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Skill Make Online  作者: 金平琥珀
<始まりのダンジョン編>
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どうせなら

 グレイから頼まれていた回復薬ポーションの調合はコツを掴んだためかあまり時間を掛けることもなく、品質の良いものを作ることが出来るようになっていた。


 カノンは自身の作った回復薬の味に多少なりとも疑問を持っていた。その疑問とは良薬は口に苦しというがどうして果実系のアイテムを混ぜて調合すると回復薬ではなくジュースになってしまうのかという点だ。


 つまりはどうせなら美味しい回復薬を作りたい。


 現在のカノンが目指しているテーマだった。100個近くの回復薬をただのジュースに変えてしまったカノンはあることに気付く。


 【料理】スキルをうまく使えばいいのではないかと。


 満腹度なるシステムが導入されたこの夏からカノンはずっとあることを考えていた。どうせならカフェやバーなんかもやってみたいと。そこで必要なのは【料理】、【酒造】といったスキルだった。

 

 【料理】の習得条件は意外にも簡単ですんなり習得することが出来たが、【酒造】はそうもいかない。習得条件自体はすごく簡単なのに、習得に至るまでの道が険しい。


 何故なら酔いの状態異常になればいいだけの話なのに、その【酔い】にしてくれる酒がないのだ。


 調べたところ酒は次の町に行かないと売っていないことが分かった。そのため【酒造】を入手するのはまた今度ということになる。


 それはそうと、今は【料理】の話だ。


「【調合】よって出来上がった回復薬に【料理】を使ってアレンジする……うまくいけばいいな」


 カノンはそんな思いをはせながら出来上がった回復薬を【料理】で味付けすることにした。


 結果は成功だった。


「……案外簡単に出来たな。というかこれにどうして今の今まで気が付かなったのだろう」


<アイテム>


 『回復薬ポーション・改』

 体力を10%回復する

 製作者 カノン

 カノンが丹精込めて作ったポーション。本来の苦味はほとんどなくリンゴのような風味でのどごしも良好。


「製作者の名前が出るってのが恥ずかしいけど……ああ、秘匿にすればいいのか」


 カノンは設定を秘匿にすると製作者の名前が不明に変わった。そして説明文もそっけないものへと変わる。


<アイテム>


 『回復薬ポーション・改』

 体力を10%回復する。

 製作者不明

 苦味のない飲みやすいポーション。


「製作者名を秘匿するだけでここまで変わるって……何か怪しい薬みたいでいやだな」


 本来青緑色のポーションはカノンが多少いじったせいか淡い黄色になっていた。


「ま、美味しく飲めるならいいか。それで死ぬ人も減るわけだし」


 死ぬとは大げさだが、生存確率が上がるのは喜ばしいことだ。カノンはそれを身をもって知っている。多少は痛みを軽減しているとはいえ、死ぬということは痛みを受けるということだ。


 そんな死ぬような痛みを何度も味わいたくもない。


 なら話は簡単で明解だ。


 死ななければいい。


「これが答えだ、なんてことは言わないけれど、それでも『あたし』は愉しく楽しくゲームをしたいんだ」


 カノンはフラスコに入ったそれを眺めながら、そう呟いた。


「まるで理科の実験っちょ」


「あ、お帰り」


 調合用の道具を広げて、足の踏み場がなくなっている店舗に顔を出したのはギルドメンバーの一人であるミュウだった。


「なんか収穫あった?」


「新しい【スキル】を入手しったっちょ」


「そういえば、オリジナルスキルでも作るって言ってたね」


 どんなスキルを作ったのか聞くと既存スキルのインターバルを無かったことにするというとんでもないスキルらしい。


「当然デメリットもあるっちょ。既存スキルのレア度に応じて代償としてアイテムを消費するっていう、ミュウにとってはさして重要じゃないデメリットっちょ」


「要約すると何かのスキルのインターバルを消すにはそれに応じたアイテムを使うってことだよね」


「何の要約にもなってないけど、それであってるっちょ」


 ミュウはまたレベル上げに行ってくると言い残すとその場からいなくなった。


「スキルを沢山作っていけばそれなりに自由度が高くなっていく。その上、オリジナルスキルはギルドメンバー以外には見られることもないし、装備制限なんてものはなく、多少のデメリットが存在するくらいか」


 カノンはそれでもと小さく呟き、また作業に戻った。


◇◇◇◇


 手持ちのアイテムを全て使い回復薬に変えるのはかなりの時間を使ってしまったようだ。時計を見るとすでに20時を指していた。


「今日はこの辺で切り上げよう。というよりももうアイテムがないから作れないってだけなんだけど」


 カノンは傍らに置いてあった長剣を取るとそれを背中に背負い込む。


「さて、多少は『あたし』も外で暴れるか……おいで、カタフラクト」


『何用か、マスター』


「レベル上げするよ。カタフラクトだってレベル1のままじゃあ、ダメでしょ。それに『あたし』のレベル上げもしたいし、素材も欲しいし。やることはいっぱい」


『左様か。では、参ろうか。ん?行くのであろう?』


「そうなんだけど……一応は主は『あたし』だよ?」


 骸骨の騎士は楽しそうに笑う。


『そのような些事……まあ、マスターの言い分ももっとも。なら、我は黙って付き従うのみ』


 忠誠を示すようなポーズの後、一礼し姿を消した。


「上下関係逆転しているような……ま、何でもいいや」


 カノンはこれ以上気にするのをやめ、ダンジョンへ足を運んだ。

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