脅威②
「発動【縮地】」
スキルを発動させた少女は一気に間合いを詰め、腹部へ殴打を喰らわせる。攻撃力を一時的に下げることで自身の回避力を上げる攻撃術【拳闘士の意地】を発動。
「燃え尽きろ!ファイアボール」
腹部へ殴打を喰らった男の後ろにいた魔術師風の男はすかさず攻撃術【ファイアボール】を使用。
「……同時併用。攻撃術【紙装甲】」
少女は【ファイアボール】がヒットする直前で、【紙装甲】を発動。これは【拳闘士の意地】と対になっている攻撃術でこちらは自身の防御力を一時的に下げることで回避力を高めるもの。
「ちっ」
「どけ……」
どこからともなく現れた少年は魔術師風の男を一刀両断すると、他の男たちを睨めつけた。
◇◇◇◇
「へぇ。中々にやるじゃん」
少女と男たちの戦闘を傍から見ていた少年は楽しそうに呟いた。少年の外見は至って普通の人間族だ。ただステータスを見るとそこには上位種・ハイヒューマンと記されていた。
少女のステータスを見ると未だレベルが16くらいなのにこの少年はすでにレベルが40を超えていた。
ただ……。彼の装備はあまりにもあまりにも平凡すぎる。
「……あいつら使えないな。仕方ねぇ」
背中に携えた自分の身長を遥かに超える大剣を構えると少女と同じように移動術【縮地】を使用。
「どけ……」
少年は容赦などなく、そして手加減などなく、無作為に男たちを殲滅した。
「……一体」
「お前が、ユニークで間違いないな?」
少女は何も言わずに頷くと現実じゃないこの世界で初めて殺気というものを感じた。それは恐れに似ていると少女は思った。
「俺は時雨夜叉丸」
抜刀状態の大剣を構え、夜叉丸はそう言った。
「殺人者……。”あたし”はカノン。どうしてユニークを」
「別に大した理由はない。俺は強い奴と戦いたいだけ。俺と戦え」
その言葉と同時に夜叉丸は【縮地】を使う。
「回避力は高いようだな……時雨流剣術一ノ太刀、乱れ桜」
大剣を軽々と振り回し、音速の速度へと達した剣戟がカノンを襲う。カノンは短剣を取り出し、ガードするも耐久度が低いせいか、一瞬にして破壊された。
「……スキルを使わないであの剣術」
「へぇ……面白い。大抵のやつはこれで倒せるんだけどな。けど、生憎。これで終了だ」
カノンは胸のあたりが熱くなっているのを感じた。よく見ると夜叉丸の持っていた大剣がカノンの胸部を貫いており、確実にHPを奪っていた。
「どうして……」
「ああ、この技のことか。これは自身の能力だけで魔物及び人間を300体倒すことで入手できる既存の規格外スキル【破綻者】。相手の武器を破壊し、尚且つその攻撃がスキルを使用しないものだった場合のみ発動可能な即死効果を持つスキルだ」
もちろん、ボスには効かないがと苦笑する。
それでも異常だとカノンは途切れ行く意識の中でそう感じた。
次回で公式イベント編は終了します。




