ジパングなる人物。
仕事が忙しくてあまり書けない一か月だった……。
と今月もあまり関係ないけど。
───ノーマルスキル規定条件は以下の通りになっております。───
【見切り】
・スキルを使用せずに相手の攻撃を回避すること。
・スキル未獲得時よりレベルを一つ上げること。
・剣を使用していること。
【拳強化】
・拳を使った攻撃を行い、それにより敵を撃破すること。
・武器を持たない。
・スキル未獲得時よりレベルを一つ上げること。
【索敵】
・敵対するものを十体以上目視で確認すること。
・スキル未獲得時よりもレベルを一つ上げること。
【採取】
・採取行動を行うこと。
・スキル未獲得時よりもレベルを一つ上げること。
<スキル効果>
【見切り】
・敵の攻撃を自動で予測し、最適の行動を視認化することが出来る。
・常時発動型。
・回避力+5
【拳強化】
・拳系武器装備時又は素手の場合、攻撃力+5が発生。
・拳よる攻撃で自身へのダメージ判定カット。
・防御力+2
【索敵】
・自身を中心とする半径25メートルに敵マーカーを設置。
【採取】
・採取をより効率的に行う。
「……もう少しゆっくり見たいところだけど」
カノンは先ほどレベルアップで入手した【スキル】の中から【拳強化】を装備すると、スキル発生特有の青い光が拳を覆う。
「チェストおおおお!!」
目の前に迫りくるスケルトンに対してカノンは渾身の一撃を放つ。先ほどとは比べものにはならない攻撃がスケルトンの骨格を容赦なく破壊する。
「カタカタ楽しいそうに言いやがって!」
カノンは一度後方へ下がるとスケルトンの頭上にあるHPバーを眺める。その横に記載されたレベルは現在3。カノンよりも少し上だが、それは大した差ではない。
元々スケルトン自体も下級モンスターの分類であり、それ程強いモンスターというわけではない。
拳での攻撃が炸裂するのを確認すると、カノンは自身の体力を確認する。スキル補正のおかげか自身にダメージは入っていない。
「これでそれなりに戦える」
カノンは拳を強く握り締めると、不敵の笑みを浮かべた。
◇◇◇◇
選考テスター。
所謂ベーターと呼ばれるプレイヤーだった。
友達と一緒に選考に当選し、友達はかなり喜んでいたが、それとは対照的に嫌々ながらも俺はこの『Skill Make Online』というゲームをやることにした。
やり始めた当初は何をしていいのかも分からず俺はひたすら近くの森を彷徨うだけだった。
友達にパーティーメンバーにどうかと誘われたが俺は足を引っ張るだけだとそれを辞退。
それに俺は誰かと一緒に行動するのがどうも苦手だ。
そんな中俺はいつものように森を散策していると少し奥に行ったところにある墓場フィールドで女性プレイヤーをみつける。
「珍しいな、あの娘も一人なのか」
俺はボッチを気取っているわけではないが、一人でいる方がえらく楽だ。
『彼女』もそうなのかと、戦闘する様子を気配を悟られないように観察していた。
「スキル発動【隠形】」
一種の光学迷彩に近いようなスキルで認識を断ち切るスキルだ。これによりモンスターからこちらを攻撃してくるようなことはない。
「……武器が」
目の前で戦っている少女の武器が壊れた。
「……ちっ!」
助太刀しようとするが、拳を構えたのを見てその纏うオーラの禍々しさに後退りしてしまう。
(なんだ……あのオーラは?何かのスキルなのか?)
そのオーラを纏った攻撃はクリティカル特有の光を発しながらスケルトンのHPを確実に刈り取った。
そして彼女はまた楽しそうに嗤う。
嗤い方に恐怖を感じたのは生まれて初めてだと俺は思った。ここまで恐怖を覚える嗤い方があるものなんだと。
青年は背中に携えた大剣から手を放し、その場を後にしようとする。
◇◇◇◇
(誰かに見られている?)
カノンは目の前にいるスキルトン達を殲滅させ、一息付いているとそんな感覚に襲われた。
もちろん、確証なんてないのだが……カノンの勘は誰にかに見られていると告げている。
カノンは静かに【索敵】を発動させた。
マップデータと視界に映る青い点。蒼い点は大体プレイヤーを示している。つまりこの近くに他のプレイヤーがいるということだ。
「誰?」
プレイヤーが隠れているであろう墓場のオブジェクトに向かってカノンはそう問い掛けた。
「……怪しいものではないさ」
そう言ってそこに現れたのは20代前半と言った感じの若い男性だった。その背中には身長を超える大剣が携えられており、歩くたびになるそれは重量感を感じさせる。
ざっと見ただけでもかなりの武器を体に仕込んでいる。
その時点でカノンは警戒するのだが、カノンが警戒を解くのにあまり時間を有することはなかった。
「ジパングというものだ……見事な拳技だ」
「それはどうも」
ジパングと名乗った男は自分は鍛冶師をしていると行った。勝手に覗き見るような格好になってしまって申し訳ないと手持ちの剣を一振りくれた。
「……お金払いますよ」
「それについては気にしなくてもいい。俺はこれでもβからやっている古参だ。そんなことより先程纏っていたオーラは?」
「それは企業機密です」
スキルについて詮索するのはマナー違反だ。数多くあるスキルの中で生まれた特質な組み合わせからくるものかもしれないし、また自分で作ったオリジナルスキルかもしれない。
他人のプレーを真似ても面白いことなどないのだ。
「暇があればうちの店に顔を出してくれ。武器のメンテくらいなら無料で請け負ってやる」
「ありがとう。せっかくだから投擲に使えそうな短剣って売ってる?」
「ああ、あるぞ」
ジパングはどれがいいと自慢げにアイテムボックスから短剣を数本取り出しそれを並べた。
「これ欲しいな」
カノンが手にしたのは何一つ装飾されていないとてもシンプルなデザインの短剣だった。
「それはポイズンダガーだな。夜の森にいる<キラービー>を討伐してそのドロップ品を加工すればこのダガーが出来る」
「へぇ」
ジパングはカノンにそれを手渡すと、荷物を纏める。
「俺は街の南西エリアに店を構えている。何かあれば寄ってくれ」
そう言ったジパングとフレンド登録を済ませると、カノンは一度<始まりの町>に戻ることにした。
「『あたし』はこっちに用事があるから」
「そうか。ならここで別れだな」
「そうだね」
ジパングと別れたカノンはリンダさんの店に足を運んだ。
<ステータス>
名前 カノン
種族 咎人
レベル2
HP175/175
MP75/75
攻撃力8
防御力2
魔法攻撃力4
魔法防御力5
回避力10
速度10
技術力12
幸運4
所持金 100G
固有スキル
【罪の剣Ⅰ】
オリジナルスキル
【錬金術師】
既存スキル
【見切り】【拳強化】【索敵】【採取】