ボス戦・前編
ギルドを創設してすぐに二人から連絡があった。特に夜叉丸の方は一人でフロアボスに挑み負けたらしい。まったく何をしているのやら。
ミュウの方はオリジナルスキルを開発したようでそれもあってか順調にレベルを上げているとのこと。
カノンはというと今もダンジョンの内部で一人と一匹で黙々と狩りをしていた。狙う得物は今日も骸骨系のモンスターだ。
現在は休憩中。
「……【料理】って本当にあまり習得してる人少ないんだね」
面白半分に習得してみたスキルなのだが、中々使い勝手がいい。【料理】のスキルの補正効果もあってかドロップ品に食べられそうな食材アイテムが混ざるようなにあった。
現在装備中のスキルは【料理】【索敵】【剣術Ⅰ】だ。任意発動型のスキルは以外のスキルは同時に三つまでしか装備することが出来ない。現在それ以外は待機状態だ。
職業系スキルは先程何故か習得出来た【料理人】を付けている。こちらは一つしか装備出来ない。
カノンは料理をしながら装備スキルをどの段階で切り替えようかと考えていた。レベルが5の倍数になる度に装備枠が一つ増える。その上個人のレベルに上限なんて存在しない。
レベルを上げれば常時装備出来るスキルが増える。いちいち切り替える手間がなくていい。
カノンは戦闘時のスキル構成を考えながら空腹を満たすための料理を作っていた。
<アイテム>
【骸骨のスープ】
満腹度を30%回復する。
『カノンが丹精込めて作ったスープ。材料さえ聞かなければ美味しく飲める!』
アイテムの説明文を呼んだカノンはバカにしてるのかと思ったがそれを口に出すことはなかった。豚骨スープとかも骨じゃねぇかってなことを考えながらも。
【骸骨のスープ】を何個か作るとカノンは水がなくなったことに気付く。
「水って結構使うからな。またあとで採取しにいこう」
ちなみに水は一リットルで1個としてカウントされている。かなり持っていたはずなのだが、調合や料理の度に使っていてはなくなっても仕方ないとカノンはため息を漏らした。
『カノン、美味しいなのら」
モンスターには空腹システムなんてものはないが、料理を食べることで懐き度みたいなものが上昇しより連携が高まる。その上レベルが上がりやすくなるおまけつきだ。
嬉しそうにスープを飲んでいるラムを見ながら、カノンは第一層をどう攻略していくかを考える。
この第一層のモンスターはアンデット系の中でも骸骨系統が集まっている。骸骨系とはアンデットが苦手とする聖属性の攻撃や光属性の攻撃が効きにくいという少し変わった特徴を持つ。
カノンにはそれらの攻撃方法がないのだから関係のない話だ。言いたかったことは骸骨系にポーションぶん投げても倒せないってことだ。
それだったら非常に楽だったんだが。
【テイマー】のレベルがまだ一つもあがっていないため骸骨系のモンスターを仲間にすることは出来ない。【テイマー】のレベルが上がる条件はテイムしたモンスターがレベル10に達すること。10の倍数ごとに【テイマー】のレベルも上がり、モンスターを多くテイムしている方がはるかに効率がいい。
「早く新しいスキル作りたいし、レベル上げることに専念しよう」
【スキルメイカー】を入手するためには持っているスキルをどれでもいいからレベル10にしないといけない。
早めに10に達しそうなのが【採取】だが、採取できそうなものがないこのダンジョンではレベルが上がる気配はない。
となると戦闘系に属するスキルをレベル上げるしかない。
カノンは戦闘で消費した体力を自然治癒で回復していた。回復薬が効かない以上は極力ダメージを受けない方向で行くしかない。
「さて、回復もしたし。ダンジョン攻略再開しますか」
『動くのなら!』
少し離れたところで遊んでいたラムはカノンの声に応じ、カノンに飛びついた。ラムの移動速度は正直遅い。普通に移動するだけならこうして肩や頭に乗っていてもらうと有難かった。それにラムにはほとんど重さを感じなかった。
第一層とはいえ、カノンはすでに長時間このダンジョンに潜っている。そのせいか見慣れた廊下が続くせいで精神的疲労が激しかった。
<スキル構成>
行動スキル
【剣術Ⅰ】【投擲】【思考加速】
職業系スキル
【剣士】
カノンはいつ敵が出現してもいいように、軍用剣を二本抜刀状態で歩行していた。
カノンが集中し始めて、一時間くらいが過ぎた。体感時間のため正確ではないがおそらくそれくらいだろうとカノンは思う。
しばらく歩くと今までとは違う大きな扉が出現した。その向こう側から漂う気配は間違いなくこの階層のボスだとカノンの直感は告げていた。カノンは準備を万全にすると、その重々しい扉に手を掛け扉を開ける。扉を開けてカノンは気付く。
「お前もテイム出来るのか……」
ボスとはいえ、テイムすることが出来る。視界に入る黒マントを纏った人型はカノンを黙ったまま見ている。ゲームとはいえ、ゲームだからこそ感じる殺気がカノンを襲う。
「”あたし”はお前を手に入れる!」
カノンは勢いよく、地面を蹴ると体勢を低い状態のまま走り出した。カノンの背中にはラムもしっかりと張り付いていた。
<ステータス>
名前 【漆黒の髑髏騎士】
種族 骸骨科スケルトンナイト上位亜種
レベル 15
HP4900/4900
MP200/200
固有スキル
【骸の意地】
保有既存スキル
【剣術Ⅰ】【精神統一】【剣速Ⅰ】
【居合】【統率】【剣圧】
レベルが10になったラムがいるとはいえ、正直正面から堂々と戦闘するのは厳しい。それに四桁を超えるような体力を持つモンスターとの戦闘はまだしたことがない。
さてどうなることやら。
「おおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
雄叫びと共に下段から斬り上げを行うが、骸の持つ剣によって捌かれる。
「パワースラッシュ!連続斬り!!」
弾かれた反動を利用して剣術を使用する。身体が持っていかれないように片方の軍用剣を地面に刺し、衝撃を逃がす。
「テイムするにはお前を屈服させなえればいけない」
『勝てばいいのら!』
カノンは投擲の構えで絶対王者に対峙した。恐怖というよりも強者と会えた喜びの方が強いことに自分なりに驚いていた。
「面白い」
【見切り】を最大限に使用して致命傷を避けていく。無論ギリギリで回避しているため完全には躱し切れておらず多少なりともダメージを受ける。
「二段、投擲」
手に持っている二振りの剣を投擲する。一振りは弾かれるがもう一振りは奴の腹部へ刺すことが出来た。それを見たカノンは【剣士】から【拳闘士】に変更し拳技を放つ。
「掌底破っ!!!」
放たれて拳技は奴の腹部に刺さっている剣へ、さらにそれを押し込める。同時に掌底破の威力も加わるがそれでも200程度のダメージ量にしかなっていない。
HP4550/4900
「まったく頑丈な奴だ」
今の攻撃で軍用剣の一本が完全に壊れてしまった。剣での攻撃はどうしても奴の方が上だ。ならダメージ覚悟の接近戦【拳闘士】を最大限発揮するしかない。【拳闘士】は多彩な近接攻撃を得意としている上、回避能力も高い。【剣士】も同様に手数は多い。けれど一撃一撃の連携は【拳闘士】に軍配が上がる。
攻撃は最大の防御というが【拳闘士】はまさにそれを体現したスキルだ。
距離を取ったカノンは【思考加速】を使用する。同時に常時【見切り】を発動し相手の攻撃を見切れるような体勢を作るが、相手の行動はそれを上回ていた。
カノンは何をされたのか分からないまま膝を付いた。
前回と今回で加わったスキルについて紹介!
既存スキルから!
【剣術Ⅰ】
剣補正。攻撃力+20%(※剣装備時)
『剣の扱いに特化したスキル。【棒術Ⅰ】や【槍術Ⅰ】、【刀術Ⅰ】に派生可能。レベルが20に達すると【剣術Ⅱ】に進化する』
【見習い鑑定】
『鑑定の下位スキル。鑑定されていないものを鑑定するスキル。しかし【鑑定】よりも劣るため鑑定出来ないものもしばしば』
【投擲】
投擲時攻撃力+15%
『物を投げるスキル。レベルが上がるごとに飛距離と威力が上がる』
【思考加速】
回避力+40% 速度+60% 防御力-20%
『情報処理能力を高めるためのアシストスキル。演算処理を最適且つ効率的に行うことが出来るようになる』
【料理】
技術力+30%
『料理を作るためのスキル。このスキルを使用せずに料理を作ろうとすると必ず黒炭になる』
【精神統一】
回避力+50%
『精神を安定させ冷静な行動が出来るようになる』
【剣速Ⅰ】
速度+30%(※剣・刀装備時)
『剣戟の速度を速めるスキル。【居合】と組み合わせると強力』
【居合】
防御力+70%(※納刀時)攻撃力+60%(※抜刀時)
『剣を使用した攻撃系のスキルの一つ。防御と攻撃を両立させた最終形』
【統率】
『配下のモンスター、パーティーメンバーのポテンシャルを引き出すことの出来るスキル』
【剣圧】
『自分よりもレベルの低い相手を一定確率で混乱、恐慌状態にする』




