可愛いは正義!
ラムと名付けたことで相棒との親密性が深まったような気がする。その様子に怪訝そうな表情でラムはカノンに尋ねた。
『僕の名前?』
「そうそう。ラムのレベル上げついでにオレは新しいスキルでも探すよ」
森の中を散策しているといろいろな果実が取れることに気付き、全て回収。何でもかんでも拾うくせはよくないと思うが、それでも拾わずにはいられない。
理由としては楽しみたいそれだけだった。
カノンに持っているスキルに鑑定があり、後で拾ったものを鑑定するつもりでいた。
それから数十分ほど歩くと少し開けた場所に出ることが出来た。どうやらセーフティエリアのようで、モンスターがここまで侵入してくることはなかった。
というよりもここまで目の前でぴょんぴょん跳ねている可愛い生物以外に何も出現しなかったのだ。
可愛いは正義だと思う。
と話題からそれてしまったがこの辺にモンスターらしいモンスターは出現していない。可能性として考えられるものとしてここがレイドボスのエリアなのかそれともユニークモンスターの出現条件に重なってしまったのか、なんらかのイベントが発生しているのか。
とりあえず考えたところβ時代を経験していない自分には到底知りえないことだった。
「……まぁ、考えても仕方ないよね」
『仕方ない、仕方ない』
「収穫したものでも見てみよう♪」
<アイテム>
リンゴ×50
オレンジ×15
ピーチ×25
木の枝×200
小石×120
謎の液体×10
水×12
意外と採取したことに驚いていると頭の中でアラームが鳴り響く。
【採取Lv.1】を獲得しました。
【採取】製作条件。
一定以上の採取を行うことで製作が可能。
スキル詳細
【採取】
レベルが上がるごとにレアな素材が入手しやすくなる。
「初日にして後々役に立ちそうなスキルを見ると心が躍るね」
『踊るね』
アイテムを一つ一つ自分自身の手で触りながら、感触を確かめているとそれぞれ感触が違うことに驚く。
「結構リアルに作られているんだね。リンゴを潰してリンゴジュースなんてね」
そんなことを言いながら実際に試してみると
<アイテム>
果汁100%のリンゴ液体。
器がないためジュースになることが出来なかった残念なリンゴの末路。昆虫系モンスターを誘き寄せるために使用することが出来る。
残念なリンゴの説明文を呼んでいると木々の摺重なるような音とともに何やら羽音のようなものも交じって聞こえた。
……事態は最悪のようだ。
交戦しように羽音の数からして一匹や二匹というわけではなさそうだ。
「昆虫は嫌いー!!」
何とも女の子らしい発言とともに急いでアイテムたちを仕舞うと、逃げることに徹する。
『……え』
ラムも呆気を取られたようですぐさま体勢を立て直し、カノンの後を追う。だが、忘れていては困る。
カノンは男だ。
容姿は女といえど、心は男だ。これだけ言うととある病気と勘違いされてしまいそうだが、現実世界では正真正銘の男なのだ。まぁパッと見では判断できないのが難点であるが。
森の中にある湖みたいなポイントまで来ると乱れた息を整える。
『カノン』
「ん?」
『さっきの場所セーフティエリアだから、大丈夫だったのに』
「……あ」
『もしかして……忘れてた?』
「……うん」
少し天然ですね。
そんな一面もまた可愛いのではないでしょうか?
だが!男だ!
これが言いたかっただけである。