を使っていきたいと思う。


 装備を作れるだけのスキルを持っていなかったカノンは自然と他人に任せるような形になってしまったのだが、カノンにはデザインに関するセンスがなかったためそれでもいいかと妥協した。


 装備自体はリンダさんに任せ、カノンは平常運転で回復薬ポーションを作ることにした。ラムには店の陳列をお願いし、カノンは回復薬ポーションの改良をすることにした。


「いい薬が出来るということはより強い敵と戦える人が増えるってことだよね。うん、それはいいことだ」


 そんなことを言いながら作業をしていく。


『マスター自身には効果がないものだがな。それは作っていて意味があるのか?』


「そんなことはないよ、カタフラクトだって考えたことない?サポートって楽しいことだよ」


『考えたこともないな、そもそもマスターの男らしく在りたいという思考が我に反映されているのだ、サポートなぞ女々しいと思うがな』


 この世界の人語を話せる使い魔たちは冒険者プレイヤーのある思考が元に人格を形成している。


 ある使い魔は冒険者プレイヤーの攻撃的な面で人格を形成しているために攻撃的な性格だったり、ある使い魔は冷静な部分から人格を形成しているために知的であったりと使い魔たちのAIは冒険者プレイヤーたちの心の在り方でもある。


 要するに自分が複数いるような感じだ。もしその面が強く出ていたらこうなっていたかもしれないという仮定で作られている。


 このシステムを作った製作者はすごいと思うが、中には自分と向き合っているようで嫌気がさすという意見も実際にはあるようだ。


 そもそもそれが嫌なら使い魔なんて作らなければいいだけの話だ。


 それにしてもとカノンは思う。


 カノンの男らしいのイメージは一人称が我なのだと。


『どうした、マスター』


「なんでもないよ。それよりもラムを手伝ってあげて一番上の棚、届かないみたいだから」


『承知した』


 二つ返事で承諾するとカノンに一礼をし、ラムをところへ行き、ラムを抱き抱えた。


 手伝えとは言ったが、まさかそういう手伝い方をするとは思ってもいなかったので、思わず笑ってしまう。


 骸骨がスライムを抱き抱える絵はシュールで笑えてくる。


「さて、どんな薬を作ろうかな」


 薬の方向性を考えていなかったカノンはとりあえずいろんなものを混ぜてみることにした。もちろんレシピはしっかりと作った。


 ◇◇◇◇


「このプレイヤー大丈夫ですかね?」


「どのプレイヤーだい?……ああ、あの子か」


「知っている人ですか?京藤さん」


 京藤と呼ばれた白衣を纏った男はまるで新しい玩具おもちゃを見つけた子供みたいな笑みを浮かべながら、


「僕の作った『咎人』を使ってくれている子だよ。それにしても面白いスキル構成をしているね。コンセプトは戦える生産職って感じかな?ところで次のイベントの準備は出来ているのかね、鬼嶋君」


「ええ、準備は滞りなく。ですが、本当にいいのですか?おそらくですが、脳への負荷が半端じゃないですよ。もしかしたら」


 京藤は静かに狂った笑みを浮かべる。


「問題ない。何かあったときは僕が責任を取るしね。それにすでに実験で問題ないと判断されたことだ」


「ですが……いくら国からの要請とはいえ……私は認めたくないものですね。これでは人体実験と変わりません。それに貴方のお気に入りの子のように純粋にゲームを楽しんでいる人ばかりですよ」


「知っているさ。まだ第二陣とはいえ5万人のプレイヤーたちがこのゲームを楽しんでいる」


 しかしと京藤は続ける。


「見てみたいとは思わないかね、本当に別の世界があるのか。そしてそれがこちら側にどんな影響をもたらそうとしているのか。僕は常にそういう好奇心で満たされているのさ」


「別の世界があるなら見てみたい。それは分かります。もし別の世界があるならロマンがありますから。しかしですね」


「だから君はいつまでも助手なのだよ。時には倫理観など捨ててしまえ。これは僕の師が言っていた言葉だよ」


 鬼嶋は頭が痛くなった。この人には何を言っても通じないのだと。


「もちろんクリアは用意しておく。そうしなければやる意味がないからね」


「……もうどうなっても知りません」


「最初から言っている、責任は僕が全て負うと。それとも君も行くかね?」


「私はここでモニタリングをします。最後まで見届けますよ、たとえ、どんな結末が待っていたとしても。それが私のやりかたです」


 京藤は愉しそうに笑い、それではあとを頼むと続けた。


 分かりましたという声は聞こえたかどうか分からないが、鬼嶋はイベントを発動した。

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