仲間を揃えましょう!
調合を続けることを一時間。スキルを獲得したアラームと共に時間を確認したカノンが一時間も立て続けに調合していたのかと苦笑した。
「でも、面白いものが出来たし。今日のところはまだ調合かな」
<アイテム>
回復薬
HPを20%回復。
『飲むことで体力を回復するほか、傷口に掛けることでもどうようの効果が得られる。味はに苦く正直なところ飲みたくない。掛けることをおすすめ』
「薬草に比べて回復量がHPの20%って……かなり回復出来るな」
食べることでしか効力の発揮出来ない、薬草に比べて直接消毒液のような使い方が出来るようになったのだからありがたい。良薬は口に苦しというが、この世界の回復アイテムはとても苦い。出来ることならあまり頼りたくないものだ。
カノンが試しに回復薬を使用してみると、
「……なんで?」
本来回復するダメージが回復することなく、減少している。
「毒?」
ヘルプで確認するとこんなことが書かれていた。
『種族:咎人はアンデットや悪魔の部類に入るため回復魔法やアイテム、光属性の攻撃に対し非常にダメージを受けやすい。またパーティーなどを組む際は全体回復系には気を付けよう。仲間に殺されることになります』
それを読み進めていくと
『【スキル】で回復系、光属性系は習得することが出来ません。ただし闇属性系や回復反転系は習得することが可能です』
つまりカノンは回復魔法やスキル、アイテムでの回復を行うことが出来ない。とんだ欠陥種族というわけだ。
だが気になるの点が一つだけある。
「反転系?」
回復薬にもダメージポーションなるものがあるらしく、それを自身に使用すれば回復出来るのではないかとカノンは考えた。
◇◇◇◇
<アイテム>
・石ころ(1) ×30個
・木の枝(1) ×17個
・壊れかけの棍棒(2) ×01個
・獣の皮(1) ×01個
・水(1) ×15個
・名称不明の草(1) ×30個
・名称不明の石(1) ×07個
・名称不明の液体(1) ×04個
・蝙蝠の血(1) ×07個
・大骨(2) ×34個
・量産型の軍用剣(7) ×02個
・薬草(1) ×16個
・ホワイトマシュマロ(1)×05個
・薬草水(1) ×05個
・回復薬(2) ×04個
現在の最大重量は40。
保有量は24。
空き 16。
「装備したアイテムは重量としてカウントされないからいいよね」
カノンは自分の手持ちのアイテムを確認しながらそう呟き、蛇殺しの柄を軽く叩く。お前重すぎるよと苦笑しながら。
セーフティエリアから出たカノンは久方ぶりに攻略らしいことをしようと考える。
マップの踏破率ってのを考えながらとりあえずは、と……この<始まりの森>から攻略してみることにした。現在の踏破率が10%ってところだ。結構いた気がするにあまり踏破していないことを考えるとはやりエリアが広い。
情報サイトを見る限りではこのエリアは隠しエリアと呼ばれるような場所はなく、モンスター自体もそれほど高レベルではない。本当に初心者向けのエリアのようだ。
カノンとしては調合や合成……そんな感じの生産職らしいことが出来、素材がそれなりに集まるようなら正直なレベリングは二の次にしている。
らしいと称してしまったがカノンは生産職だ。これは紛れもない事実。
「……テイムしたいな」
カノンは目の前を横切るスライムを見つめながらそう呟く。以前にテイムしていたスライムとは会えないのかと内心すごく寂しがりながらも、はやりスライムへの愛を止めることが出来ない。
カノンは何を思ったのかスライムに近付くとそっと抱き抱える。
「あ~。やっぱいいよ。この触り心地」
もみもみ。
もみもみ。
もみもみ。
「癒されるなー」
その間減り続けているHPに目を向ける様子もないカノンを知人が見たら呆れ果てるだろう。
HPがレッドゾーンに突入してもやめることのないカノンは次第に意識が遠のいているのに気がついた。
「あれ……」
HPが5%を下回った段階で流石にやばいと思ったが、カノンは抱いている物体から手を離すことはなく、そのまま光のエフェクトに身体が包まれその場から消失した。
◇◇◇◇
スキル【テイマー】を獲得しました。
意識を取り戻したカノンが最初に聞いた音声がそれだった。無機質で機械的なそれは非常に朗報だったのだが、カノンが身体が異常なまでの重さを有していることにやる気をなくしていた。
死に戻りのデメリットだとすぐに理解は出来たが、それ以上に無気力感が身体を支配していた。
『デスペナルティ受けるまでモンスターに触れ続けるってどんなプレーしてんだお前は』
グレイからの念話を受け、カノンは苦笑する。
「特殊なプレーしているつもりはないんだけど、どうしてもあのぽよんぽよんな物体が出てくると触りたくなってしまう」
『お前の特殊な趣向に口出しする気はないが、ほどほどにしておけよ。そんじゃ攻略も進まないぞ。あ…そうだ、お前に言っておくことがあったんだ。もうまもなく俺達攻略組はエリアボスに挑むことになるんだけどさ、次の町に進めるのがボスを倒した者だけって仕様になってるらしい』
「どういうこと?ラストアタック決めた人間だけってこと?」
『そうじゃない。その場にいたレイドパーティーってことだな。お前も来るかって誘いなんだけど』
「”あたし”のレベルじゃ無理だね。それに生産で忙しいし……”あたし”の装甲じゃ、防御力低過ぎて」
カノンは自虐するかのようにぼやいた。そのあとも多少どうでもいい無駄話をして会話を終えた。
◇◇◇◇
会話を終えたカノンは死に戻り時に習得した【テイマー】の項目にテイムモンスター一覧という項目があり、それに目を通す。
「テイムモンスター……ラム。え……」
ラムという名前があり、【召喚可能待機状態】という現在の状態が記されていた。
「スキル・テイム」
カノンは自身の召喚スキルでラムを召喚する。
『……マスター。オハヨウゴザイマス』
機械のような音声で感情というものとは無縁のそれはカノンをひどく暗い気持ちにさせた。
(やっぱり元のラムには……)
そう思うとさらに視線が下がる。
「……ごめん」
ラムを見てカノンが発した最初の言葉はそれだった。
『……』
「……」
『なんてね、ビックリした?ビックリした?僕、カノン忘れることないよ!』
下を向いていたカノンがその言葉を聞いたとき、ラムに抱き付いて
「うん!」
泣きながら、でも嬉しそうにそう頷いた。
ラム復活!!