戦う生産職。
ボスの部屋にたどり着いたカノンは『蛇殺し』を肩に担ぎながら部屋の中へと入っていった。部屋の中に入ったカノンは敵の姿を見て青ざめた。
『ジャイアントスパイダーロード』
要するにでかい蜘蛛だ。その部屋には至るところに蜘蛛巣が張り巡らされており、もしそれに触れてしまえば動きを封じられてしまうことは必須だ。
「本当に嫌な相手だよ……本当に」
カノンは涙目になりながら敵を見ていた。
『前衛は我が引き受けよう』
カノンは頷くと、『蛇殺し』と『骸骨弓』に切り替え、完全に後衛をするつもりのスキルへとスキル構成を変える。
職業系スキル
【弓術士】レベル1
補助スキル
【弓術Ⅰ】レベル2 【投擲】レベル5 【テイマー】レベル5
【思考加速】レベル8 【索敵】レベル8
こんな感じの構成になっている。
「スプリングショット!!」
カノンは掌に描いた錬成方陣で木の枝と小石を素早く合成しながら矢を作り出す。そしてその矢を【弓術士】の技で打ち出す。
それにここには大量の枝と小石が落ちている。弾薬不足に困ることはないだろう。その前にMPが切れたら終わりなのだが、ちゃんと矢を用意しておけばよかったとカノンは錬成しながら内心そう思っていた。
【索敵】からの【思考加速】で敵の情報を素早く認識し、狙いを定める。技術力が高いおかげで何とかなっているものの、カノンの弓の技量はそれ程上手いというわけでもない。
けれど、レベル2にしては上出来だと言える成果をカノンは出していた。それに戦闘中に矢を作りながら戦うやり方はおそらくカノンにしか出来ない荒業だと言える。
「スプリングショット・連射!!」
カノンは矢を同時に三本放つ離れ業で、ボスの取り巻きたちに攻撃する。
『無駄にヘイト値を上げるな、マスター』
そんなことを言いながらもカノンに向かっていく雑魚を蹴散らすカタフラクト。本当にこいつは骸骨なのかと思ってしまうのよう鋭い太刀筋で両断していく。
「『あたし』の出番は残さなくてもいいからね。『あたし』としては出番がない方が嬉しいし」
そんなことを言いながらもカノンは自身の弓に力を込める。
弦を引き、そして放つ。
単純な動作ではあるが、カノンは丁寧に目標へ当てていく。弓の基本はチャージ時間が長いほど飛距離と攻撃力が上がる。そしてそれは技術力が高いほど効力を発揮する。
咎人であるカノンは技術力の上昇率が高い。弓を扱う種族としてはかなり高いレベルにいる。
「スプリングショット・拡散」
何種類かのスプリングショットを使い分け、自分に近付けないよう工夫し、移動しながら前衛の援護を行う。
【狙撃】のスキルを持っていれば移動しながらでも矢を放てるようになるが、今のカノンでは矢を放つときに停止する必要がある。
だから
「しまったっ!」
次の矢を放つために停止したカノンは後方からの攻撃に対応することが出来なかった。攻撃を受け後ろを振り返るとそこには大量の小型蜘蛛が待機している状態になっており、それらが持つバットステータス・毒を受けてしまった。
「……油断した」
毒状態になりながらも自分の状況を再確認し、敵を全て視認することの出来る位置まで移動するとそこで停止する。
「ガトリングショット」
武器の耐久度を限界まで減らし、使用するガトリングショットは矢を通常通り放つだけでそれが無数の矢となり雨のように降る。
カノンが現在使える数少ない一斉攻撃型の技のうちの一つ。
そしてこの技は武器が壊れることを前提としている武器破壊技。耐久度を限界まで使い切るということは次に武器を使用したときに武器は壊れる。
「オリジナルスキル・使用」
【錬金術師】を使用したカノンは今の状況で使えそうな生産スキルを呼び出す。
「スキル【鍛冶】より抜粋。修復術『リペア』」
カノンは壊れた弓をすぐさま修復する。MPをかなり消費したが武器がなくなるよりは全然いいとカノンは判断する。
「そして連続使用!ガトリングショット!!」
MPと素材が尽きない限り使用できる超広範囲一斉攻撃。武器が壊れることを前提し、戦闘中に使う事の出来ない生産系スキルを使用するための【錬金術師】の使用。
カノンなりの戦える生産職だった。
読んでくださってありがとうございます。
もう少しで今年も終わりですね。
はやいものです。