『筆頭カノンVS狂犬オリオス』②
降り注ぐ矢に対し、カノンは拳を構える。
───衝連打。
致命傷になりそうな矢だけを確実に撃ち落とす。
「下が疎かになっているぞ」
「……」
───防壁陣。
カノンを足に意識を集中させ、地面を踏みつける。地面を踏みつけた影響で隆起し、壁を作る。
ただ技の連続発動はかなりMPを消費する。満タンまで回復してあるとはいえ、それでもあと数発と限りがある。
HPの方は【自動回復】が常時発動しているため、防御に専念していれば回復速度を上回る攻撃を行わない限り、カノンがダメージを受けることはない。
「手負いでよくやる……だが、相手が悪い。スキル発動」
大剣を軽々と上段から下段へと振り落とす。そしてその斬撃は距離、障害、あらゆる条件を無視して、カノンの背部を切り裂く。
「くっ……」
「大したダメージにはならないんだろ。見たところお前には回復系統の【スキル】があるみたいだしな。それもHPバーを黙って見れいれば分かることだが、常時発動系。差し詰め【自動回復】と言ったところか」
戦闘に卓越した【スキル】を持っていながらも、それを凌駕するほどの観察眼を持っている。これほどの男相手に正直なところカノンには分が悪かった。
「……どうして攻撃が」
「それも自分で考えろ。スキル発動」
カノンはオリオスの言葉で矢を撃ち落とすのを一度やめ、回避行動に移行するが、先程同様の斬撃は回避すら無視して再びカノンに攻撃がヒットする。
「……反則だ」
「いや、反則じゃねえぜ。どんな【スキル】にも些細なデメリットってものは存在する。場合によってはデメリットにならないものもあるが、この【スキル】は発動の度にHPを消費する」
「つまり」
「俺はお前を攻撃する度にダメージを受けているってことだな。けど、それでいい。【スキル】ってのは要は使いようだ」
カノンは後退りして後方に湖があることに気付くと同時に、その水面に映る自身の背中を見て、見知ったものが背中に張り付いてるのを知る。
「……まさか、印!」
「【セカンドラスト】って【スキル】ほど強力ではないが、二撃目を与える必要がない分こちらの方が使える」
オリジナルスキル、【藪医者の治療】。
オリオスの【スキル】が発動するのと同時にカノンはその場に倒れた。HPを僅か1だけ残して。
「俺にオリジナルスキルを出させたことは誇っていいぜ、筆頭のカノンさんよ」
「どう、してHPが」
「この【スキル】は自身のHPが5%以下の時、発動が可能で自身の【スキル】で消費した分のHPを相手に与える。それでいてもう一つの効果」
「……HPが回復しない」
「そう。一定時間、回復薬及び、【スキル】による回復効果を無効にする。悪いが効果はそれだけじゃねえけどな」
オリオスは笑いながらカノンの頬を剣先でツンツンと突く。
「だから、言っただろ。相手が悪かったって。それにしてもイイ女だな、お前」
「下劣な目で”あたし”を見るな!!」
「冗談だ。それにしてもいい恰好だな、くくくっ」
大事な部分だけしっかりと補正が掛かっているのか、それとも敢えてそういう仕様なのか考えてもキリがないような、カノンの恰好はギリギリの状態で保たれていた。
運営仕事してください。
苦情が来ています。
と適当な前置きはさておき、これで戦闘は一度終了です。