情報と名乗り。
今日は出来ればもう一話くらい更新したいですね。
「吹き飛びなっ!!」
先程倒れたはずの『漆黒の刃』の男は武器を大剣に切り替え、素早い切込みでカノンを攻撃する。咄嗟のことに反応が遅れたカノンは回避するよりも防御することの専念し、躊躇いもなく右腕を切り捨て防御する。
男の攻撃がヒットしたカノンの右腕は力なくだらりと下がり、動くことはない。今の斬撃で神経系に大きなダメージを受けたせいなのかもしれないが、不思議なことにそれほど痛みを感じない。気が狂ってしまったのかそれとも肉体的ダメージ負荷が現実よりも軽減されているのか、おそらくそれは後者の方だろう。
「中々に非道だな、女ァ」
「聞きたいんだけど、どうやって免れたのあの攻撃を」
「別に難しいことじゃねぇぜ。【スキル】を使用したまでのことだ……分身体を作り出す【分身】。本物と何一つ変わらないためにそれを見分ける【スキル】を持っていない限りこれを打ち破るのは難しいぜ」
「親切にそんなことまで教えてくれるなんて。こちらも持てる全力を持って貴方を倒す。『異端審問会』筆頭カノン、これより本気で討ち滅ぼす」
「いいね、その名乗り。なら俺もそれを習うとしよう。『漆黒の刃』序列三位、狂犬オリオス……てめぇを倒す者の名だ、しっかり覚えておけよ」
二人が名乗りを上げると、両名共々、後方へ飛び一定の距離を保つ。オリオスと名乗った男が攻撃を始めなかったのは名乗りを上げる決闘の流儀になぞったのではなく、おそらくカノンが他にどのような隠し玉を持っているか分からないがための警戒からだ。
それと同様な理由からカノンも後ろへ退避している。最もカノンの場合は最優先でMPを回復したがためとも言えるが。
相手が身長を超える大剣を使用している以上、懐に入ってしまえば大剣の威力を削ぐことが出来る。しかし先ほど見せた素手での攻撃もあるため防御力が下がってしまう【暗殺者】を装備したままというのは流石に厳しいところ。
攻撃と防御を兼ね備えた【拳闘士】を装備し、カノンはビンの中身を一気に飲み干す。
「さあ、殺ろうか」
「そのビンの中身は何だ?」
「教えないよ。その方が面白いでしょ」
確かになとオリオスは同意する。おそらく彼は剣を主体とする職業系スキルと拳を主体とする職業系スキルを装備している。どちらも攻撃を重視する【スキル】であるためにSTRへのステータス補正は必然。
その他で把握しているのは【分身】という【スキル】。これも発動条件は分からないものの、かなり厄介なものだ。
カノンは【索敵】と【鑑定】を併用して、拳を強く握り締めた。片腕を失っている分だけカノンは不利だがそれでもカノンは戦わなければならない使命感のようなものが心の中で渦巻いていた。
次話『筆頭カノンVS狂犬オリオス』
お楽しみに。