脅威①
公式イベント期間も残りわずかになってきている現状で、全ての宝が回収されたというアナウンスが流れた。
アナウンスというのは語弊がある。正確には空に大きく描かれた。現在の状況を明確に。
宝が全て回収されたことで冒険者たちは様々な行動に出る。ある冒険者はイベント期間中にレベル上げ。ある冒険者はひたすらなマッピング。ある冒険者は気楽なフリーライフ。
「みんな適当だね」
白いワンピースを着た一人の少女がその様子を見てそう言った。この少女が今いる地点は運営が設けたイベント期間中だけに発生するドロップ品を換金してくれる交換所のようなところだ。
この地点はそう言ったことを行うための場所なのか比較的に安全であり、非戦闘員などはここで待機している。
この少女がこの場所を訪れた理由は別に換金が目的というわけではない。寧ろ、人が集まるこの場所に用がある。
「さて、情報ってどれくらいで買えるのかな」
少女は情報屋をしている冒険者を探していた。情報がどれくらいで売っているのかは検討もつかなかったが少女はこのイベントで何としても上位に入る必要があった。
そのために必要なのは情報。
誰がどれくらいの宝を保有しているかを知るために。自身と比較して弱いものから確実に宝を手に入れるために。
「……探すと言っても」
探すと言っても探すことが出来ない。何を探しているのか、誰を探しているのかを明確に出来ていない少女にとってそれは致命的なことだった。
安全圏内から少し離れたところで少女は数人の男に声を掛けられた。
「……ユニークで間違いないな」
「”あたし”は確かにユニークだけど?」
「素直に俺らに狩られてくれないか?」
その言葉と同時に男たちはそれぞれ武器を装備し斬りかかる。少女はすかさず、短剣で応戦する。
「いきなり何をする!!」
「別に”お前ら”に恨みがあるわけではない。けれど、こうでもしないとアイツが俺らを殺し続けるからな」
少女はバックステップで一時的に後方へ回避すると、素早いウインド操作で自身の戦闘スタイルを変更する。
「敵ってことでいいのかな?」
短剣を仕舞うと少女をそう言った。そして同時にファイティングポーズを取る。
「敵ってことは容赦はしないよ」
少女が使っている戦闘スタイルは近接格闘【拳闘士】。その中に含まれる移動術。
「発動【縮地】」