成長とは恐ろしいものである。
カノンはある程度採取に満足すると一度町へ戻ることにした。来た道を戻ればいいだけの話なのだが、あることを思い出す。
一割以下にまで減っていたHPが全快していた。どうやら自然回復したようだ。そこでま恒例のアラームが容赦なく鳴り響く。
【自動回復Lv.1】が製作可能となりました。
「【自動回復】?回復系のスキルってことだよね。ポーションを買えないオレにしてみたらかなりうれしいスキルだけど」
【自動回復】製作条件
HPが一割以下を切っている状態でアイテム及び回復魔法を使用せずに自然回復だけで全快する。
これまでに回復アイテムを入手していない。
「【テイマー】もそうだけど【自動回復】も中々にひどい条件だね。回復アイテムを使用しない縛りプレイをやっているプレイヤーなら入手しそうだけど」
スキル詳細
【自動回復】
一秒間に50回復。スキルのレベルが上がるごとに10ずつ上昇する。
「……チートじゃない?というかバグだよ」
【バグって虫?】
「違うよ」
【違わないよ、バグっていう闇属性の虫】
「なにそれ、怖い……とりあえず……回復アイテム必要なくなったね。でもラムには必要か」
ポーションの必要性を考えていたらあることを思い出す。
「モンスターってこのまま町に入れるのかな……入れてもびっくりするよね。ねぇ、ラム」
『メニューからアイテム化って選ぶといいよ』
「そんなのあるの?」
『カノンより物知り』
ラムに言われた通りにメニューウインドを出し操作するとテイムのアイテム化という項目があった。テイムというのはおそらく使役しているモンスターのことなんだろうと推測することが出来る。
項目を押してみるとラムが一瞬光出し、ブレスレットのような形状へと変化した。
それを拾い上げて【鑑定】してみるとどうやら装備のようだった。
液状化のブレスレット
DEF20 【物理攻撃半減】
ラムがアイテム化した装備品。譲渡不可。
「……これとんでもなく強いね。装備しているだけで【物理攻撃半減】が発動するなんて」
元々これを他人にあげるつもりなんてないために譲渡不可は大したデメリットにはならなかった。
液状化のブレスレットを装備し、ある程度ひと段落したので町に戻る。その途中でも採取することを忘れずに行動するとアイテムボックスがいっぱいになる勢いでアイテムが溜まった。
町に到着するとある難関が待ち受けていることに気付く。
町に入ってすぐアイテムを売買しようとNPCの経営している店の前で気付いてしまう。自分がとんでもないデメリットを背負っていることに。
「……アイテム売れなかったんだ」
NPCの店で買い物が出来ないということはつまり売買も出来ない。自分のステータス画面を開いて所持金を見ると1500Gと書かれていた。
「これだけでやりくりしないといけないのか……どうしよう。装備も買えないし、アイテムも買えない。お金があっても宝の持ち腐れだよね。買い物が出来ないだけで娯楽施設とか使えないわけじゃないよね……使えなかったらどうしよう」
不安になったので実際に試すことにした。
まずは宿屋。
「いらっしゃいませ。50Gでお泊りが可能となっていますが」
「お願い」
「失礼ですが、“咎人”様ですか?残念ながら泊りすることは出来ません」
結果。
宿屋はでは宿泊することが出来ない。宿屋の効力はHPとMPの全回復。アイテムを消費せずに回復できる点ではかなり大きいと言える。それに最初の資金でアイテムを買っているとどうしても足りなくなってしまう。
これが使用できないのは序盤ではかなりの痛手だ。
次。
娯楽施設。
「いらっしゃいませ、何名様でしょうか」
「一名だよ」
「では、コースをお選びください」
とここまでは順調。
「失礼ですが──(以下略)」
「あー。ダメか」
そんなことを数件試し敗北。
NPCの店ってなんだかんだ言って使用しますよね